何年か前から、自分は「HSP」なんです、と主張する患者さんが増えてきました。HSPかどうか診断してほしい、と依頼されることもありました。しかし、HSPの概念は医学診断ではないので、病院で診断はできないんですよね。最近はそういった情報も周知されてきたのか、診断して欲しいという方は減りました。でも、診察の中で「私、HSP傾向があって」という話を患者さんがされることはまだよくありますし、私自身、「この人はHSPに当てはまるんだろうな」と思いながら診察することはよくあります。

HSP(Highly Sensitive Person)とは何?ということを改めて調べました。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン(Elaine N. Aron)博士が1990年代に提唱した概念で、「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity, SPS)」が高い人を指します。

HSPの主な特徴(アーロン博士によるD.O.E.S.の4要素)
以下の4つの特徴すべてに当てはまる人がHSPとされています。
D(Depth of processing):物事を深く考える。経験や出来事を丁寧に咀嚼しやすい。
O(Overstimulation):刺激を受けすぎると疲れやすい。音・光・におい・人混みなどに敏感。
E(Emotional reactivity and Empathy):共感力が高く、感情的な反応が強い。他人の感情に巻き込まれやすい。
S(Sensitivity to subtle stimuli):微細な変化や雰囲気に気づきやすい(音、匂い、表情など)。

HSPの人は、今のような情報社会だと刺激が多すぎて、とにかく疲れてしまうと思うんですよね。デジダルデトックスなども含めて、自分に入る情報を減らす工夫は必要になってきそうですね。そのあたり、本能的に分かっていて、テレビやSNSでの情報の取り入れ方を警戒されている方は多いように思います。

あと、HSPという概念も知らず、なぜか生きづらいと悩んだり、メンタル不調になってしまったりして受診される方もいます。このような方には、自分の特性を理解し、人と他人が異なることを理解してもらう必要はあると感じています。はっきりHSPと言わなくても(医学的診断ではないので、医者からHSPですと伝えるのはなるべく避けています)、「人より感受性が強そうである」「人より多くの情報を察知し受け取る力がある」といった形で伝えます。

そして自分のことを理解してもらって、精神疲労を避ける生活を考えるのと同時に、「他人は自分ほどには察せられない」ということを理解してもらうことが大切だと思っています。

そうでないと「なぜあの人は、分かっているはずなのにしてくれないんだろう」というストレスをためてしまうことになるんですね。自分だったら相手の気持ちを察して、何も言わずとも気を回すのに、相手はそれをしてくれない、ということで不満だったり、相手に嫌われていると思っていたりする方、けっこういらっしゃいます。「いや、それ相手の方、多分、分かってないですよ」と伝えると、「えっ」ってビックリされるんですよね。自分が鋭いから、人類は皆、鋭いと思ってるんですね。良い意味でも自分の特性を理解し、周りはもう少し「鈍い」ということを知っていただけると、「仕方ないか」と折り合いのつくところが増えるように思います。