もう、いい加減の年になってきたので、インプットばかりせずにアウトプットもしていこうと思ってnoteを始めたのですが、つい面白そうな本があると買ってしまうんですよね。
そして、たいして読書が好きではないので、どんどん「読みたい本」が家の中に溜まってくるんですよ。

これは良くないと思い、読書を進めようと決心。
でも、ゆっくり読んでいたら終わらない。なので、得たい情報にターゲットを絞って読み、じっくり読みたい本は再読するスタイルで、情報収集していこうと思います。

頑張った自分の成果を確認する意味でも、仕事関連の本に関してはnoteにあげていこうと思います。

今回読んだのはこちらの図書。

精神科診断に代わるアプローチ PTMF
amzn.asia
4,180円

読みたいと思った動機
精神科診断が臨床では困難な場合が多く、またあまり意味をなさないことも多い。臨床の現場で、もっと患者さんに役に立つ、あるいは治療方針に参考になるアプローチがあるなら知りたいと思った。

得たい知識
PTMFってそもそも何か?
今の現場で役立ちそうな情報はあるか?
心理的苦悩を理解し整理する手法があるのか?

PTMFとは?
「パワー(Power)・脅威(Threat)・意味(Meaning)のフレームワーク」
その人にとってのパワー、脅威、意味を理解し統合していく、ということのようです。

パワーに関して
「どんなことがあなたに起きましたか?」
パワーがその人の人生にどのように作用しているのかを理解します。パワーにはポジティブな側面(強み、ストレングス)とネガティブな側面(脅威)とがあります。

脅威に関して
「その出来事はあなたにどのような影響を及ぼしましたか?」
人が心理的苦悩におちいった出来事があり、その出来事が、その人にどのように脅威であったかを理解します。

意味に関して
「あなたはそのことをどのように理解しましたか?」
そうした状況と経験をどのようにその人が意味付けているかを理解します。

また、その人の対処機構とパワーリソースを知ることも、重要視しています。
「生き延びるために、何をする必要がありましたか?」
「あなたの強み(ストレングス)は何ですか?」

今の現場で役立ちそうな情報
精神医学的診断は、薬物治療を行う上では有用
しかし、心理的苦悩を理解するためには、その人の語り(ナラティブ)が重要で、その人のストーリーを理解する必要があり、そのためにはPTMFの捉え方が役立つ
自分自身のストーリーの所有権を取り戻すために、自分の経験を再生すること、そして、真実を話すこと自体が、その人を回復させる力を持つ

心理的苦悩を理解し整理する手法があるのか?
PTMFでは、多くの人々の個々のストーリーに見られる一般的なパターンを要約している。その人のストーリーを理解するための参考指標になりそうである。

アイデンティティ
その文化、社会の中で、社会的地位の高いアイデンティティと、低いアイデンティティが存在する。例えば(残念なことではあるが)、女性、高齢者、障害者といったアイデンティティは社会的地位が低い傾向にある。軽視されたアイデンティティをもつ人々が、メンタル不調をきたしやすい。

拒絶、捕らわれた状態、無力化を生き延びる
虐待やネグレクト、いじめの経験のある人。
感情:拒絶、放棄、恥、罪悪感、空虚、無力感、無価値感
表現方法:解離、うつ、自傷行為、薬物使用
診断:「境界性パーソナリティ障害」「双極性障害」「解離性障害」「うつ病」「PTSD」「アルコール依存症」

子どもや若者のころに不安定な愛着と逆境を生き延びる
ネグレクト、虐待、暴力、親の喪失などの非常に困難な環境を人生の早期に経験した人。
感情:恥、恐怖、無価値感、不信感、怒り、自己否定、放棄、絶望
表現方法:活動亢進、不注意、攻撃性、解離、自傷行為、うつ、摂食の問題、薬物使用
診断:「愛着障害」「ADHD」「反抗挑戦性障害」「うつ病」「恐怖症」「不安症」

分離とアイデンティティの混乱を生き延びる
人生のさまざまな段階で、大切なものを失う体験や、自分のアイデンティティが脅威にさらされる体験をした人。
感情:拒絶、無価値感、恥、劣等感、支配されている、恐怖、侵入される、閉じ込められる
表現方法:完璧主義、怒り、反抗
診断:「統合失調症」「拒食症」「過食症」「うつ」「強迫性障害」

敗北、捕らわれ状態、分断、喪失を生き延びる
虐待的な関係などの慢性的なストレスの長期的な状況、貧困、孤独、失業、被災など、避けられない社会環境を生き延びた人。
感情:敗北、捕らわれ状態、孤独と孤立、絶望と喪失
表現方法:体調不良、痛み、うつ、倦怠感、あきらめ、自己非難、不安、アルコール・薬物使用
診断:「うつ」「不安症」「アルコール依存症」「物質乱用」

社会的排除、恥、強制力を生き延びる
家庭の内外両方で、幼い頃に脅威、差別、物質的剥奪、社会的排除に直面した人。
感情:無価値感、劣等感、無力感、恥、拒絶、不当感
表現方法:感情の遮断、不信感、警戒心、怒り・暴力、アルコール・薬物使用
診断:「反社会性パーソナリティ障害」「物質乱用」「境界性パーソナリティ障害」「双極性障害」

単一の脅威を生き延びる
レイプ、戦争での脅威など、一つの大きな出来事を生き延びた人。
感情:恐怖、屈辱、無力感、非難、恥、罪悪感
表現方法:鬱、不安、パニック、過覚醒、回避、フラッシュバック、麻痺、不眠症、アルコール・薬物使用
診断:「PTSD」

患者さんが抱えている困りごとから、その人が上記のどんな体験をした可能性があるのか、類推することが可能になりそうです。診断し、治療する中で、その人が何を語るのか、そして、何を患者さんと私たちが理解する必要があるのか、その指標になりそうです。そして、その理解を深めることが、患者さんを癒し、患者さんが回復する助けになるのだと思います。