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September 2016 の投稿一覧です。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。秋雨前線と度重なる台風のせいで、ここしばらくお天気がぱっとしません。ほかの病気もあれこれ増えていますが、最近流行っている麻疹について、少しお話します。
まず麻疹って、過去の病気のイメージがありますね、なんせめったに流行りませんから。ただこれは今の子供や若い成人の方がワクチンをきっちり接種しているからです。ただし、これも大きな穴があり、2回のワクチン接種をしても、その効果が一生続くわけではなく、人によっては数年か、十数年で抗体が下がってしまうかもしれないことです。さらに、麻疹のウイルスをやっつける薬がいまだに存在せず、またこれからも出て来る見込みがないこと、つまり、かかったとしても医学の力では治せないことです。つまり体力任せ、ということです(ここでいう体力とは、筋力ではなく、免疫力のことですから)。
まず基本的なことから。麻疹はウイルスによる病気です。感染力は非常に強力で、飛沫感染、飛沫核感染(空気感染のようなものです)、接触感染などによる感染で、免疫が無ければ、あるいは不十分ならほぼ100%発病します。ただし、体内から外界に出てしまえば比較的早く死んでしまい(不活性化)まして、約2時間で感染力がなくなります。 潜伏期間は平均10日間で、7から18日程度の幅があります。症状としては、初めは熱(38,5度以上が多い)、咳、鼻水、目の充血など、重めの風邪か、インフルエンザのようなものです。が、その3日から4,5日後に一瞬少し熱が下がったと思ったら再び発熱し(39度以上出ます)、頭部、顔面から全身に広がる赤白まだらの紅斑(湿疹などでは有りません)が現れ、4から7日間続き、やがて解熱します。肺炎、中耳炎、脳炎など、合併症も多く、また特効薬も無いのですが、全身状態がかなり悪くなり、(重いインフルエンザのようなものです)、また合併症の多くは細菌感染で、しかも重症例も多いので、現在でも約4割の患者さんは入院します。
ワクチンを打ったのに免疫が下がったため感染した場合はもっと微妙で、わかりにくいものです。修飾麻疹と呼ばれ、潜伏期は14から20日程度と長く、最初の症状は軽く、いきなり発熱と紅斑が出ることもあります。患者自身は比較的軽症ですが、咽頭(のどのこと)からはウイルスがきっちり検出されますので、感染源となります。今回の麻疹流行のきっかけは、このタイプの患者さんからだった可能性が高いですので、熱が出て体に何か出てきたら、必ず病院にかかってください、またその際には前もってお電話いただけると、こちらも2次感染予防の準備がしやすいので、よろしくお願いします。
予防としてはワクチンしかありません。なお、麻疹ワクチンの定期接種は、日本では1976年(昭和51年)からですので、それ以前に生まれた方はほぼ100%一度かかっているはずです。かからないで済むほど甘い病気ではありませんし、かかった場合は一生免疫がついていますので、ひとまず安心です、それ以降、2008年3月まではワクチンは1回のみの接種でしたので、もしかしたら免疫がなくなっているかもしれません。血液検査も可能ですが、検査費用は基本的に100%自己負担ですし、5000円は少なくともかかるでしょう(もっと高いかもしれません)。ワクチンを打ったほうが間違いないと思います。ただし麻疹単独のワクチンは超品薄で、10倍払っても手に入りません。麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)を接種してください。デメリットは何もありませんので。また、2回打ちをした方も、厳密に言えば100%安全ではありません。ただし、仮に免疫が下がっていても、ワクチンなしでかかるよりは軽いはずですので、ひとまず様子を見てはいかがでしょうか?なお、小児科、感染症科などで働く医療関係者は、抗体チェックをしたほうが安心でしょうね。老婆心ながら。
さて、世の中にはまだまだ直せない病気がたくさんあり、その中には、たとえ科学が進んだとしてもコストが合わないために今後も薬が開発されないであろう、という病気もたくさんあります。麻疹もそのうちの一つでしょう。ただし、ワクチンができる前には世界で毎年1億人が感染し、そのうち600万人が死亡した!!という病気ですから、しっかりとしたワクチンがあるだけでもありがたいと思わなければなりません。病気そのものの解説などは、厚生省のホームページなどを見てください。
あいにくのお天気ですが、どうぞ有意義にお過ごしください。僕は午後は筋トレをするつもりです。昨日は肩、腕でしたので、今日は胸と背中を予定してます。もともと筋肉がなく、太りやすい体質なので、余計に頑張るしか無いのです(涙)。ではまた。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんにちは、久しぶりの更新で、しかもこの話題は1か月前にすべきだった、と言う位つくば市内のあちこちで発生していましたし、今も現在進行中です。主に未就学児の子供さんに多いのですが、小学生にも結構出ていますので、今回は特に子供の肺炎、気管支炎について。
子供の肺炎、気管支炎と言ってまず一般の方でもご存じなのは、マイコプラズマとRSウイルスによるものでしょう。ただし、今回に限らず、マイコを調べても、半分以上は陰性、つまりそれ以外の菌でした。RSに関しても、本来は入院する適応をチェックする際でなければ保険が効かないので、クリニックレベルでは調べないのです。また、RSは幼児のうちに、人間ならほとんど全員が一度は感染しますので(1歳までに60~70%,2歳までにほぼ全員が感染する)、あまり大騒ぎしても仕方ないのです。軽ければ風邪で済むし、運が悪ければ細気管支炎、肺炎になる、そういう事です。RSウイルスについては治療薬が無く、対症療法や、入院中も一般的な呼吸管理のみで、数日で退院することが多い病気です。ですから、必要以上に騒ぎ立てるほどの病気ではありません。そういう意味では、幼稚園や保育園であまり神経質になるものでは無いということを、親御さんも、先生方もご理解いただきたいものです。
マイコプラズマに関しては、入院する場合もありますが、自然治癒する場合もあります。ただし、いずれにしても咳は数週間続くでしょう。最近この菌について、困ったことが起こっています。それは、以前はこの病気に対して使っていた、マクロライド系抗生物質が効かなくなってきたことです。特に日本国内では、マイコプラズマの60%がマクロライド耐性菌とも言われています。その原因は医者に大きな責任がありますが、患者さんのほうも少し考えてもらいたいことが有ります。それは、風邪や中耳炎ですぐに抗生剤を出してしまい(これを薬の乱用といいます)、それを感染症の専門家が指摘しても、かなりの数の耳鼻科、内科、一部の小児科医(最近の僕より若い小児科の先生たちは、きちんと勉強されているのでむやみに抗生剤は出しませんが)が「現場を知らない学者の言うことだ。」「治んなかったらどうする。」などと言い続け、あげくの果てにマクロライドを世界で一番無駄遣いして(日本の医者が、です)、その結果、世界で類を見ないほど耐性菌が増えたのです。しかも、この事実が医学雑誌などに出ていても、ほとんどの臨床医は読むことさえしないのです。また、一般の患者さんや、あるいはその保護者も、「抗生剤くらいくれなきゃね。」「あそこの薬は強いけど治るし。」などと、これまたトンでも発言をしている人も多いのです。感染症の学会は、一般の風邪に抗生剤の必要はないと繰り返し勧告してますし、中耳炎も、痛みや熱がないなど、軽い場合は3日を経過しても症状が改善しない時には抗生剤の投与をするよう記載されています。また、気管支炎レベルなら抗生剤を必ずしも投与する必要はない、とも言っております。また、それで自然に治る例が大部分であり、抗生剤を出したから治ったのではなく、時間がたったから勝手に治った例がほとんどなのです。
残念ながら、マイコプラズマにクラリス、ジスロマックを投与しても悪化する例がここつくばでも多く、その場合は使えるものが極めて限られてきます。キノロン系と呼ばれる抗生剤ですが、小児に使える種類が限られ、また、使って良い病気も、例えばオゼックスという薬は、肺炎と、中耳炎(最初からは使いません、治りにくい時のみ)、コレラ、炭疽だけです。
本当に必要な時に役に立つよう、無駄に使わない、よく考えて使う、これは石油や水資源などの話だけでなく、薬も全く同じなのです。医者は賢くなければ話になりませんが、患者さん達も、必要な治療は何か、何が正しいのか、ネットの情報は玉石混合ですが、きちんとした病院や厚生省、関連学会などのサイトではきちんとしたことを言っています。お互いに、賢くなりましょうね。ではまた。