こんにちは。すっかり秋になりました。今年はお天気が今ひとつなのが残念ですが、それでも晴れた日は空が高く、トンボが舞い、少し少なくはなりましたがまだ虫の声が聞こえます。日も短くなり朝夕は上着が要るようになりましたね。個人的には秋も好きなのですが、その一方で鼻炎やぜんそくの子供たちが悪化する季節でもあるので悩ましいところです。
さて、今日の話題は季節に関係ないもので、脂肪肝についてです。「脂肪肝」というと、何だかちょっと太って、検診では少し肝臓の数値が上がって(GOT,GPTとか書いてあります)、おなかの超音波では脂肪肝と書かれていて、検診の説明や、かかりつけのお医者さんでも(大した緊迫感はなく)「ああ、ちょっと太ったからですよ、ダイエットですね、あとは運動ですね。」「まあ、おいおい体重を減らせばいいでしょうね。今忙しいんでしたら、ひと段落ついてからでも。ははは。」などというのんきなことを言っていたものです。患者さんのほうでも、「いやあ実は毎年言われてるんですよ、今年こそはとがんばっているんですが、なかなかやせなくて、うふふ。」「何でもおいしく食べられるんですよのね、判っているんですがね。あははは」などと皆さん苦笑いをしながらお話しています。実は僕も、その程度の認識しかなく、悠長な会話をしていたな医者の一人でした。しかし近年、脂肪肝から肝硬変となり、肝臓がんになってしまうことがたびたびあることが判ってきて、内科医の間で大問題となっているのです。
日本では、検診で男性の3,4割、女性の1,2割が脂肪肝と診断されています。そのうち1,2割がこれからお話しするNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と報告され、肝硬変、肝臓がんになる危険があるのです。ということは、ただ脂肪がついているだけだと思われていた脂肪肝の患者さんのうち1割くらいは、とてもまずいことになっている、つまり対応を間違えれば、あるいは甘く考えていたら死んでしまう、ということになります。
このNASHというのは比較的新しい概念で、専門誌に出てきたのは10年位前からのようで、僕のような、消火器専門ではない医者の間で知られてきたのはここ数年です。自覚症状はなく、肝硬変になり、だるさや黄疸が出るまで普通に過ごせます。血液検査では普通の脂肪肝と区別はつきません。肝硬変になればそれなりの異常はありますが、その前の段階では診断はつきません。確実なのは肝生検と言って、超音波をしながら肝臓に太い針を刺し、肝臓の細胞を取ってきて調べる、これしかありません。幸いつくばでは学園病院、記念病院、筑波大学、または東京医大の霞ヶ浦など、肝臓専門医がいる病院はたくさんありますので、検査はそれほどまたずにしてくれます。しかし、痛そうで、怖そうですよね。でも、肝臓専門医に勧められたらどうしましょう?答えは一つです、必ずやってもらってください。肝硬変になってからではおそいのですから。
治療は一つ、減量しかない、ということです。薬を飲んでもだめです、「ウルソ」「小柴胡湯」などの薬は効かないそうです。とにかく肝硬変になる前に、真剣に減量してください。5%の減量で肝臓の炎症と細胞の変性が改善され、7%で治癒すると報告されています。痩せれば治る、これはすごいことです。余計なコストはかかりません。体に良いことをしていれば治るのです。ついでに血圧や、血糖、コレステロールも良くなり、体も締まって、見た目も良くなります。
検診でひっかかっている皆さん、こんなつまらないことで死んでいる暇はありません、自分のため、家族のためにも仕事も大事ですが、命あっての仕事です、気持ちを入れ替えて頑張ってください。
では、今日はこの辺で。午前5時になりました、今日は日曜日なので、僕はスクールでテニスのレッスンを受ける予定です。子供たちと毎週のようにテニスをやっていたころよりだいぶお粗末になっていますが、せめて大学生になった娘たちに打ち負けないように、がんばっています(息子にはとうの昔に追い越されました)。午後は筋トレもやります。休みの日にごろごろしていては、運動する時間はありませんから。ではごきげんよう。