カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
皆さんこんにちは。年末からインフルエンザが流行しています。正月早々家族で罹った気の毒な方もいるようで、ここにも年明けから何人ものインフルエンザの方が来院しています。そこで問題となるのが、この時期の発熱患者さん全員を、インフルエンザであるかどうか検査しなければならないのか?ということです。会社や学校、幼稚園、保育園に通う人たちの場合は、「流行っているのではっきりさせてくるように。」とか、「検査ではっきりするまで出勤や登校、登園はご遠慮願いたい。」などと言われて病医院に来る人が多いものです。しかし、よく考えると、これは必ずしも正しいこととも言えません。それは次のように考えられるからです。
1;インフルエンザは発熱する疾患の一つに過ぎず、世の中には数百種類のウイルス、細菌による熱性疾患があります。症状や所見から医師が軽症と判断した患者さんに対しても、勤務先や学校、保育園などが検査を強要するのは科学的ではないし、そんな権利もありません。こうした対応は後で申し上げますが、世界の非常識です。
2;2歳以下、65歳以上の方、あるいは何らかの病気で抵抗力が落ちている方、心臓や呼吸器の病気の方、妊婦さん以外は普通のインフルエンザに対しタミフル、イナビルなど抗ウイルス薬は必ずしも必要ではありません。先進国でも検査すらしない国が多いです(アメリカは検査を推奨するようになりました)。鎮痛解熱剤を飲んで、自宅で休むよう指示するのが一般的です。なお、日本と海外では考え方が違い、あちらでは薬の使い過ぎで耐性ウイルスが出現し、肝心な時に薬が効かない状況になることを危惧しています。少なくとも、インフルエンザの患者全員にタミフルを出すのは日本だけといえます。
3;一般のインフルエンザでは、職場を一定期間休むよう決めた法律はありません。あくまで、学校、幼稚園、保育園など教育現場に対しての法律です。新型インフルエンザについては法律ですべての人を対象に定められていますが、一般的なインフルは、あくまで自主規定です。実は医療機関、高齢福祉施設などについても、法律で就業が規制されている訳ではありませんが、常識的に休みますよね。
4;検査自体が痛いです。熱が出るたびにやっていたら、保育園の子供さんなんかはひと冬に4回も5回もやることになりますが、どう思いますか?個人レベルで言えば、インフルエンザでも重い時と軽い時が有り、微熱でしっかりしており、症状も軽ければ、検査不要です。ただし、集団の感染予防という面からは、たとえ軽かろうがインフルエンザの人が登校登園してきたら大問題でしょう。管理者の責任問題にも昨今はなりかねません。でも痛いですよね。「ちょっと違うだろうな。」と思いつつわんわん泣く子供を押さえつけて、仕方なく検査している我々はなんでしょうね?そういう時ってやっぱり出ないんです、ほとんど。
要するに、集団感染を防ぐということと、個人の利益が時に相反します。治療も必ずしも必要ではありません。それでも画一的な対応を、過剰ともいえる対応をしなければならないのが、今の日本の現状です。なんだかクレーム対策みたいでしょう?そうなんですよね、「何か有ったらどうするんだ。」的な考えが蔓延している故の、一種の過剰反応だと思います。なお、新型インフルエンザに関しては、全例検査は不要、抗ウイルス薬も全例投与となります。対応は大違いです。
そう言えば、ノロウイルスの検査をしている医師もいますが、3歳以上65歳未満では保険はききません。やっても薬はなく、自然に治る病気ですので、これも過剰な対応は不要です。感染対策も厳密にやれば大変ですので、できる範囲で仕方ないと思います。命にかかわることはほとんど無い病気ですので(万に一つもないとは言いませんが、交通事故のほうがはるかにハイリスクです)、余り神経過敏になるのもどうかと思います。一生のうち、何回かはかかりますから、どうせ。
以上、世の中で広まっていることが、必ずしも常識なのか、正しいことなのかの一例としてもとらえることができそうな話だと思います。ではまた。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。今日は良い天気ですね。僕は朝の犬の散歩をして、ベッドパッドなど洗って、晴れの日の休日にふさわしい事をしていました。本当はテニスの予定でしたが、先週左足ふくらはぎの肉離れ(正式には左腓腹筋筋断裂と言います)のため歩くのも大変でした。今は歩けますが、走れないのでテニスやマシンはしばらくお休みです。
さて、最近インフルエンザが流行っている、という話をお聞きになりませんか?実は、今年の8月頃からつくば市内でもぽつぽつと患者さんが発生し、9月、10月は決まった学校、幼稚園、保育園など、狭い範囲で流行していました。ですがここ半月程は市内のあちこちで患者が少しずつですが発生しており、しかも流行すでに全国規模となっております。これはどういうことでしょうか?しかも、8,9月はA型であったものが、現在つくば、土浦、牛久などではほとんどB型になっています。これは厚生省の発表とは大きく異なり(全国的にはA型、香港亜型と呼ばれるものが流行しています)、興味深い点です。では、これは今年新しく流行する型なのでしょうか?
これについては現在何のコメントも出されていませんが、どちらも昨年からの続き、あるいは多少の変異株であると考えてよいと思います。というのは、A型インフルエンザは、大陸から渡ってくる冬鳥に付着したウイルスが家畜に感染し、そこで人間に感染しやすい型に変異したものが流行するのではないか、と言われておりました。しかし、最近の研究では日本国内の湖沼にインフルエンザウイルスは定住しているとも言われ、それらが「里に下りてきて」感染するということが考えられています。ですから、一見季節外れのような流行がほぼ毎年日本各地で報告されているのでしょう。なおB型については、人間にしか感染しません。またタイプの異なる2つの株が存在し、維持されているとのことです。ということは、一年中人間界のどこかにいて、増えたり減ったりしながら人に感染しているいるということです。これはパンデミック(世界恐慌的な大流行)にはなりえませんが、地味に居続けるので、ちょっといやらしいですね。ちなみに、あまりタミフルが効いていない印象があるのもB型です。
……一日が過ぎてしまい、これは14日の仕事が終わってからの書き込みです。何人かインフルの検査をしましたが、今日は0人でした。やはり、冬の本格的な流行期とは違いますね。熱が出て、体が痛い、だるいという症状を示す病気は実はたくさんあって、インフルエンザはその一つにすぎません。また、新型など、ごく一部を除けば決して命の危険が高いような病気でもありません。人口の1割以上が毎年感染するともいわれる、ありふれた病気です。むやみに恐れず、冷静な対応が必要です。
今日はスーパームーンということでしたが、関東はあいにくの雨ですね。でも、明日もまだ月が大きくきれいに見えると言います。「スーパー十六夜」をせめて楽しみましょう、ではまた。






カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。秋雨前線と度重なる台風のせいで、ここしばらくお天気がぱっとしません。ほかの病気もあれこれ増えていますが、最近流行っている麻疹について、少しお話します。
まず麻疹って、過去の病気のイメージがありますね、なんせめったに流行りませんから。ただこれは今の子供や若い成人の方がワクチンをきっちり接種しているからです。ただし、これも大きな穴があり、2回のワクチン接種をしても、その効果が一生続くわけではなく、人によっては数年か、十数年で抗体が下がってしまうかもしれないことです。さらに、麻疹のウイルスをやっつける薬がいまだに存在せず、またこれからも出て来る見込みがないこと、つまり、かかったとしても医学の力では治せないことです。つまり体力任せ、ということです(ここでいう体力とは、筋力ではなく、免疫力のことですから)。
まず基本的なことから。麻疹はウイルスによる病気です。感染力は非常に強力で、飛沫感染、飛沫核感染(空気感染のようなものです)、接触感染などによる感染で、免疫が無ければ、あるいは不十分ならほぼ100%発病します。ただし、体内から外界に出てしまえば比較的早く死んでしまい(不活性化)まして、約2時間で感染力がなくなります。 潜伏期間は平均10日間で、7から18日程度の幅があります。症状としては、初めは熱(38,5度以上が多い)、咳、鼻水、目の充血など、重めの風邪か、インフルエンザのようなものです。が、その3日から4,5日後に一瞬少し熱が下がったと思ったら再び発熱し(39度以上出ます)、頭部、顔面から全身に広がる赤白まだらの紅斑(湿疹などでは有りません)が現れ、4から7日間続き、やがて解熱します。肺炎、中耳炎、脳炎など、合併症も多く、また特効薬も無いのですが、全身状態がかなり悪くなり、(重いインフルエンザのようなものです)、また合併症の多くは細菌感染で、しかも重症例も多いので、現在でも約4割の患者さんは入院します。
ワクチンを打ったのに免疫が下がったため感染した場合はもっと微妙で、わかりにくいものです。修飾麻疹と呼ばれ、潜伏期は14から20日程度と長く、最初の症状は軽く、いきなり発熱と紅斑が出ることもあります。患者自身は比較的軽症ですが、咽頭(のどのこと)からはウイルスがきっちり検出されますので、感染源となります。今回の麻疹流行のきっかけは、このタイプの患者さんからだった可能性が高いですので、熱が出て体に何か出てきたら、必ず病院にかかってください、またその際には前もってお電話いただけると、こちらも2次感染予防の準備がしやすいので、よろしくお願いします。
予防としてはワクチンしかありません。なお、麻疹ワクチンの定期接種は、日本では1976年(昭和51年)からですので、それ以前に生まれた方はほぼ100%一度かかっているはずです。かからないで済むほど甘い病気ではありませんし、かかった場合は一生免疫がついていますので、ひとまず安心です、それ以降、2008年3月まではワクチンは1回のみの接種でしたので、もしかしたら免疫がなくなっているかもしれません。血液検査も可能ですが、検査費用は基本的に100%自己負担ですし、5000円は少なくともかかるでしょう(もっと高いかもしれません)。ワクチンを打ったほうが間違いないと思います。ただし麻疹単独のワクチンは超品薄で、10倍払っても手に入りません。麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)を接種してください。デメリットは何もありませんので。また、2回打ちをした方も、厳密に言えば100%安全ではありません。ただし、仮に免疫が下がっていても、ワクチンなしでかかるよりは軽いはずですので、ひとまず様子を見てはいかがでしょうか?なお、小児科、感染症科などで働く医療関係者は、抗体チェックをしたほうが安心でしょうね。老婆心ながら。
さて、世の中にはまだまだ直せない病気がたくさんあり、その中には、たとえ科学が進んだとしてもコストが合わないために今後も薬が開発されないであろう、という病気もたくさんあります。麻疹もそのうちの一つでしょう。ただし、ワクチンができる前には世界で毎年1億人が感染し、そのうち600万人が死亡した!!という病気ですから、しっかりとしたワクチンがあるだけでもありがたいと思わなければなりません。病気そのものの解説などは、厚生省のホームページなどを見てください。
あいにくのお天気ですが、どうぞ有意義にお過ごしください。僕は午後は筋トレをするつもりです。昨日は肩、腕でしたので、今日は胸と背中を予定してます。もともと筋肉がなく、太りやすい体質なので、余計に頑張るしか無いのです(涙)。ではまた。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは、久しぶりの更新で、しかもこの話題は1か月前にすべきだった、と言う位つくば市内のあちこちで発生していましたし、今も現在進行中です。主に未就学児の子供さんに多いのですが、小学生にも結構出ていますので、今回は特に子供の肺炎、気管支炎について。
子供の肺炎、気管支炎と言ってまず一般の方でもご存じなのは、マイコプラズマとRSウイルスによるものでしょう。ただし、今回に限らず、マイコを調べても、半分以上は陰性、つまりそれ以外の菌でした。RSに関しても、本来は入院する適応をチェックする際でなければ保険が効かないので、クリニックレベルでは調べないのです。また、RSは幼児のうちに、人間ならほとんど全員が一度は感染しますので(1歳までに60~70%,2歳までにほぼ全員が感染する)、あまり大騒ぎしても仕方ないのです。軽ければ風邪で済むし、運が悪ければ細気管支炎、肺炎になる、そういう事です。RSウイルスについては治療薬が無く、対症療法や、入院中も一般的な呼吸管理のみで、数日で退院することが多い病気です。ですから、必要以上に騒ぎ立てるほどの病気ではありません。そういう意味では、幼稚園や保育園であまり神経質になるものでは無いということを、親御さんも、先生方もご理解いただきたいものです。
マイコプラズマに関しては、入院する場合もありますが、自然治癒する場合もあります。ただし、いずれにしても咳は数週間続くでしょう。最近この菌について、困ったことが起こっています。それは、以前はこの病気に対して使っていた、マクロライド系抗生物質が効かなくなってきたことです。特に日本国内では、マイコプラズマの60%がマクロライド耐性菌とも言われています。その原因は医者に大きな責任がありますが、患者さんのほうも少し考えてもらいたいことが有ります。それは、風邪や中耳炎ですぐに抗生剤を出してしまい(これを薬の乱用といいます)、それを感染症の専門家が指摘しても、かなりの数の耳鼻科、内科、一部の小児科医(最近の僕より若い小児科の先生たちは、きちんと勉強されているのでむやみに抗生剤は出しませんが)が「現場を知らない学者の言うことだ。」「治んなかったらどうする。」などと言い続け、あげくの果てにマクロライドを世界で一番無駄遣いして(日本の医者が、です)、その結果、世界で類を見ないほど耐性菌が増えたのです。しかも、この事実が医学雑誌などに出ていても、ほとんどの臨床医は読むことさえしないのです。また、一般の患者さんや、あるいはその保護者も、「抗生剤くらいくれなきゃね。」「あそこの薬は強いけど治るし。」などと、これまたトンでも発言をしている人も多いのです。感染症の学会は、一般の風邪に抗生剤の必要はないと繰り返し勧告してますし、中耳炎も、痛みや熱がないなど、軽い場合は3日を経過しても症状が改善しない時には抗生剤の投与をするよう記載されています。また、気管支炎レベルなら抗生剤を必ずしも投与する必要はない、とも言っております。また、それで自然に治る例が大部分であり、抗生剤を出したから治ったのではなく、時間がたったから勝手に治った例がほとんどなのです。
残念ながら、マイコプラズマにクラリス、ジスロマックを投与しても悪化する例がここつくばでも多く、その場合は使えるものが極めて限られてきます。キノロン系と呼ばれる抗生剤ですが、小児に使える種類が限られ、また、使って良い病気も、例えばオゼックスという薬は、肺炎と、中耳炎(最初からは使いません、治りにくい時のみ)、コレラ、炭疽だけです。
本当に必要な時に役に立つよう、無駄に使わない、よく考えて使う、これは石油や水資源などの話だけでなく、薬も全く同じなのです。医者は賢くなければ話になりませんが、患者さん達も、必要な治療は何か、何が正しいのか、ネットの情報は玉石混合ですが、きちんとした病院や厚生省、関連学会などのサイトではきちんとしたことを言っています。お互いに、賢くなりましょうね。ではまた。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。先日溶連菌のことを書きましたが、その前に、溶連菌って何、どんな物?ということについて、今回は説明します。
1:溶連菌とは   正式には、溶血性連鎖球菌 の略です。ただし、感染しても人間の血液が溶けてしまう訳では無いので、心配しないでください。
2:いろいろな型が有ります  約130ほどの型が有り、その違いで扁桃炎、咽頭炎になるもの、とびひや他の皮膚感染を起こすもの、「人食いバクテリア」と呼ばれる、手足が壊死(腐ること)を起こしやすいものなどに分かれたりします。
3:どうやってうつるの?  飛沫感染が主ですので、くしゃみ、鼻水、痰などが飛んで行ってうつります。患者さんはマスクをして下さい。また、感染力が強いので、決められた通り学校、幼稚園などはお休みをして下さい。
4:人にうつすのはいつまで? 例えば、治療していない場合、10から21日間は感染性が有ります。化膿しているなら、もっと長期間感染力が有ります。ペニシリン(抗生剤の一つ)を始めると、約24時間で感染性がなくなります。(だから、幼稚園、保育園にも行けます)
5:一度かかると大丈夫? 一度かかった型には免疫ができますが、なんせ130種類もあるので、実際には何度も罹ります。
6:治療はどうするの? ペニシリンという抗生剤を10日間飲み続けます。必ず10日間です(WHOが勧告しているので、どんな医者も反論できません)。また、この抗生剤は必ず1日3回内服、と決まっているので、お昼に飲むことが義務です。学校、幼稚園、保育園には行って良いですが、お昼に薬を飲ませてもらわないといけません。
また、1日2回、1回の薬は、ぺニシリンより効果が不確実なので勧められていません(WHOはもとより、世界中の感染症学会、小児科学会などではペニシリンが第1選択薬)ですから、保護者や社会的都合から、「便利な」そのような抗生剤を投与するのは誤りですので、保護者の方が、正しい判断をして下さい。残念ながら、日本の医師は、感染症に対する意識が驚くほど低いことがよくあるからです。
7:きちんと飲ませるのは大変なんだけど?  大部分の患者さんは抗体ができて自然に治ってしまいますが、一部の方はその抗体が細菌だけでなく、自己抗体となって自分の体をも壊してしまうことが有ります。腎臓の組織、関節、あるいは心臓の弁、筋肉などが壊れることすらあります。しかも、前もって予測できません。ですから、「溶連菌に感染したら、全員がきちんと10日間内服してください。」ということになります。現実に、10年間薬を飲むことになったり、一生飲まなければならないなど、気の毒な状況にある患者さんもいます。きちんと飲んでください。
他にも有りますが、まあこのくらい知っておけば十分でしょう。なお、溶連菌はとてもありふれた感染症です。また、大人が保菌者となって子供にうつることも良くあります。溶連菌に感染した子供の保護者の方や、流行している学校、保育園などの先生方の中にも、感染していることに気付かない方が結構おられます。のどが痛かったら、大人の場合は熱がなくても溶連菌のことがありますので、医療機関にご相談してください。
では、今日はこの辺で。読んでいただき、ありがとうございました。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。連日の雨で桜もところどころ散りかけてはいますが、この週末はまだあちこちで花見ができそうです。関東は春真っ盛り、ほんの少しの間に冬はどこへやら、遠く過ぎて行ったようです。さて、新学期も始まり、学校、幼稚園、保育園も新しいクラスに通い始める子供たち、屈託なく、楽しそうです。今日はこの季節にも多くみられる感染症の一つ、溶連菌についてお話ししましょう。溶連菌とは「溶血性連鎖球菌」という菌の略称で、代表的な感染症としては、咽頭炎、扁桃炎など、喉にくっつき、炎症を起こし、熱が出たり、腫れたり、喉が痛かったりするものです。
「なんだ、そんなのただの風邪と同じじゃん?」と言われそうですが、似てはいますが全然違います。普通の風邪、大多数はウイルスによるものですが、これらは放っておいてもまず大丈夫、自然に治ります。しかし、溶連菌は自然に治る場合も多いのですが、場合によってはとんでもないことが起こるのです。例えば、リウマチ熱と言って、多関節炎、心臓の広範な炎症などを合併したり、急性糸球体腎炎という腎臓の炎症を起こすこともあります。場合によっては一生涯抗生剤を飲み続けることになる患者さんもいます。しかも、こんなありふれた、しかも重大な感染症があちこちの病医院で見逃されてしまっているのです!!なんてこった!治療はペニシリンを10日間内服させる、というシンプルなものです。診断が問題です。これは溶連菌の所見ですよ、という明らかなものはなく、すごく腫れている、とか、喉の粘膜がとても赤くなっていて、ちょっとした擦り傷なみのようであるとか、まあ、溶連菌の患者を500人くらい見ればわかるよ、というような、あいまいで、感覚的な所見しかありません。ですから、ある程度怪しい場合は、必ず検査します。僕が知っているちゃんとした小児科医の人たちは、見逃さないよう検査をなさっています。喉の専門家であるはずの耳鼻科医が意外に見逃しているのが、とても残念です。
なお、日本の医学部および大学教育では、感染症の教育がなおざりになっています。大学に臨床の感染症内科医がいる病院はごくわずかです。僕の知る限り、筑波大にもいません。教育が十分でないので、師匠もだめなら弟子もダメ、という状況が僕の若い時からずっと続いています。感染症に興味や関心を持つ医師は、本当に少ない、というのが現実です。良い所もたくさんある日本の医療ですが、感染症については、多くの改善すべき点があると考えます。
すいません、ちょっと力が入りすぎ?ましたか。なお、以前のブログも、「カテゴリー」の中から呼び出してお読みになれます。皆さんが病気を知るうえで、少しでも参考になるようにと真面目に、考えながら書いているつもりです。最後に、溶連菌については色々な話が有りますので、、また別の機会にお話しします。読んでもらって、皆さんのために少しでもなればうれしいです。では、また。

カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは、しばらくぶりの更新です。
昨年からおたふくが流行っていますが、意外にこれが複雑な病気なので、少し勉強しましょう。
症状としては、ほっぺたのやや上が腫れて痛い、というシンプルなものがほとんどです。そのほかには、下あごの内側が晴れる場合もあります。どちらも、片方だけ腫れる場合と、両方腫れる場合が有りますが、どちらも罹った事には変わりません。熱が出ることも出ないこともあります。
なんだ、こんなことは誰でも知ってる、でしょうが、ここからが問題です。1%位の患者さんが髄膜炎になります。運が良くなければ入院です。耳の神経がやられて、一生治らない難聴になる人も、4%ほどいます。思春期以降では精巣炎、卵巣炎になる人も5~30%います。症状が出なくても膵炎となり、後にインシュリンの生産ができなくなって、糖尿病の引き金になる可能性も指摘されています。
その一方で、まったく症状がない、いわゆる不顕性感染と呼ばれる状態の人も3割ほどいます。なお、その人たちも人にはうつします(感染力有ります)ので、一度流行すると、なかなか食い止められません。また、この原因となるムンプスウイルスが問題なのです。治療薬は無いし、開発の見込みもありませんから、ワクチンしか手立てはありません。しかし、2回打っても罹る人が意外に多く、海外でも問題になりました。ここからはコアな、ニッチな話なので、感染症科以外の医師では余りご存じないでしょう。このウイルスは12のサブタイプ、いわゆる型に分かれていて日本製のワクチンはB型、海外のワクチンはA型のウイルスから作ります。ですから、他の型にも有効なのか?という問題が有ります。どうも、他の型に対する免疫が十分でないらしく、よって、他のタイプのムンプスウイルスに再感染する例があるということが判っています。先日、当院でも、ムンプスの抗体があるのにおたふくになり、血液検査の結果で新たなムンプス感染が判った、という人がいました。この場合は、以前罹ったものとは別のタイプに感染したことが考えられます。
潜伏期間も12から25日と幅が広く、いつ感染したかもはっきりしません。症状もピンからキリまであり、ということで、ありふれた病気であるおたふくかぜも、実は結構難しいのです。医師は、毎日が勉強ですね。でもがんばります。ではまた。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。明日からインフルエンザワクチンの接種が始まります。もう十月なんですね。子供のうちは一日が長くって、季節の移り変わりもゆっくりだったような気がしましたが、50歳を数年前に超えた今は、いつの間にか時が過ぎて行ってしまっています。先ほど車の中から公園の木々や街路樹を見ていると、いつの間にか赤や黄色に色づいていることに驚かされます。こうして日々が過ぎて行って、年を取るんだなあと思いました。
さて、今日はインフルエンザのあれこれをいくつかお伝えして、皆さんのお役に立てようと思います。前回の補足とも言えます。1;インフルエンザには毎年どのくらいの人がかかるの?ということですが、実は人口の2,3割の人がかかっているというデータがあります(海外)。でも、1/3位の人は症状がほとんどない、いわゆる「不顕性感染」なのです!実は、ウイルスや細菌に感染しても病気の症状が出ない(発症しない)人が意外にいまして、おたふくかぜ(ムンプスウイルス感染症)でも3割、あのエボラ出血熱でも数%は不顕性感染の人がいるのです。ただし、病気になってないわけではなく、体からウイルスが出てきて、人には感染させるという、まあちょっと迷惑な状態の人です。残りの人は、軽い風邪症状で済む人、典型的な高熱、関節、筋肉痛、頭痛などが起こる人、気管支炎、肺炎などの合併をする人、極めて稀に、脳症を発症する人などに分かれます。ですから、季節型のインフルエンザについては、小児や老人、持病の重い人を除けば症状はきついが、命を取られるっていうのんじゃない!とご理解ください。
次に、タミフルは効くの?という点ですが、今のところ、効くことは効きます。しかしウイルスによるものか、患者さんの個人差なのか(体質、薬の吸収率など)、あるいは内服までの時間経過なのか、とにかく解熱までの時間は人それぞれです。同じ型にかかっているはずなのに、次の日解熱した人も多いのですが、4,5日かかって、これは効いてるのかどうか判らないな、という場合もあります。ちなみに、私の家族は効きが今一つで、かかると熱出っ放しのことが多いです(泣)。理由は色々ですので、考えない方がいいです。
じゃあ新型ってどうよ?これは全くの別物です。H5N1ならば、かかったら50%は死にます。しかも飛沫や飛沫核感染ありなので、ウイルスのついた粒子を吸い込んだり目に入ったりしても感染する可能性があります。検査もできません。検査した医師、看護師などにくしゃみ、咳が降りかかると感染しますので、検査は禁止です。怪しいならタミフル投与します。しかも最低でも倍量が必要ですので、きちんといきわたるかが心配ですし、もし胃腸をやられていたら、飲んでも吐いたり下痢したりして、薬が十分に吸収されなければそれまでです。研究者の中には、変異を続けているうちに弱毒化すると言っている人がいますが、嘘です!!強毒の因子はそのままで、感染に関する因子が変異して他の動物にも感染するタイプになるという実験結果があります。希望的観測のみでものを言うのは原発だけにしてもらいたいです。なお、新型インフルエンザが流行した場合、率先して診療をする医療機関というのに当院は登録していません。なぜなら、「登録しても、新型インフルエンザワクチンを必ずしも接種できるわけではない」と明記されているからです。それでは神風特攻隊と一緒ではありませんか!死亡したときの保証もありません。私も職員をこのような状況では働かせられません。
すいません。ちょっと忙しいのでブログの更新がされませんでしたが、もうちょっと頑張りますのでよろしく。
(参考文献) 感染症学(改訂第4版)、感染症の事典(国立感染研究所)、改訂版 人獣共通感染症、ブラック 微生物学 第2版、ネルソン小児科学、その他には日本感染症学会誌のあれこれより また、厚生省、感染症学会のホームページなども参照します



カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは、今日は珍しく、秋晴れの良い天気でしたね。家の近くでは、さまざまな音色で虫たちが鳴いています。エンマコオロギ、鈴虫、カンタン、アオマツムシ、ウマオイなどに混じり、まだ蝉の声もします。つくばはまだまだたくさんの虫たちがいて、僕も自分の子供たちにあれこれ教えたものです。そのせいか、虫が好きな子供に育ったのも二人ほどいて、彼女たちはカブトムシに留まらず、何でも見たり触ったり、捕まえて家に連れてきます。カナヘビなんかもよく捕まえて、庭に放したりするものですから、今ではたくさんのカナヘビたちが、庭のあちこちで走ったり隠れたりしています。
さて、間もなくインフルエンザのワクチン接種が始まります。接種しようかどうか、本当に効くのか、値段が高いのかどうか、安全なのかどうか等々、悩んでいる方も多いと思います。そこで、少々インフルエンザについて考えてみましょう。
今では厚生省やワクチンメーカー、いろんな病院のサイトでインフルエンザについての情報提供をしています。そこで、一般的な話はさておき、いくつかに論点を絞りましょう。
1;ふつうのインフルエンザは怖い病気なの? これについては、かかった患者さんがどういう人かによって全く違います。あなたが12歳以上で、特別な病気もなく、普段は健康でしたら、これはもう大した病気ではありません!!確かに熱は出ますし、4,5日続くかもしれませんし、節々はだるいし頭は痛いので、学校や職場は一週間近くお休みでしょう。しかし、ほぼ全員が、それですっかり治ってしまいます。少なくとも、命に係わる例はほとんどありません。ですから、欧米では、これらの人たちにはタミフルなどの抗ウイルス薬は投与しません。頼まれても、まず出しません。「一週間寝てれば治るから。」それでおしまい。「えっ、おれ忙しいのに。」「明日私どうしても仕事が!!」そんなこと言っても通用しません。「自然に治るからタミフル要んないから!」これが日本以外の国の基本的なスタンスです。
では、「家の70歳のじいちゃんは?ゴルフも登山もバリバリなんだけど!」「3歳の喘息気味の子供なんですけど、風邪をひくと咳が長引いて。」ではどうでしょうか?これはタミフルが要ります。何故ならインフルエンザによって他の細菌によろ肺炎、気管支炎のリスクが増し(65歳以上では気管支炎の合併率が3割とも言われています)、場合によっては命の危険があるからです。また、喘息や心臓病の方は呼吸状態が悪化しますので、それだけでも十分危険です。
2;タミフルって危険?副作用が心配で。  これは余り気にしなくて良いのでは、と思います。ただし、少数ですが、これは副作用かな?と思われる状況の患者さんもおります。一度でも異常な行動、反応があれば、念のため中止しましょう。タミフルは妊婦さん、授乳婦さんにも使える薬です。
3;ワクチンって、どうなの?  これは人にもよりますが、世界的にお勧めすることになっています。かかってもある程度は軽く済むことが多いですし、一シーズンかからなかった人もいます。残念ながらまともにかかってしまう人もいますが、1,2割程度です。僕たちは無論毎年打ちますし、職員も含めて発熱したり仕事を休んだりするのはほとんどありません。うちの職員や僕が特別丈夫そうにも見えませんが、その位です。

以上、いくつかの点についてお話しいたしました。ではまた。
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投稿者: satohcli10-9
最近のニュースやネットで、「ウイルス」という文字を見ない日は有りません。エボラウイルス、デングウイルス、さらにもうすぐインフルエンザやノロウイルスが流行する季節になります。さらに、エイズや肝炎ウイルスも侮れません。
では、ウイルスって何?ばい菌と違うの?うつるの?なんで病気になるの?など、いろいろ疑問が浮かんできますね。難しくない範囲で説明しましょう。はっきり言って、怖いです!!ウイルスというのは生物かどうかちょっと疑問な存在です。細胞は無いし、DNAすらないものも有ります。(RNAウイルス)自分だけでは増えることもできません。ですから、一般の生物の分類にはどこにも入らないのです。また、どうやって増えるかというと、標的となる生物(彼らの「食料」とでもいいましょうか?)の細胞にくっつき、中に入り込み、自分の遺伝子を細胞の中で、そのの中の成分を使ってウイルスの遺伝子をコピーしたり、自分の体の成分を作らせたりします。その間細胞は何も抵抗できず、され放題でウイルスの部品を作らされてしまいます。たとえあなたが「やめてー。」とか「何とかしてー。」と叫んでも、がんばっても、もうあなたの細胞はいうことを聞きません。ウイルスに支配され、死ぬまでウイルスを作るだけの奴隷、ウイルス生産工場と化してしまったのです。やがてたくさんのウイルスが細胞内で組み上げられ、数がいっぱいになったらあなたの細胞は崩れ、破裂してウイルスを体の中に吐き出してしまいます。それがまた周りの細胞にくっついて、、、ということを繰り返していきます。インフルエンザウイルスなどは細胞をいきなり破壊しませんが、寄生された細胞は、消耗して死んでしまうまでに、一分間に数千個のウイルスを数時間以上作らされ続けます。
それだけではなく、ある種のウイルスは生物の遺伝子に入り込み、遺伝子を変化させてしまい、正常だった細胞ががんに代わってしまうものも有ります(子宮頸がんなどはこれ)。さらに、寄生した細胞と共存するよぷに見せかけ、ある日突然自分だけを増殖させ、破壊してしまうものもいます。これらを知るにつけ、「ああ、人間って、なんて無力なんでしょう!」そんなことすら感じます。
幸運にも、多くの場合は途中で生物の免疫システムが働き、ウイルスを壊したり、ウイルスが感染した細胞を見つけて免疫細胞が殺したりしてウイルスが増えるのを阻止したりします。だから、私たちは多くの場合、ウイルスに殺されないで済んでいるのです。また、ウイルスも寄生した生物を皆殺しにすれば自分も「エサ」が無くなって絶滅するので、生物を殺すような激しい反応まではしないものが多いのです。
どうですか?ウイルスの、ほんのさわりの部分についてお話ししましたが、面白かったですか?僕は、子供のころからこんな話が大好きでした(誤解を受けそうですが)。これからもがんばって病気の人をサポートいたしますので、どうぞ宜しく!