こんにちは。台風が通過した今日はものすごく熱くなりましたね。昨日北海道から本州に戻ってきた僕には(とはいえ3日しかいませんでしたが)、少々強烈な暑さです。まだ青少年たちは夏休み。スポーツや野外活動の機会には、熱中症のリスクも伴いますので、しばらくは十分な注意が必要です。
さて、熱中症とは何か?高温の環境である程度過ごしたり、体を動かしていると、体の中の水分や、ナトリウムなどの塩分が主に発汗により失われます。また体温を下げるために末梢血管(体のすみずみに広がっている細かい血管)が広がり、熱を放出しようとします。そのため、血圧が下がったり、相対的に血液の循環する量が不足したりして、内臓(脳も内蔵です)や筋肉などに十分に血液が回らない状況になります。そのために起こるいろいろな障害、症状のことを熱中症というのです。ですから、熱いところにいる時にリアルタイムに起こりますので、例えばスポーツをしていて次の日に体調を崩した、または具合が悪い、というのは全然熱中症ではありません。
さて、熱中症は1度、2度、3度の3段階があり、緊急性、重症度が全く違いますので、皆さんも覚えていて損はないでしょう。以下、簡単に説明いたしますが、より詳しく知りたい方は、厚生省や環境庁のホームページなどもご覧ください。
まず1度は、めまい、たちくらみがある。筋肉痛、足やほかの筋肉がつる(こむら返り)これらは低ナトリウム血症によるものです。また、時には失神する場合もあります(意識は戻ります)。さらには大量に発汗(汗が出ること)します。この状況ではまだ明らかな体温の上昇はなく、深部体温(直腸などの温度)も38度以下です。これに対しては、安静、冷やす、水分と塩分の補給、これはただの水だけではなく、ナトリウムなどが入っているスポーツドリンクが良いです。あまり成分にこだわらず、量が必要です。
2度になると頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感、判断力や集中力の低下が起こります。このレベルでは体温調節は上手くゆかなくなり、38度台の高体温となってきます。深部体温は38~40度となります。積極的に体を冷やす、十分に水分、塩分を取ることはもちろん重要ですが、自分であまり飲めないことも考えられますので、病院に受診させます。輸液(点滴)も必要なことが多いです。場合によっては入院しますが、その判断は、主に意識状態、症状の改善の程度などで判断します。
3度は最も重篤な状態で、体温調節が破たんしており、39度以上の高体温となります。意識がない、または低下しており、けいれんも起こることもあり、この状況では血液検査で肝臓、腎臓の障害、血液凝固機能の異常など、命にかかわるほどの異常も認めるようになってきます。すぐに病院に搬送し、集中治療室による管理が望ましいとされ、残念ながら当院では無理ですので、救急車でメディカルセンター、記念病院、土浦協同病院、(受けてくれれば大学病院もあり)などの3次救急病院での治療が必要です。要するに、熱くなりすぎるだけでも人間は簡単に死ぬことがある、こう覚えていて下さい。
いつも熱いならむしろ起こりにくく、急に暑くなった、湿度が高い、激しい運動や重労働、または熱い室内などで起こりやすいものです。さらに注意していただきたいのは、一人でいるときに起こると動けないままどんどん悪化してゆき、そのまま死んでしまい、後で発見された時には手遅れ、ということも多いのです。人通りの少ない夏の道をランニングしたり、一人で畑仕事をしたりする時は、前もって家族に声をかけたり、携帯電話を持っているようにするなど、助けを呼べるようにしておくことも大事でしょう。最近は、水分補給はみなさん気を付けていらっしゃるようですからここでは申し上げません。
夏の日差しを浴びて、外で何かをするのは悪いことばかりではありません。ただし、地球が温暖化し、僕が若かった頃(30年位前)より格段に夏は暑く、厳しくなっています。体調を崩さず夏を満喫できるよう、少しの慎重さ、注意深さが必要だと思いますが、いかがでしょうか?ではまた。