精神科医のつぶやき「私が医者になってから今日までの時系列|香川県の精神保健のこれまでとこれから その2」 (2025/06/30)
投稿者: furujinmachi
昨日、記念すべき100号になる香川県精神保健福祉協会の機関誌「香川精神保健」に原稿を書くことになった件について書きました。
私が医者になったのが2000年です。そのあと精神医療界で何があったか、それから私自身に何が起きたか時系列で並べてみました。
2000年
精神科はまだ「精神分裂病」や「定型抗精神病薬」が主流。
院内処方が多く、薬局との連携も限定的。
2002年
「精神分裂病」→「統合失調症」へ病名変更(偏見緩和と早期介入促進)。
精神保健福祉法が改正され、名称も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に。
精神医療における「説明と同意」「権利擁護」への関心が高まり始める。
2003年10月
香川医科大学と香川大学が統合し、新たに香川大学として発足。
2003年〜2004年
非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピンなど)の使用が広がる。
抗うつ薬としてSSRIが本格的に普及(パロキセチン、フルボキサミンなど)。
2024年12月
私自身が大学院卒業。
2005年
発達障害者支援法施行。小児領域中心だった発達障害が精神科外来でも注目される。
医療観察法施行。重大事件を起こした精神障害者の治療と社会復帰の枠組み整備。
2005年4月〜7月
香川大学医学部精神神経医学講座の教授の交代。
2025年8月
私自身が、大学から転勤して精神科病院勤務。
2006年
自立支援医療(精神通院)制度開始:自己負担1割、公費負担の仕組みが一元化。
精神科外来通院の継続性・アクセスが大きく改善。
「障害者自立支援法」施行。福祉サービスの利用が制度的に整備。
2007年4月
私自身が、香川大学医学部附属病院勤務に戻る
2007年〜2009年
メンタルクリニックが都市部で急増。軽症・ストレス疾患の受診が増加。
「うつ病は心の風邪」から「うつ病は誰でもなる」へと、社会的認知が広がる。
2010年頃
抗うつ薬の多剤併用が社会問題に(「ポリファーマシー」への反省)。
自殺総合対策大綱策定(2010年)→自殺者数が減少。
2013年〜2014年
「障害者総合支援法」施行(2013年)。
長期入院患者の地域移行・退院支援が制度的に推進される。
2016年
私自身が、古新町こころの診療所開業。
2017年
公認心理師制度開始(第1回国家試験)。
精神科医療における心理職の役割が明確化、チーム医療の強化。
2020年
新型コロナウイルス感染症拡大
うつ、不安、孤立などのメンタルヘルス不調が社会全体で増加。
オンライン診療が特例的に導入・拡大。
2023年〜2024年
精神科病床の縮小方針が明確化。社会的入院の解消と地域支援へシフト。
精神医療のアウトリーチ(訪問看護、ACT)の活発化。
2025年
精神科診療は多様化と細分化へ:発達障害、依存症など専門性が求められる時代。
新規抗うつ薬、非定型抗精神病薬が主流となり、個別化・副作用マネジメントが重要課題に。
精神科医は薬物療法だけでなく、診断・支援・地域連携を含めた統合的役割を担うように。
2000年以降の精神科は、「偏見からの脱却」「地域へ」「多職種・多角的支援へ」という大きな潮流の中にあったと言えそうです。ここまで必死に働いてきましたが、社会的にも大きな変革の中で働いてきたんだな、と感じます。これらをまとめて記事にしていきたいと思います。