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June 2025 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

前回、サブパーソナリティとは何か、という話をしました。サブパーソナリティは、いわゆるインナーチャイルドとほぼ同義とみてよいと思います。子ども時代に形成され、必死に私たちを守ろうとしてくれています。


そんなサブパーソナリティと対話する方法はいくつかあります。サイコシンセシスで一番有名なのは「エンプティチェア」の技法だと思います。イメージの中で、椅子に座っている自分をイメージします。そして、向かいに椅子を用意し、そこに、自分のサブパーソナリティが座っていることをイメージします。そこで、二人で会話をします。そうして、そのパーソナリティに対する理解を深めるというやり方です。

このやり方は、少し心に負荷をかける方法で、トラウマの大きい方は気持ちのつらさが出てくる可能性があります。気持ちのつらさの強い人は、カウンセラーと一緒に取り組む方が良いかなと思います。

それより安全で取り組みやすい方法として、絵を描くというやり方があります。白い紙に大きな丸を書きます。そして、それを8等分する線を書きます。ピザとかケーキとかを切るような線ですね。そしたら、8個のおうぎ形が出来ます。そのそれぞれに、自分のサブパーソナリティをイメージする絵を描きます。それは、直感的なものでいいのです。綺麗に書こうとか思わなくて大丈夫です。ただ、自分のサブパーソナリティを象徴するような色、形、エネルギー、イメージをそこに書きます。8人もいないと思う人は6等分でもいいし、たくさん書きたい人はもっと分割してもいいと思います。そして、書いてみて自分が何を感じたかを感じ取って下さい。サブパーソナリティ同士で、仲の良い同士と仲の悪い同士があったりします。そういうところにも気づいてもらえるといいのかなと思います。

大切なのは、サブパーソナリティの存在に気づくことであって、サブパーソナリティを変えようとしたり消そうとしたりすることではありません。私の中に、こういう部分があるんだな、と気づいて、その部分が頑張ってくれていることに気づくことが出来るといいなと思います。でも、その上で、そのやり方のしんどさやアンバランスさに気づき、どうしてそうなっているかに思いをはせてみてもらえるといいと思います。前回書きましたが、サブパーソナリティのルーツは子ども時代のトラウマであることが多いです。子どもの頃は、そうやって必死に対処してきました。でも、大人になると、もっと違うやり方が出来るようになってきています。大人になって、いろんな知識、技能をもった今ならば、子どもの頃とは違う方法が選べます。ダメな自分にダメ出しをするのではなく、「そばにいるよ」「大丈夫だよ」と自分の子ども時代の苦労をねぎらい、「どうするのがいいのか一緒に考えよう」というスタンスで、サブパーソナリティ達と対話していくようにできるといいのかなと思います。

サイコシンセシスで学んだことはもう少し書いてみます。
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投稿者: furujinmachi

この本は、厚さの割にイラストも多くてとても読みやすかったですよ。
一般の方向けの内容でためになると思います。

今さら聞けない 睡眠の超基本 (今さら聞けない超基本シリーズ)
amzn.asia
1,540円


読みたいと思った動機
著者の講演が非常にわかりやすく面白かった。睡眠とは、まだまだわからないことが多く、謎の多い生体活動のよう。しかし、これから新しい睡眠薬がたくさん販売されることになっており、それらを扱う医師として、睡眠の基本を知らないと恥ずかしいのではないかと感じた。

得たい知識
今自分が持っている睡眠の知識が正しいのか?
新しい見解が何かあるのか?
診察で、不眠症で困っている方に何か役に立つ知識があるだろうか?

やはりというか、知ってましたが、睡眠、すごく大事ですね。各国と比較して日本人の睡眠不足は深刻で、平均プラス1時間は寝た方がいいとのこと。そうすると日本人のパフォーマンスはもっと上がるだろうということでした。

あと、朝型か夜型か、という話。人間は体質的に朝型と夜型があるのと、子供と大人は朝型になりやすく、思春期は夜型になりやすいのだとか。確かに私は若い頃は夜型でしたが、最近は朝型です。朝型夜型のチェックができるサイトの紹介もあり、それで調べたら今の私は超朝型でした!あんなに、早起き苦手だったのに不思議です。

夢を見ているレム睡眠も、睡眠にとってはとても大事で、よく「夢ばっかり見て寝た気がしない」という話もありますが、実際夢を見ている時間もとても大切な、体が本当に休まっている時間のようです。夢を見ている=眠りが浅い、とは言い切れない部分があるとのこと。

あと印象に残ったのは、パワーナップ(昼寝)の話。私も実は昼寝をすることが多いのですが、これは14時までに20分以内が理想とのこと。最近昼寝をしすぎたらかえって寝起きがしんどいので、ちょうど20分に短縮したところだったので、理にかなっていたと知ってちょっと嬉しくなりました。

睡眠や眠気という生理現象は、実際まだまだわかっていないことも多いようで、これからの科学の進歩にも期待したいところがたくさんあります。

実際の不眠症という点では、「眠れていない」と自覚されている人でも実際は眠れている、という事実が多く、加齢に伴い睡眠の質が変化していることを「眠れていない」と感じているケースも相当あるとのこと。最近は、自宅で睡眠脳波を測定できるデバイスがあるようで(それの紹介もありました)、気になる方は一度測定してみると、実際本当にあまり眠れていないのか、実際は眠れているのか、確認できるようです。実際に眠れているのならば、薬を使ったりする必要がなくなるので、このような測定の機会を積極的に利用してみるのは良いな、と感じました。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
過去問を解いてみたら、結局、さっぱりわからないというか、知らないことがたくさんありすぎて。受験科目は「労働衛生関係法令」一つに絞ってみようと思います。

Kindle Unlimitedで、対策本を2冊書い、ざっと目を通しました。結構細かく覚えなければならない感じです。
しかし、私、暗記は決して得意ではないですが、試験対策は得意なんです。 これまでいくつもの難関受験、難関資格を突破してきた意地をここで見せたい。
ありがたいのは結構過去問がしっかりしており、傾向がわかりやすいこと。公認心理師の受験に比べると雲泥の差です。

最近はネットやChatGPTを使って色々調べるのも楽になりました。対策本2冊を軸に、わからないことは調べながら、自分なりのまとめを作成していき、暗記に繋げていこうと思います。

個人的には、対策本のうち、こちらの本がわかりやすかったです。

これ1冊で完成!労働衛生コンサルタント試験 筆記試験対策 参考書&問題集 2025年新傾向対応
amzn.asia
1,250円

この本のタイトル分類に基づき、もう1冊の方のデータも入れつつまとめ作りやってみます。

タイトルは全部で13分類あり、さらに下位項目があります。

1 安全衛生管理体制:6項目
2 健康診断:4項目
3 機械に関する規制:4項目
4 安全衛生教育:3項目
5 じん肺、粉じん障害予防:4項目
6 化学物質:9項目
7 有機溶剤:7項目
8 鉛:5項目
9 電離放射線:5項目
10 石綿:7項目
11 酸素欠乏症:4項目
12 高圧作業:4項目
13 事務所則:9項目

全部で71項目ですね。

まず1項目あたり何日くらいでまとめが作れるかやってみて、学習の計画を立ててみようと思いました。まとめを作る段階で、ある程度頭には入りますが、繰り返し読んだり過去問を解いたりして記憶を定着させる時間も必要です。どんなに遅くとも、8月中にはまとめを作り終え、9月には過去問をひたすら解いて記憶を定着させる時期に入る必要があると感じています。できれば7月中にまとめを作り、8月から過去問を解きに入りたい。

1時間ほど時間があるときにまとめ作りをしたら、3項目ほどは出来ました。
でも、平日の仕事上がりは疲れている日もあります。
無理のないペース、と考えると、1週間で10項目、7週間でまとめ作りがとりあえずの目標値かなと考えました。
noteで他の方の勉強方法や体験談も見させていただきました。お勧めyoutubeや対策講座の受講なども念頭に入れつつ、まずは労働衛生関係法令の筆記試験に向けてコツコツ勉強してみます。
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投稿者: furujinmachi

こちらの本は、とある講座で紹介されており、読みやすそうと思ったのと、問題解決療法単独で取り扱った図書は読んだことなかったな、と思い購入しました。ワークシートとか、現場でも使えそうだなと、あと表紙から読みやすそうな印象も持ちました。実践のコツを教えてくれるとのこと、ありがたいじゃないですか。

ワークシートで学ぶ問題解決療法: 認知行動療法を実践的に活用したい人へ 実践のコツを教えます
amzn.asia
1,980円

読みたいと思った動機
認知行動療法を実践的に使えるようになりたい。知識の深掘りをしたい。また、他のスタッフも認知行動療法を行なっており、使えるものならシェアしたい。

得たい知識
問題解決療法の復習をしたい。
実践のコツを知りたい。
診察場面でも応用して使えそうなことがあれば知りたい。

問題解決療法のイメージとして、心理療法というよりは、具体的に問題を解決しようとする「アドバイス」的な要素が強いもののような印象を持っていました。改めて復習してみて感じたのは、立派な「心理療法」だということです。

「問題」の定義の仕方から、すでに心理的介入があります。私たちはいろんなことに困って、嫌な気持ちやストレスを抱えて生きているのですが、それをきちんと明確にできていないことも、案外多いと思うんですよね。日々辛い、悲しい、イライラする…いろんな感情を抱えていても、「それはなぜ?」ということと、「じゃあ、どうなりたいの?」というところが、曖昧なことが多いと思います。

最初のステップで、まず問題は何か?を考えていきます。それに対して、どうしたいのか?どうあるべきなのか?を考えて、そして、現在の状態はどうなのか、を考えます。この部分を丁寧にすると、現在の状態を望む方向(状態目標)に向けていくために、何をしたらいいのか(行動目標)、が見えてくるようになります。

行動目標はできるだけアイディアを出して、吟味し、最終的にどれからやってみるかを決めます。そしてやってみて、フィードバックを行い、最初に戻ってまた問題を考え、目標を立て、行動を決めます。その繰り返しを行なっていく中で、徐々に大きな問題が、ゆっくりと解決に向かっていきます。

実践のコツとしては、こちらの問題意識や、常識を押し付けないことかなと思います。でも、患者さんが困り事や悩み事を整理できる視点を提供する手法として役に立ちそうに思います。結局、問題は何なのだろう?どうなりたいの?どうすべきだと思っているの?現状はどうなの?それらを問いかけるだけでも、患者さんの悩みが整理され、解決方法を考えやすくなるように感じました。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

10月の講演会の準備です。以前は講演会の準備、少々めんどくさいと思いながら、診療の合間にコツコツとやってたんですが、今はその過程もnoteの記事になると思うと、モチベが上がります。

何かを作るときに、できあがった作品を評価するのではなくて、その過程も知ってもらうことって、けっこういいのかなと思います。作る方も、過程を提示することで、完成までのモチベになりますし、見る方も、できあがっていく過程を見るのも楽しかったりしますよね。個人的にはリフォームとかDIYとかの動画も見ていて面白いと思うので、他人が何かを作っていく過程を見させてもらって共有することも、それを好ましいとか楽しいとか思う人もいるんですよね。

ちょっと無駄話になりました。さて、講演会の資料作成の続きです。


今日は、社会復帰が難しい背景についてまとめていきたいと思います。
・職場の理解不足
・自信喪失、孤立
・再発への不安
・制度の谷間、支援体制の難しさ

職場の理解不足について。これには大きく2つの方向性があると思います。

まずは、「復帰したならもう大丈夫でしょ?」という誤解についてです。
・メンタルヘルス不調=風邪のような一過性のものという誤った認識
・復職をゴールとする就業規則や復帰プログラムの構造:一度「OK」が出たら、通常通り働けるはずという扱いになりがち
・可視化できない症状への無関心:「元気そうに見える」「普通に話せてるのに、なぜ配慮が必要なのか」といった見た目依存の判断

このような誤解が職場にあると、結果として以下のようなことが起きます。
・本人が本当はまだしんどいのに言えなくなる:状態の波を出せず、悪化リスクが高まる
・周囲が配慮や調整を途中でやめてしまう:「もう普通に戻ってるんでしょ?」という空気感
・再発や再休職につながりやすくなる

あとは、メンタル不調そのものへの過剰な心配や、本質的な理解がなされていない場合ですね。
・形だけの配慮にとどまることが多い:形式的な勤務制限や時短対応はあっても、業務内容や人間関係の調整は不十分なまま。
・「一度休んだ人」へのレッテル:「また休むのではないか」「責任ある仕事は任せにくい」といった偏見や不安が根強く、本人の居場所がなくなることも。
・管理職や同僚の心理的負担:「どこまで踏み込んでよいか分からない」「腫れ物に触るようになってしまう」という声も多い。

制度的には復職可能でも、職場文化や風土が変わらなければ「本当の意味での復帰」にはなりにくい、と言えそうです。
それから、本人の自信喪失、孤立という問題点。
・病気の影響だけでなく、職場や社会との接点を失うこと自体が大きな打撃:「自分にはもう働く力がないのでは」「また迷惑をかけるのでは」という思考に陥りやすい。
・回復に時間がかかる過程で、社会的役割の喪失感が強まる:特に責任感が強かった人ほど、アイデンティティの喪失が深刻。
・孤立が悪循環を生む:周囲との関係が希薄になり、相談もしづらくなって、さらに不安や無力感が増す。

「病気が良くなった」ことと、「元の役割を担える自信」を取り戻すことは別のプロセスである、ということを認識していただく必要が出てきます。
再発への不安も、大きな懸念材料です。
・過去の経験がトラウマに近い形で残る:「あの時のように、また調子が悪くなってしまうのでは」という強い恐怖。
・再発リスクへの過度な意識が、復職へのブレーキになる:ある種の「自己保身的適応」であり、回避傾向が強まる。
・支援者や医療者も慎重になりすぎる場合がある:本人の不安を尊重するあまり、復帰のチャンスを後ろ倒しにしてしまうことも。

「再発しないこと」をゴールにすると、動けなくなってしまいます。 小さな成功体験を積み重ねる支援が必要になります。
最期に、 制度の谷間、支援体制の難しさについて。
・「医療」と「職場」をつなぐ仕組みが弱い:医師の診断書や意見書だけでは不十分。職場との対話や調整が必要だが、それを担う人材や制度が少ない。
・リワーク等の支援制度が限定的:地域格差が大きく、制度に乗れない人も多い。
・障害者雇用制度とのはざま:発症時期や診断名によっては福祉制度にうまく乗れない。精神疾患特有の「見えにくさ」がネックに。

医療・福祉・職場・本人をつなぐ「中間支援」が弱い社会では、社会復帰は「自己責任」に陥りやすい、と言えそうです。
だいたいこんなところでしょうか。また少しずつまとめていきます。
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投稿者: furujinmachi

10月に3本の講演会を抱え、少しずつ準備を開始しております。

まず冒頭の、「治ったのに働けない」問題について。
これは、うつを含むメンタルヘルス不調全般にいえることじゃないかと思うのですが、メンタルの症状は、全部一変に改善するのではなく、比較的回復が早い症状と、回復が遅い症状があるんですね。
たとえば、不安感や気持ちの落ち込みといった、気分面の症状は、割と早くに回復してきてくれたり、お薬がよく効いてくれたりします。
しかし、意欲面だったり、認知機能の面で、回復が遅れることが良くあります。なので、気分は良くなってきたのに、何か活動しようとすると動けない、ということが起こったりします。

しかし、そのことをご存じなく、診察でも「(気分は)良くなった」という風に話をされますと、医者の方は「改善した」と判断します。そして、「では復職しましょう」という流れになる可能性があります。実際、意欲や認知機能が回復していないと、職場にいってもパフォーマンスが戻らない、働くことがつらい、すぐ疲れるといった困りごとが生じるようになります。

特に、下記のような認知機能低下については、長引くことが多いです。
・集中力の持続:数分で切れる、注意が飛ぶ
・記憶力の低下:会話や指示をすぐに忘れる
・判断力の低下:業務の優先順位がつけられない
・処理速度の低下:作業に極端に時間がかかる
・マルチタスク処理の困難:複数の仕事を同時にこなせない

実際の職場復帰ではこれらの「業務に必要な認知機能が戻っているか」が非常に重要です。しかし、この認知機能の面は、気分の回復と比べて見えにくく、捉えにくいところがあります。

そして、この認知機能が十分改善していないのに復帰した場合に、「会社に戻ってみたが、全然うまく働けず、再休職」という場合が出てきたりします。
なぜそのような状況になるのかについては、以下の2点が考えられます。
・脳のエネルギー回復や神経ネットワークの再構築には時間がかかる
・「会社に戻った時点」で社会的ストレスが再び加わると、脆弱な認知機能が再び破綻しやすい

しかし、主治医から復帰許可が出て、復帰されてきた人に対して、一般的に社会や職場の方は、以下のように考えると思います。
・「もう薬も減ってきたし、元気そうだから大丈夫でしょ?」
・「病気が治ったなら、すぐ普通に働けるはず」

これはある意味、病気か、健康か、といった線引きのはっきりした「健康/病気」の二分法的な見方になるんですが、その考え方がメンタルヘルス不調の現実とは乖離しています。

実際には、以下のような病気と健康の間くらいの状態はよくあることです。
・「心身のパフォーマンスがまだ不安定」
・「午前中だけは大丈夫だが、午後からがしんどい」
・「週5はまだ無理。週3〜4日からなら…」
そのため、回復には段階的な支援や職場の理解が不可欠になってきます。

結局のところ、メンタルヘルス不調の方の社会復帰の問題点は、
・早期復職→再休職の悪循環
・「甘えている」「怠けている」といった誤解
・患者自身も「元に戻れない自分」を責めてしまう
といったところになるかと思います。

また少しずつまとめていこうと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

最近、産業医業務が増えてきまして、それに関連した講演活動も少しずつ依頼を受ける機会が増えてきました。産業医分野におけるメンタルヘルスの問題も大きくなり、関心が高まっていることと関連していると思います。

それに伴い、報酬について考えなければならない部分も出てきました。個人で受けるのか、医療法人で受けるのか。どちらにもメリットデメリットがあるように感じられ、どうしたものかと検討中でした。

そんな折、労働衛生コンサルタントという資格について知る機会がありました。もう少し、産業分野の勉強をしたいと思っていたので、自分のスキルアップにもなりそうです。また、労働衛生コンサルタントの資格を取ると、事務所を開設する必要が出てくるようで、そのメリットもあると考えました。

労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタント試験に合格し、厚生労働大臣指定登録機関の登録を受けて、事業場における労働衛生の水準の向上を図るため、事業者からの依頼により事業場の衛生についての診断や、これに基づく指導を業として行う専門家です。労働衛生に関する高い専門知識はもちろん、豊富な経験に裏付けられた高い指導力、業務に関する信用の保持が求められます。
公益財団法人 安全衛生技術試験協会(https://www.exam.or.jp/)
医師免許所持者は受験が可能で、なおかつ筆記試験のうちの労働衛生一般健康管理については免除になるとのこと。また、指定の講習を受ければ筆記試験が全科目免除にもなるとのことで、医師が受験するのはかなり有利なように見えます。

筆記試験に合格するか、講習会を受ければ、口述試験を受けて、最終合否が決まるようです。口述試験は必須のようですね。

講習会を調べると、一般的に3日間ほどのものになるようです。開業医に3日平日休みは正直厳しいですね。筆記試験も平日なので、どのみち1日は休まないと行けませんが、経営へのダメージは少ない方がいい。

なので、今年はまず筆記試験にチャレンジしてみて、あまりにも難しい場合は、来年講習会を受けるというパターンでやってみようかと思います。

しかし、その筆記試験もどうやら医師なら免除できる科目もあるとのこと。

労働衛生コンサルタント(保健衛生)筆記試験はこの3科目。
・労働衛生一般    (択一式 30問) 試験時間2時間
・労働衛生関係法令  (択一式 15問) 試験時間1時間
・健康管理 (記述式 4問中2問を選択) 試験時間2時間
このうち医師が免除申請できるのは「労働衛生一般」と「健康管理」。

じゃあ労働衛生関係法令だけでいいのか、と思ったんですが。合格基準に下記のような文言が。

合格基準
〈 学科試験 〉科目ごと(第一種衛生管理者試験の科目のうち範囲が分かれているものについては範囲ごと)の得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上で あること。
公益財団法人 安全衛生技術試験協会(https://www.exam.or.jp/)
つまり、もし他の2教科で得点が取れるなら、他でカバーできる可能性があるとのこと。法令一択の方がしんどい可能性もあるということのようです。

過去にチャレンジした方で、丁寧にまとめていらっしゃるブログがあったので拝見しました。

安全衛生技術試験協会から過去問をダウンロードして解いてみて、1科目受験か2科目受験かを決めるのが良い
せりさんぶろぐ(https://sangyoi-seri.com/consultant-written-test-exemption2/)
なるほど、まずは今の実力で解いてみて考えればいいようですね。今年は7月末までが出願期限で、試験が10月です。ちょっと過去問を解いてみて、対策を考えようと思います。
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投稿者: furujinmachi

前回、サブパーソナリティという概念を紹介しました。

サブパーソナリティは、私たちのこれまでの経験の中で作られた私たちの一部です。心理療法の流派によっては、これを「パーツ」と呼ぶこともあります。普段は、状況に合わせて、自分のいろんなサブパーソナリティがやってきて自分の代わりに色々と立ち振る舞ってくれます。しかし、時々、「困ったサブパーソナリティ」というものが出てきて、困った反応をすることがあります。

何か強い負の感情を感じているときは、サブパーソナリティが出てきていることが多いです。怒っているときや、悲しんでいるとき、落ち込んでいるとき、不安になっているとき。そして、その感情を何とかしようとして、何か行動を起こします。それがうまくいくといいのですが、あまりうまくいかないことも多く、かえって事態を悪化させてしまうこともあるのです。

サブパーソナリティは、だいたいが、子どもの頃の経験から形成されています。子どもの頃、辛かった体験をなんとかやり過ごそうとして、子どもなりになんとか振る舞い、そのときに学習したパターンがサブパーソナリティとなって、私たちの中に残ります。子どもの頃は、それでなんとか、そのしんどい状況を切り抜けていたのですが、大人になった今は、それは不必要だったり不適切だったりすることがあるんですね。でも、自分の中の子どもは、一生懸命そのパターンを繰り返して、頑張って自分を守ろうとしています。

なので、何かうまくいかないときに、「なんで自分ってこんなにダメなのかな」とか「自分って最悪だ」といった形で自分を責めるのではなく、「子ども時代の私が必死で頑張ってるんだ」「何が困って子ども時代の私がSOSを出してるんだろう?」と自分に問いかけてみるのが良さそうです。

私は、人に何か指摘されると、素直にそれを受け止めるのが難しいです。どうしても反発したり、言い訳したりしたくなります。でもそれは、子ども時代の自分のパターンなんですね。子どもの頃、理詰めで叱られ、言い返せず、悔しい思いをしたときのパターンです。それに気づいた今でも、何か指摘されると言い訳したくなったり、反発したりしたくなります。でもそのときに、「あっ、これは子どもの私の苦手なヤツね。大丈夫、大人の私が対応するから、あなたは無理しなくていいよ」と、サブパーソナリティと対話し、違うパターンを試してみる、ということが少しずつできるようになってきました。

次回はサブパーソナリティとの対話について少し書こうと思います。
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投稿者: furujinmachi

何年か前から、自分は「HSP」なんです、と主張する患者さんが増えてきました。HSPかどうか診断してほしい、と依頼されることもありました。しかし、HSPの概念は医学診断ではないので、病院で診断はできないんですよね。最近はそういった情報も周知されてきたのか、診断して欲しいという方は減りました。でも、診察の中で「私、HSP傾向があって」という話を患者さんがされることはまだよくありますし、私自身、「この人はHSPに当てはまるんだろうな」と思いながら診察することはよくあります。

HSP(Highly Sensitive Person)とは何?ということを改めて調べました。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン(Elaine N. Aron)博士が1990年代に提唱した概念で、「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity, SPS)」が高い人を指します。

HSPの主な特徴(アーロン博士によるD.O.E.S.の4要素)
以下の4つの特徴すべてに当てはまる人がHSPとされています。
D(Depth of processing):物事を深く考える。経験や出来事を丁寧に咀嚼しやすい。
O(Overstimulation):刺激を受けすぎると疲れやすい。音・光・におい・人混みなどに敏感。
E(Emotional reactivity and Empathy):共感力が高く、感情的な反応が強い。他人の感情に巻き込まれやすい。
S(Sensitivity to subtle stimuli):微細な変化や雰囲気に気づきやすい(音、匂い、表情など)。

HSPの人は、今のような情報社会だと刺激が多すぎて、とにかく疲れてしまうと思うんですよね。デジダルデトックスなども含めて、自分に入る情報を減らす工夫は必要になってきそうですね。そのあたり、本能的に分かっていて、テレビやSNSでの情報の取り入れ方を警戒されている方は多いように思います。

あと、HSPという概念も知らず、なぜか生きづらいと悩んだり、メンタル不調になってしまったりして受診される方もいます。このような方には、自分の特性を理解し、人と他人が異なることを理解してもらう必要はあると感じています。はっきりHSPと言わなくても(医学的診断ではないので、医者からHSPですと伝えるのはなるべく避けています)、「人より感受性が強そうである」「人より多くの情報を察知し受け取る力がある」といった形で伝えます。

そして自分のことを理解してもらって、精神疲労を避ける生活を考えるのと同時に、「他人は自分ほどには察せられない」ということを理解してもらうことが大切だと思っています。

そうでないと「なぜあの人は、分かっているはずなのにしてくれないんだろう」というストレスをためてしまうことになるんですね。自分だったら相手の気持ちを察して、何も言わずとも気を回すのに、相手はそれをしてくれない、ということで不満だったり、相手に嫌われていると思っていたりする方、けっこういらっしゃいます。「いや、それ相手の方、多分、分かってないですよ」と伝えると、「えっ」ってビックリされるんですよね。自分が鋭いから、人類は皆、鋭いと思ってるんですね。良い意味でも自分の特性を理解し、周りはもう少し「鈍い」ということを知っていただけると、「仕方ないか」と折り合いのつくところが増えるように思います。
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投稿者: furujinmachi
5月にしては異例の暑さの中、今年の夏はいかほどに暑くなるのか怯えている今日この頃。しかし、季節を先取りして、秋のイベントの準備をしなければなりません。なんと、今年の10月は、3回ほど講演会の依頼をいただきました。一気に3回分の講演会の資料を作るのは大変ですので、早めに少しずつ準備していきたいと思います。

まず最初に、市の保健センターから依頼された講演会から準備しようと思います。これは毎年依頼をいただいていて、市民の方向けの講演会です。担当の方と、年初のうちに講演内容についても打ち合わせを済ませています。他の2つも、大体の内容は打ち合わせしていますが、まだちょっと微調整が入りそうなので。

講演会のタイトルは「メンタルヘルス不調の方の社会復帰について」です。講演時間は 2時間と、比較的長めです。良く言えばしっかり伝えたいことが話せますが、悪くいうとしっかり準備していないと間が持ちません。でも、私いつも喋り出すとすごく喋ってしまうので、たくさん用意して全部話そうとすると早口になってしまい、ゆっくり喋るよう担当の方からお願いされることもしばしばです。
なので、そこそこのちょうどいいところの準備をしていけたらと思います。

話したい内容としては、一つには当院のリワークデイケアの紹介です。私、個人的に、今年はリワークデイケア啓発年にすると決めていて、機会があればリワークデイケアの話をするようにしています。とてもいいプログラムになっていて、多くの方に知っていただき、利用していただきたいと思っているのです。


まず、リワークデイケアをするようになったきっかけにも関しますが、メンタルヘルス不調になった方の社会復帰の難しさについて伝えたいと思います。他の病気とはどう違って難しいのか、という点を話したい。

具体的には、以下のような項目について話したいと思います。

「治ったのに働けない」ということが起こり得ることについて
・メンタルヘルス不調者に起こる「機能の低下」
・気分面が回復しても、認知機能はすぐには戻らない
・一般的な「回復」イメージと実態のギャップ

社会復帰が難しい背景について
・職場の理解不足
・自信喪失、孤立
・再発への不安
・制度の谷間、支援体制の難しさ

リワークデイケアとは何か
・リワークデイケアの目的、意図
・リワークデイケアの実施時期

当院でのリワークデイケアの実際
・プログラム内容
・これまでの実績
・参加者の感想

リワークデイケアが果たす役割
・「働ける力」の再構築
・リハビリをする意味
・本人、家族、会社の橋渡し

社会や家族にできること
・復職はゴールではなく「再スタート」
・無理のないペースで見守ること
・企業に必要な視点(柔軟な勤務設計、継続的配慮)

だいたいこんな枠組みにしようと思います。少しずつ話す内容も記事にしてまとめていきたいと思います。
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投稿者: furujinmachi

発達障害に関する心理検査の資料は無事に完成しました。次はロールシャッハテストです。


ロールシャッハテストとは、「投影法」と言われるタイプの心理検査になります。心理検査には「質問紙法」というものがあって、これは「はい」「いいえ」で答えるタイプの検査になります。自分で自覚している気持ちに答えていくことになりますので、困り感の自覚のある方には良い検査です。
しかし、自分が何に困っているのか、何がしんどいのかあまり分からない時ってありますよね。

それに対して投影法では、あいまいな形での検査を実施し、自分が自覚していない部分についても「映し出す」ことがあります。
ロールシャッハテストでは、インクのしみのようなあいまいな図を見てもらって、それがどう見えるかを答えていただきます。正解も不正解もないので、見えたように答えていただきたいです。
そうやって答えていただいた部分に、自分の感じ方、考え方のパターンやクセなどが「映し出される」ことがあります。もちろん、自覚している部分も出てきます。

その検査結果を見て、ひょっとしたらこんなところがあるかもしれないという可能性を本人にフィードバックしたら、本人とすると納得できるところも多くて、無自覚というよりは、自分でなんと表現していいか分からなかった、という部分が出てくるともいえそうです。

そして、その結果を見て、治療をどうするかを検討する材料にしています。とはいえ、精神科/心療内科の治療は原則、薬物治療とカウンセリングで、どっちをするか、あるいは両方するか、になってきますから、そのあたりを判断する形になります。

一般的に、薬物治療の方が副作用等心配で、カウンセリングの方が負担が少なさそうというイメージもありますが、そんなことはなくて、今は絶対カウンセリングはやめておいた方がいい、みたいなときもあります。

このあたりの伝えたいことをまとめると、以下のような感じになりそうです。

ロールシャッハテストについて
検査の概要:「投影法」と言われるタイプの心理検査です。インクのしみのようなあいまいな図を見てもらって、それがどう見えるかを答えていただきます。正解も不正解もないので、見えたように答えてください。図版は10枚あります。
検査の目的:答えていただいた内容から、現在の精神/心理状態や、自分の感じ方、考え方のパターンやクセなどを解析します。その結果を見て、治療をどうするかを検討する指標にします。
実施者:公認心理師等
所要時間:1時間、要予約
検査結果説明:2週間後以降(連休等の場合はもう少し時間をいただくことがあります)。
注意事項:何らかの理由で、検査を続けることが難しい場合には、検査を中止したり、違う検査に変更することがあります。
これをまた公認心理師さんに確認してもらって、仕上げようと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
たまっている本をせっせと読み進めるシリーズです。

精神科の薬について知っておいてほしいこと 作用の仕方と離脱症状
amzn.asia
2,420円

読みたいと思った動機
「精神科診断に代わるアプローチPTMF」の中で紹介されていた。精神科医療や薬物療法自体に慎重だったり、いわゆる「アンチ」な意見が多そう。でも、その中でもエビデンスがあり、きちんとした批判は知識として知っておくべきだし、薬物を処方する立場として気をつけておきたい点があれば知っておきたい。

得たい知識
精神科の薬の作用についての復習
新しい作用仮説などがあればその情報
精神科の薬を使用する意義
精神科薬物を処方する上で気をつけたいこと、配慮すべきこと

こちらの本は、精神科の薬の使用に慎重な姿勢でした。ただ、いたずらに反対しているのではなくて、科学的に薬を使うことの意義や問題点を冷静に捉える試みがされていました。

読んでいて、なるほどと思った点。薬は果たして「病気を治しているのか?」と言う視点。例えば、メンタル不調じゃない人が薬を飲むとどうなるのか、ということの吟味をされている結果、メンタル不調ではない人手も、お薬を飲むと何らかの作用が出ます。実際、不安に効くお薬は、不安の種類がなんであれ、効果が出ます。なので、病気を治しているのではなくて、症状を抑えている、という理解が必要だと言うことです。

ただし、だからお薬が不要ということではなくて、例えば高熱が出ている人は、原因を治す前に解熱剤で熱を下げた方がいい場合があります。痛みが出ている人も、原因が治るまで痛み止めで痛みを抑えて、日常生活が辛くならないよう工夫する意義があります。同様に、薬を使い、たちまちの痛みを軽減することで、日常生活の困りごとを減らすことは、とても大事な使用意義です。

それから、維持療法に関して。精神科の薬は、離脱症状が出ることが多く、薬をやめたときに再発する、調子を崩す、という訴えの多くが、離脱症状の可能性があるとの指摘がありました。そして、今まで一般的に言われていた離脱症状の持続期間(2週間程度)よりもっと長く離脱症状が出ることもあり得るとのこと。

そのため、これまで、お薬をすぐやめると再発する、と言われていたことが、実は離脱症状であって再発ではない方もそうとう含まれている可能性があるとのこと。なので、本当に維持療法が必要なのか、維持療法を行うエビデンスは何なのか、再考しなければならないとの警告がありました。

なので、お薬を減量し、中止にしていくときに、何か症状が出たときに、それが再発なのか、離脱なのかは慎重に評価しなければならないと思います。また、症状がしばらく続くからと行って、再発と決めつけず、単に離脱である可能性も念頭に置いておきたいと思います。

お薬は副作用や離脱も含め、マイナスな点があるのは事実です。だからこそ、正しい知識を持って適切に使っていけるよう、日々精進したいと思います。
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投稿者: furujinmachi
以前の記事で、発達障害の検査の時に、普段どのように口頭で説明しているかを書きました。

この内容を元に、資料に載せる文章を作成してみました。

MSPA
検査の目的:困り事が、発達特性によるものかどうかを確認
検査の内容:発達特性全般(自閉スペクトラム症/注意欠如多動症など)について、具体的に聞き取り
実施者:公認心理師等
所要時間:30分〜1時間、要予約
検査結果説明:1週間後以降(連休等の場合はもう少し時間をいただくことがあります)。
注意事項:事前に記入していただくアンケート用紙があります。学生時代の通知表などの情報があれば持参してください。養育者などご家族に協力していただくことも可能です。
WAIS(16歳未満ではWISC)
検査の目的:IQ(知能指数)の測定 発達の特性の強い人は、知能指数の中でも得意な項目と苦手な項目の差が大きく開く傾向が出るため、その確認
検査の内容:様々な問題に取り組んでもらいます。
実施者:公認心理師等
所要時間:1時間半〜2時間、要予約
検査結果説明:2週間後以降(連休等の場合はもう少し時間をいただくことがあります)。
注意事項:うつ状態や不安状態が強い場合は、スコアが下がってしまうため、うつや不安の治療を先に行うことをお勧めします(その場合は、MSPAのみ実施し、診断をつけることも可能です)。2時間以上かかる場合は、2回に分けて実施することがあります。
説明文の下に、同意いただくサインをもらうようにもしようかと思います。(未成年の方の場合は、保護者の方にもサインいただきます)。

心理検査の実施はあくまでご本人の自由意思によるものであり、参加を拒否することや途中で中止することも可能です。また、検査結果につきましては、個人情報を適切に保護した上で、必要な関係者(医療関係者・ご本人・ご本人が許可した人)に限って取り扱います。内容をご理解いただき、同意される場合は、以下に署名をお願いいたします。
だいたいこのような内容で、体裁が整うのではないでしょうか?すでに、予約の取り方やキャンセルについてなどの説明文はスタッフが作成してくれているので、その内容と照らし合わせて、重なっている部分があれば省略しようと思います。実際検査を行う公認心理師にも聞いてみて、内容が、当日ご本人やご家族に説明する内容と齟齬がないか、もう少し事前説明としてしておいて欲しい部分があるか、確認してみて、最終的に仕上げようと思います。
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投稿者: furujinmachi

サイコシンセシスでは、下位無意識や中位無意識の理解のための方法の一つとして、サブパーソナリティワークというのをします。これは、私たちの中に、さまざまな人格を持つ別の顔がある、という考え方からきています。極端に多重人格ではなくても、私たちはいろんな仮面をかぶって生活しています。家にいる時の自分と仕事の時の自分は多少違う振る舞いをすることが多いでしょうし、例えば家庭でも、みんなでいる時、1人でいる時、子供といる時、親といる時、パートナーといる時、兄弟といるときなど、一緒にいる相手でもちょっとずつ自分の態度が違うことがあると思います。また、同じ相手、同じ状況でも、その時の話題や体調、相手の様子などでも、自分の立ち振る舞いが変わることがあると思います。

それは、例えばオーケストラみたいなイメージでしょうか。たくさんの演奏家がいて、一つの曲を演奏しています。演奏家の一人一人がサブパーソナリティで、その指揮をしている人が、「セルフ」と呼ばれる、自己の中心的存在、ということになります。たくさんのサブパーソナリティがいても、「セルフ」が指揮をとってうまく調和が取れていると、特に大きな問題にはなりません。TPOに合わせて、自分の立ち振る舞いを上手に使い分けている、ということになると思います。

ところが、サブパーソナリティが、「セルフ」が意図していないところで急に動き出すと、少し困る場合が出てくると思います。指揮者の指揮に従わず、急にバイオリン奏者が違う曲を弾き出したら困りますよね。

実際、「なんであのとき、あんな風にしちゃったのかな」と思うことや、「いつもこのことがうまくいかないな」と感じているときには、想定していないサブパーソナリティが出てきてしまっていることがあると思います。まず、特定の状況で、よく顔を出してくるサブパーソナリティを認識することから、始められるといいと思います。

適応的なサブパーソナリティも含めて、自分にどんなサブパーソナリティがあるか、少し考えてみましょう。仕事にいるときに、テキパキしている自分だったり、逆に緊張して不安になっている自分、周りの顔色を見る自分、負けず嫌いな自分、冷静な自分、親切な自分、世話焼きな自分…仕事をしていても、状況や相手によって少しずつ違う自分がいると思います。家庭ヤプライベートではどうですか?リラックスしている自分、バタバタしている自分、イライラしている自分、何かに夢中になっている自分、疲れている自分、寂しい自分、楽しんでいる自分…その自分自分で、少しずつ表情、感情、意欲、考え方が違ってきているのではないでしょうか?

もう少し、このサブパーソナリティの話を続けます。
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投稿者: furujinmachi
もう、いい加減の年になってきたので、インプットばかりせずにアウトプットもしていこうと思ってnoteを始めたのですが、つい面白そうな本があると買ってしまうんですよね。
そして、たいして読書が好きではないので、どんどん「読みたい本」が家の中に溜まってくるんですよ。

これは良くないと思い、読書を進めようと決心。
でも、ゆっくり読んでいたら終わらない。なので、得たい情報にターゲットを絞って読み、じっくり読みたい本は再読するスタイルで、情報収集していこうと思います。

頑張った自分の成果を確認する意味でも、仕事関連の本に関してはnoteにあげていこうと思います。

今回読んだのはこちらの図書。

精神科診断に代わるアプローチ PTMF
amzn.asia
4,180円

読みたいと思った動機
精神科診断が臨床では困難な場合が多く、またあまり意味をなさないことも多い。臨床の現場で、もっと患者さんに役に立つ、あるいは治療方針に参考になるアプローチがあるなら知りたいと思った。

得たい知識
PTMFってそもそも何か?
今の現場で役立ちそうな情報はあるか?
心理的苦悩を理解し整理する手法があるのか?

PTMFとは?
「パワー(Power)・脅威(Threat)・意味(Meaning)のフレームワーク」
その人にとってのパワー、脅威、意味を理解し統合していく、ということのようです。

パワーに関して
「どんなことがあなたに起きましたか?」
パワーがその人の人生にどのように作用しているのかを理解します。パワーにはポジティブな側面(強み、ストレングス)とネガティブな側面(脅威)とがあります。

脅威に関して
「その出来事はあなたにどのような影響を及ぼしましたか?」
人が心理的苦悩におちいった出来事があり、その出来事が、その人にどのように脅威であったかを理解します。

意味に関して
「あなたはそのことをどのように理解しましたか?」
そうした状況と経験をどのようにその人が意味付けているかを理解します。

また、その人の対処機構とパワーリソースを知ることも、重要視しています。
「生き延びるために、何をする必要がありましたか?」
「あなたの強み(ストレングス)は何ですか?」

今の現場で役立ちそうな情報
精神医学的診断は、薬物治療を行う上では有用
しかし、心理的苦悩を理解するためには、その人の語り(ナラティブ)が重要で、その人のストーリーを理解する必要があり、そのためにはPTMFの捉え方が役立つ
自分自身のストーリーの所有権を取り戻すために、自分の経験を再生すること、そして、真実を話すこと自体が、その人を回復させる力を持つ

心理的苦悩を理解し整理する手法があるのか?
PTMFでは、多くの人々の個々のストーリーに見られる一般的なパターンを要約している。その人のストーリーを理解するための参考指標になりそうである。

アイデンティティ
その文化、社会の中で、社会的地位の高いアイデンティティと、低いアイデンティティが存在する。例えば(残念なことではあるが)、女性、高齢者、障害者といったアイデンティティは社会的地位が低い傾向にある。軽視されたアイデンティティをもつ人々が、メンタル不調をきたしやすい。

拒絶、捕らわれた状態、無力化を生き延びる
虐待やネグレクト、いじめの経験のある人。
感情:拒絶、放棄、恥、罪悪感、空虚、無力感、無価値感
表現方法:解離、うつ、自傷行為、薬物使用
診断:「境界性パーソナリティ障害」「双極性障害」「解離性障害」「うつ病」「PTSD」「アルコール依存症」

子どもや若者のころに不安定な愛着と逆境を生き延びる
ネグレクト、虐待、暴力、親の喪失などの非常に困難な環境を人生の早期に経験した人。
感情:恥、恐怖、無価値感、不信感、怒り、自己否定、放棄、絶望
表現方法:活動亢進、不注意、攻撃性、解離、自傷行為、うつ、摂食の問題、薬物使用
診断:「愛着障害」「ADHD」「反抗挑戦性障害」「うつ病」「恐怖症」「不安症」

分離とアイデンティティの混乱を生き延びる
人生のさまざまな段階で、大切なものを失う体験や、自分のアイデンティティが脅威にさらされる体験をした人。
感情:拒絶、無価値感、恥、劣等感、支配されている、恐怖、侵入される、閉じ込められる
表現方法:完璧主義、怒り、反抗
診断:「統合失調症」「拒食症」「過食症」「うつ」「強迫性障害」

敗北、捕らわれ状態、分断、喪失を生き延びる
虐待的な関係などの慢性的なストレスの長期的な状況、貧困、孤独、失業、被災など、避けられない社会環境を生き延びた人。
感情:敗北、捕らわれ状態、孤独と孤立、絶望と喪失
表現方法:体調不良、痛み、うつ、倦怠感、あきらめ、自己非難、不安、アルコール・薬物使用
診断:「うつ」「不安症」「アルコール依存症」「物質乱用」

社会的排除、恥、強制力を生き延びる
家庭の内外両方で、幼い頃に脅威、差別、物質的剥奪、社会的排除に直面した人。
感情:無価値感、劣等感、無力感、恥、拒絶、不当感
表現方法:感情の遮断、不信感、警戒心、怒り・暴力、アルコール・薬物使用
診断:「反社会性パーソナリティ障害」「物質乱用」「境界性パーソナリティ障害」「双極性障害」

単一の脅威を生き延びる
レイプ、戦争での脅威など、一つの大きな出来事を生き延びた人。
感情:恐怖、屈辱、無力感、非難、恥、罪悪感
表現方法:鬱、不安、パニック、過覚醒、回避、フラッシュバック、麻痺、不眠症、アルコール・薬物使用
診断:「PTSD」

患者さんが抱えている困りごとから、その人が上記のどんな体験をした可能性があるのか、類推することが可能になりそうです。診断し、治療する中で、その人が何を語るのか、そして、何を患者さんと私たちが理解する必要があるのか、その指標になりそうです。そして、その理解を深めることが、患者さんを癒し、患者さんが回復する助けになるのだと思います。