精神科医のつぶやき「本から得た知識のシェア|子どものための精神医学」 (2025/06/30)
投稿者: furujinmachi
少し前に購入し、しばらく置いてあった本です。Amazonで確認したら、2021年に購入してました。寝かせすぎです。反省します。
中井久夫先生が推薦しているので惹かれて購入しました。
子どものための精神医学
amzn.asia
2,750円
読みたいと思った動機
思春期患者さんの診察に積極的に取り組んでいるところではあるのだけれども、いわゆる児童精神科医としての知見をきちんと知りたいと思ったから。
得たい知識
子どもを診る上で、参考になることや、気をつけること、子どもの精神医学の本質的なところが知りたい。
私は中学生以上は診察させてもらっていますが、大人(18歳以上)しか診ない診療所も多く、児童精神医学というのは精神科の中でも独特の分野、専門性の高い分野であると認識されています。
私は摂食障害を診るようになったため、摂食障害の好発年齢である中学生・高校生を見る機会が増え、また大人の発達障害を診るようになったため、子どもの発達障害の理解も深まりました。普通の「児童精神科医」とは、専攻のルートが異なる感じです。
一般精神科医にとっての、子どもを診る難しさが、この本を読むと納得できます。子どもを診るためには、子ども本人を診るだけではダメで、学校、家庭、社会、いろんなところをみる視点が必要になります。「医学」だけでなく「教育」「養育」の視点が重なってきます。
そして、その子どもたちを「診断」するということ。これはもう「困難」というより「無理」といえるものになってくる。この図書では「神の領域」とまで書かれてました。私も、思春期の方の診断て本当に難しいと思っていましたが、医学の視点だけでなく教育養育社会が重なって、本人の困りごとになっているとしたら、それを分類し病名をつけることにこだわるよりも、困りごとを整理し個別対応していくのが現実的になると思います。
この本は、内容の多くが発達障害、特に自閉症グループに関することが多いです。それだけ、児童精神医学の中での、自閉症スペクトラムと言われる領域の子どもたちとその親をどう支援していくか、がとても大事なテーマなのだろうと思います。そしてそれらに併発する不安、うつにめぐる問題。発達トラウマと言われる問題。また、子どもの問題だけではなく、「育つ側のむずかしさ」を述べたのちに「育てる側のむずかしさ」として、家族の問題や、「子育て一般の問題」を上げています。社会の変遷の中で、子育て環境や子どもを取り巻く環境、いじめ問題にも変化が起きていて、今の子どもたち、今の子育て世代はこんなふうになっているのか、と大変勉強になりました。
自分の経験の中で判断しようとせずに、今の子どもたち、今の子育て家庭、今の教育現場で一体何が起きているのか、常にアンテナを張りながら、困りごとに寄り添えるようにありたいと思います。