こんにちは、久しぶりの更新で、しかもこの話題は1か月前にすべきだった、と言う位つくば市内のあちこちで発生していましたし、今も現在進行中です。主に未就学児の子供さんに多いのですが、小学生にも結構出ていますので、今回は特に子供の肺炎、気管支炎について。
子供の肺炎、気管支炎と言ってまず一般の方でもご存じなのは、マイコプラズマとRSウイルスによるものでしょう。ただし、今回に限らず、マイコを調べても、半分以上は陰性、つまりそれ以外の菌でした。RSに関しても、本来は入院する適応をチェックする際でなければ保険が効かないので、クリニックレベルでは調べないのです。また、RSは幼児のうちに、人間ならほとんど全員が一度は感染しますので(1歳までに60~70%,2歳までにほぼ全員が感染する)、あまり大騒ぎしても仕方ないのです。軽ければ風邪で済むし、運が悪ければ細気管支炎、肺炎になる、そういう事です。RSウイルスについては治療薬が無く、対症療法や、入院中も一般的な呼吸管理のみで、数日で退院することが多い病気です。ですから、必要以上に騒ぎ立てるほどの病気ではありません。そういう意味では、幼稚園や保育園であまり神経質になるものでは無いということを、親御さんも、先生方もご理解いただきたいものです。
マイコプラズマに関しては、入院する場合もありますが、自然治癒する場合もあります。ただし、いずれにしても咳は数週間続くでしょう。最近この菌について、困ったことが起こっています。それは、以前はこの病気に対して使っていた、マクロライド系抗生物質が効かなくなってきたことです。特に日本国内では、マイコプラズマの60%がマクロライド耐性菌とも言われています。その原因は医者に大きな責任がありますが、患者さんのほうも少し考えてもらいたいことが有ります。それは、風邪や中耳炎ですぐに抗生剤を出してしまい(これを薬の乱用といいます)、それを感染症の専門家が指摘しても、かなりの数の耳鼻科、内科、一部の小児科医(最近の僕より若い小児科の先生たちは、きちんと勉強されているのでむやみに抗生剤は出しませんが)が「現場を知らない学者の言うことだ。」「治んなかったらどうする。」などと言い続け、あげくの果てにマクロライドを世界で一番無駄遣いして(日本の医者が、です)、その結果、世界で類を見ないほど耐性菌が増えたのです。しかも、この事実が医学雑誌などに出ていても、ほとんどの臨床医は読むことさえしないのです。また、一般の患者さんや、あるいはその保護者も、「抗生剤くらいくれなきゃね。」「あそこの薬は強いけど治るし。」などと、これまたトンでも発言をしている人も多いのです。感染症の学会は、一般の風邪に抗生剤の必要はないと繰り返し勧告してますし、中耳炎も、痛みや熱がないなど、軽い場合は3日を経過しても症状が改善しない時には抗生剤の投与をするよう記載されています。また、気管支炎レベルなら抗生剤を必ずしも投与する必要はない、とも言っております。また、それで自然に治る例が大部分であり、抗生剤を出したから治ったのではなく、時間がたったから勝手に治った例がほとんどなのです。
残念ながら、マイコプラズマにクラリス、ジスロマックを投与しても悪化する例がここつくばでも多く、その場合は使えるものが極めて限られてきます。キノロン系と呼ばれる抗生剤ですが、小児に使える種類が限られ、また、使って良い病気も、例えばオゼックスという薬は、肺炎と、中耳炎(最初からは使いません、治りにくい時のみ)、コレラ、炭疽だけです。
本当に必要な時に役に立つよう、無駄に使わない、よく考えて使う、これは石油や水資源などの話だけでなく、薬も全く同じなのです。医者は賢くなければ話になりませんが、患者さん達も、必要な治療は何か、何が正しいのか、ネットの情報は玉石混合ですが、きちんとした病院や厚生省、関連学会などのサイトではきちんとしたことを言っています。お互いに、賢くなりましょうね。ではまた。