サイコシンセシスについて書いてます。前回までサブパーソナリティの話を書きました。


今日は、同一化と脱同一化について書きたいと思います。
これもサイコシンセシスの主要な技法の一つです。サブパーソナリティとの対話の場合にも使える技法になります。

まず、同一化について。自分のサブパーソナリティや自分の一部に、しっかりと入り込む感じです。サブパーソナリティの感覚、感情、思考、意欲、そのようなものとしっかりと一体化します。そのサブパーソナリティの中で呼吸をして、その存在をしっかりと感じ取ります。自分の一部と同一化する場合でも、例えば自分の感情をしっかりと捉え、その感情を体のどこに感じるのか、大きさはどれくらいか、どんな質感や形状をしているのか、温度感はどんな感じか、その感情が自分に何を訴えかけているのか、そういったことをしっかりと感じていきます。
そして、同一化することで、何か気づくことがあるか、感じることがあるかを受け止めていきます。

それと、脱同一化ですが、これは、自分のサブパーソナリティから離れることです。ちょっと客観的になって、「あ、今、私のサブパーソナリティが出てきて何か訴えているぞ」と気づくことです。このような気づきを持てているときは、そのサブパーソナリティと距離を置けていて、脱同一化できていることになります。自分の精神機能のさまざまな部分にも、この脱同一化をすることが出来ます。例えば、感情。私たちは、感情を持っています。でも、感情が私たち自身ではありません。何か強い感情に圧倒されそうになっているときに、「私は今、この感情を持っている、でも私自身が感情なのではない」という認識を持つことは、すごく大切だと思うんですね。

すごく悲しくなったり、不安になったりしているときも、「自分自身が悲しみなのではなく、今私は悲しみを持っている、悲しみという感情を持っている」と認識することで、悲しみと自分自身を分けることが可能になります。悲しみに同一化し、しっかりとその感情を感じて受け止めていく作業と、悲しみから脱同一化し、感情は自分の一部であって自分自身ではない、という認識を持つことは、どちらも大事です。同一化と脱同一化を、自分の意志で行えるようになったとき、私たちは自分のサブパーソナリティや自分の思考、感情、意欲などともっと上手に付き合えるようになっていきます。

サブパーソナリティや、自分の精神機能(思考、感情、意欲、イメージなど)をとりまとめている、指揮者の部分を、サイコシンセシスでは「セルフ」と呼びます。本来の自分、本当の自分ですね。自分が「セルフ」の状態でいられるとき、心は落ち着いていて、均衡の取れた状態になります。「セルフ」であるためには「意志」をもつことが重要になります。

次回は「セルフ」と「意志」について書きます。