こんにちは。更新がなかなか出来ずごめんなさい。寝不足がたたり、このパソコンの前で意識消失。気が付くと午前3時、などということもあり、全然書けませんでした。今日は前回と打って変わってまた病気の話です。前回の続きはもう少し後で書きますので、お楽しみに。
さて、胸が苦しい、痛い!これはなかなか危なそうな症状です。僕のクリニックに来院する方の中にも、これを訴えて、心配そうになさっている方が多くいます。では、これらの症状は、本当に心臓や、その他危ないものなのでしょうか?場合によっては、「死に至る病」なのでしょうか?
これについては、心臓血管系、いわゆる循環器をやっていた医師とそうでない医師の差が如実に表れるもののひとつです。循環器以外の医者では、胸が痛いと言ったら、まず自分でそれ以上は判断せず、丸投げします。「これはやばい、危ない。自分の専門ではないし。」でも、冷静に考えることが大事なのです。まず、心臓の病気は意外にシンプルで、筋道を立てて考えれば割と解りやすいものです。医学とは自然科学の分野の一つである、というのは皆さんご存じのとおりです。つまり、人が病気になるにはそれだけの理由があり、またきちんと理論的に考えられるものです。したがって、心臓病についてもきちんと理論、必然があり、よほど特殊なものでなければ例外はほとんど有りません。ですから、訳も判らず直ぐに心電図をとったり血液検査をしたりしてはいけません。その前にやることがあるのです。きちんと病歴を取り(患者さんから症状や状況を聞き出してまとめること)、整理すること。例えば、心臓の筋肉へ血液を送る血管が細くなったり、詰まりそうになって胸が痛くなる狭心症では、まずは体を動かし、心臓に負担がかかった時に胸が痛くなる。また、内臓の痛みは放散痛と言って痛みがあいまいに広がるため、広い範囲で痛む。さらに、痛みの持続時間は数十秒から数分は続くはずであるので、そこもチェックする。また、痛み発作には再現性があり、同じような状況、行動ではほぼ毎回同じような症状が出現するはずです。
以上、ざっとこれ位は患者さんからお話を聞き、確認することが必要です。ここまででだいたい狭心症か否かの見当がつきます。いや、つかなければ循環器内科医としてどうか、という内容です。その上で、動脈硬化を生じるリスクがないかを確認、あればその評価をします。リスクとしては年齢、血糖、コレステロール、中性脂肪、喫煙、尿酸値、家族歴、肥満などです。なお、ストレスは現代人ならみんな大なり小なり有りそうなのでリスクに数えられないかもしれません。また、ある種の不整脈でも胸の不快感、痛みなどが起こることもあるので、その鑑別も必要でしょう。それから心電図を取ってもおかしくありません。なお、胸が痛くて病院に来ている人については、痛みが消えないうちに急いで心電図をとり、その場で判定します。
なお、一般的に体の痛みの過半数は、その部分の内臓の病気ではないことが判明しております。たとえば頭が痛いからと言って脳腫瘍や脳動脈瘤がみんなに有る訳では無いことは、少し考えればお分かりだと思います。セデスやバファリンを飲んで痛みが治る脳腫瘍はありません。ですが、焦ってすぐに脳外科などに駆け込んでCTやMRIなどを取ってもらうのはお金と医療資源の無駄ですし、患者さんの話もろくに聞かずに「あ、心配だから頭の検査を念のためしましょう。」などとすぐにいう医者は、よほど検査代をとるノルマがかかっている病院の勤務医か、頭が悪いかのどちらかですので、皆さん、十分注意してくださいね。
胸の痛みも、肋間神経痛、心因痛、食道スパスム(痙攣の一種)、気胸、肺がん、肋骨損傷や肋間筋の損傷など様々です(他にも有りますが、頻度の高いものを挙げてみました)。ただし、なんでも心臓、という訳では有りませんが、見逃されるとあっさりあの世行き、ともなりかねません。ご心配、不安でしたらご相談ください。ではまた、今日はこの辺で時刻も午前2時半を回りました。そろそろ筋トレでも、って寝たほうが良いですかね?では、おやすみなさい。