前回、「セルフ」は「選択」をしていくというのが大事な役割になり、その「選択」をするために重要なのが「意志」の力である、ということに触れました。

サイコシンセシスでは、「意志」にはいくつかの側面があると説かれています。
代表的なものに「強い意志」「たくみな意志」「善い意志」が挙げられます。

「強い意志」というのが、通常私たちが「意志」という言葉に抱くイメージだと思います。「あの人は意志が強い」とかいった表現をしたりもしますよね。エネルギーや力強さの象徴でもあります。でも一方で、熟達することやコントロールすること、鍛錬することも意志の大事な側面で、「うまくやる」ことで、「より楽しく」欲求を満たすことにも、「意志」が役に立つのです。それが「たくみな意志」ということになります。集中力、決断力、持久力、自発性といった特性も、意志に関連しています。そうやってみると、「意志」という精神活動にいろんな特性があることが見えてきます。

サイコシンセシスでは、それぞれの意志を鍛えるための演習も紹介されています。
「強い意志」を強化するための演習としては、以下のようなことが推奨されています。
・毎日、ほんの少し、無駄なことをする。
・単純で、やさしい、小さなことを、正確に、規則的に、持続的にいくつも行う
・数日したら、課題を変えて同じように取り組む
・定期的な身体運動を行う

「たくみな意志」を鍛えるための演習は、エネルギーを最も節約できるような戦略を開発することになり、「強い意志」の演習とは少し異なります。でも、「強い意志」で力押しに何かを勧めるのではなく、「うまくエネルギーを使う」という考え方は、私はとても好きです。
「たくみな意志」を鍛えるのには、イメージをよく活用します。
・置換の技法:何かにとらわれてしまったときに、他のイメージを選び、注意をそちらに向ける練習をする
・心理的毒素から注意をそらす:心理的にエネルギーを落としてしまうような、攻撃性・暴力・恐れ・うつ・落胆・貪欲の感情や意欲が出てきたときに、他のイメージを思い浮かべることで、注意をそらす練習をする
・望ましいイメージを喚起する:自分の望んだ状態が達成されているところをイメージし、そのように振る舞ってみる

ただ、どのような意志も、その目的が「善いもの」でなければ、自分自身と周囲、自然と調和することが難しくなっていきます。自分が成し遂げようとしていることが、他の人々の幸福と矛盾しないような目標を選ぶことが大事になってきます。それが「善い意志」と呼ばれる部分になります。常に、自分と周り、環境との調和にも目を向けるようになっていくと、自己実現をしていく中で、充足感を感じていけるようになると思います。