先日見たオンデマンドの研修で、インフォームド・コンセントの話がありました。

昔のお医者さんは「とにかくこれが一番いい」と、患者さんに説明せずに治療を進めることが多くて、これは「パターナリズム」という考え方、やり方でした。その後、逆に、患者さんが自分で決めてください、という「インフォームド・コンセント」が大切にされるようになりました。でも、それがかえって「専門的なことまで一人で決めなきゃいけない」というプレッシャーになってしまうこともありました。
そこで最近では、「患者さんと医療者が一緒に考えて、納得できる治療を選ぶ」という「SDM(Shared decision making:共同意思決定)」という考え方が広まっています。

ただ、「SDM(共同意思決定)」をする上でも、「インフォームド・コンセント」の考え方も大事で、「インフォームド・コンセント」を丁寧にやっていく延長上に、「SDM(共同意思決定)」があると考える方が適切であると思います。

オンデマンドの研修では、丁寧な「インフォームド・コンセント」について解説されていました。
内科でも、この「インフォームド・コンセント」が必要になるのは、何か検査をして、その結果を伝え、治療をどうするか、という場面です。
そこで、結果だけ伝えて、「治療どうします?」といった聞き方では、患者さんが本当に自分の意見を考えて伝えることが難しかったり、知識の足りなさから妥当な判断ができなかったりといった問題点が出てきます。
では、どのような手順で、結果説明を行い、治療方針を決めるのが良いのでしょうか?

まず、来院理由や困りごとの整理を一緒に行います。
そもそも、最初にどういった困りごとを抱えて病院に来て、その話を聞いた上で、必要な検査を受けてもらったことを振り返ります。

その上で検査を行ったこと。
いくつか検査を受けてもらった場合もありますし、初診の時は患者さんも緊張して、検査の説明を十分に聞けておらず、医者に言われたから受けた、みたいな場合もあると思うんですよね。再度、こういった検査を受けてもらいました、ということを丁寧におさらいします。

そういった振り返りを行った後に、改めて検査結果の説明をします。
そうすると、なぜこの検査をしたのか、その結果の意味するところが何なのかを改めて整理して受け止めやすくなると思います。
そして、結果が本人にとって良い結果である場合も、悪い結果である場合もあります。結果を聞いて、どう感じたか、そのことへの思いやりを向ける時間が必要になります。そして、本人がどうなりたいかを意思表示してもらった上で、それに対して医療機関が何が出来るかの説明をしていく、それが本来の「インフォームド・コンセント」ということになります。

研修では、がん患者さんへの説明を前提とした話でしたが、精神科/心療内科でも、全く同じようにしていけたら、それが理想と思いました。

本人がどうしたいか、どうなりたいかがすぐに考えられないこともありますし、医療機関が出来ることを提示しても、それをすぐ決められないこともあると思います。その場合は、一旦持ち帰っていただき、2週間後等に予約を取っておいて、あらためて気持ちを聞いたりもしています。今の医療制度では、なかなか診察時間が取れないのも事実です。その中でなんとか工夫しながら、患者さんが受け入れられるように結果説明をしていきたいと思います。