過去の投稿

October 2016 の投稿一覧です。
こんにちは。すっかり秋になりました。今年はお天気が今ひとつなのが残念ですが、それでも晴れた日は空が高く、トンボが舞い、少し少なくはなりましたがまだ虫の声が聞こえます。日も短くなり朝夕は上着が要るようになりましたね。個人的には秋も好きなのですが、その一方で鼻炎やぜんそくの子供たちが悪化する季節でもあるので悩ましいところです。
さて、今日の話題は季節に関係ないもので、脂肪肝についてです。「脂肪肝」というと、何だかちょっと太って、検診では少し肝臓の数値が上がって(GOT,GPTとか書いてあります)、おなかの超音波では脂肪肝と書かれていて、検診の説明や、かかりつけのお医者さんでも(大した緊迫感はなく)「ああ、ちょっと太ったからですよ、ダイエットですね、あとは運動ですね。」「まあ、おいおい体重を減らせばいいでしょうね。今忙しいんでしたら、ひと段落ついてからでも。ははは。」などというのんきなことを言っていたものです。患者さんのほうでも、「いやあ実は毎年言われてるんですよ、今年こそはとがんばっているんですが、なかなかやせなくて、うふふ。」「何でもおいしく食べられるんですよのね、判っているんですがね。あははは」などと皆さん苦笑いをしながらお話しています。実は僕も、その程度の認識しかなく、悠長な会話をしていたな医者の一人でした。しかし近年、脂肪肝から肝硬変となり、肝臓がんになってしまうことがたびたびあることが判ってきて、内科医の間で大問題となっているのです。
日本では、検診で男性の3,4割、女性の1,2割が脂肪肝と診断されています。そのうち1,2割がこれからお話しするNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と報告され、肝硬変、肝臓がんになる危険があるのです。ということは、ただ脂肪がついているだけだと思われていた脂肪肝の患者さんのうち1割くらいは、とてもまずいことになっている、つまり対応を間違えれば、あるいは甘く考えていたら死んでしまう、ということになります。
このNASHというのは比較的新しい概念で、専門誌に出てきたのは10年位前からのようで、僕のような、消火器専門ではない医者の間で知られてきたのはここ数年です。自覚症状はなく、肝硬変になり、だるさや黄疸が出るまで普通に過ごせます。血液検査では普通の脂肪肝と区別はつきません。肝硬変になればそれなりの異常はありますが、その前の段階では診断はつきません。確実なのは肝生検と言って、超音波をしながら肝臓に太い針を刺し、肝臓の細胞を取ってきて調べる、これしかありません。幸いつくばでは学園病院、記念病院、筑波大学、または東京医大の霞ヶ浦など、肝臓専門医がいる病院はたくさんありますので、検査はそれほどまたずにしてくれます。しかし、痛そうで、怖そうですよね。でも、肝臓専門医に勧められたらどうしましょう?答えは一つです、必ずやってもらってください。肝硬変になってからではおそいのですから。
治療は一つ、減量しかない、ということです。薬を飲んでもだめです、「ウルソ」「小柴胡湯」などの薬は効かないそうです。とにかく肝硬変になる前に、真剣に減量してください。5%の減量で肝臓の炎症と細胞の変性が改善され、7%で治癒すると報告されています。痩せれば治る、これはすごいことです。余計なコストはかかりません。体に良いことをしていれば治るのです。ついでに血圧や、血糖、コレステロールも良くなり、体も締まって、見た目も良くなります。
検診でひっかかっている皆さん、こんなつまらないことで死んでいる暇はありません、自分のため、家族のためにも仕事も大事ですが、命あっての仕事です、気持ちを入れ替えて頑張ってください。
では、今日はこの辺で。午前5時になりました、今日は日曜日なので、僕はスクールでテニスのレッスンを受ける予定です。子供たちと毎週のようにテニスをやっていたころよりだいぶお粗末になっていますが、せめて大学生になった娘たちに打ち負けないように、がんばっています(息子にはとうの昔に追い越されました)。午後は筋トレもやります。休みの日にごろごろしていては、運動する時間はありませんから。ではごきげんよう。
カテゴリー: 総合
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。今日は連休最後の日ですが、あいにくのお天気に。僕は受験生の親なので、さして遠出もできません。今日はこうして事務仕事と、夕方に少し運動をするつもりです。さて、先日「ためしてガッテン」という健康番組で(いつも見ているわけではなく、子供たちと暇つぶしに見ていました)、「血糖値スパイク」なる言葉を初めて聞きました。勉強不足ですいませんが、医学用語としては、「食後高血糖」が以前から使われているものですから。なお、医学的にはこの「食後高血糖」という言葉は以前からあり、糖尿病の前触れであることや病気のリスクとしては知られていましたが、「血糖値スパイク」それ自体がすでに病気であること、つまり、心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患につながるということが判ったというのです。これは大変な話で、今までの検診や、食後に適当に血糖をチェックしただけでは判らない、ということになり、一層厳密な検査が求められているのです。さて、ではどうしましょうか?
まずは冷静にご自分のリスクを評価します。親族の糖尿病歴の有無、運動の習慣、体型、食事の量、内容などについてです。また、病院を受診した時には時々採血をしましょう、できれば食後2時間から3時間位までに採血するのが良いでしょう。その際に中性脂肪もチェックして、食後高脂血症も調べましょう。またその際には何をどのくらい食べてきたのかを医師に伝えるのが良いでしょう。なお、そこで、「そんなこと言われてもどのくらいのカロリーあるか判んないから。」とか、「ご飯食べない時に、改めて血を取りましょうね。」などといった医師がいたら、首絞めてやってください!医者変えましょう。
ところで、あの番組では大変重要なことが抜けていました。「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」の原因として、インスリンが膵臓から十分な量が出ているのに、体の細胞がインスリンに対する反応が悪くなっているため、その結果血糖が上がってしまうと言われていました。これは医学的には「インスリン抵抗性」と言われ、血糖上昇の大事な原因の一つ(ここが重要)ではあります。しかし、日本人(さらには多分朝鮮民族、漢民族、モンゴル民族なども含めた東アジア人)の多くは、白人に比べてインスリンの分泌(生産)量が少なく、そのため太っていなくても血糖が上がりやすいのです。これは遺伝子レベルの問題で、日本人の約8割の人が白人に比べインスリンの分泌能力が約半分程度しかない、と言われています。ですから、大部分の日本人にとっては、誰でも「高血糖スパイク」に陥っている可能性がある、ということです。
ちょっと待って!そんな大事なこと、なんでテレビで言わないの?と思いますよね。まして、出演して解説していたのは順天堂大名誉教授の河盛先生、糖尿病の研究にかけては知らぬ者は無い、というほどの「大先生」です。僕でも知っていることですから、当然お話しなさらないはずはないのです。ということは考えられるのはただ一つ、放送時間の関係で、編集した際にNHKが削除したのだと思われます。そんなこと有るの?と思われて当然ですが、マスコミは適当にコメントや発言を切り貼りするものなのです。その結果、伝えるべきことの一部が伝わらなかったり、意味が全然違ったりすることはよくあるのです。まして、その分野の「素人さん」が編集するものですから、「トンデモ健康番組」になることはよく有るのです。医学関係者の間では、「ためしてガッテン」はみのもんたの健康番組と「同レベ」の内容だということで、たびたび糾弾されます。まあ実際はそこまでひどくはないでしょうが、構成の段階で、コメンテーターの確認位は取られたほうが良いと思いますね。なんせ「NHKですから!」
皆さんが十全の信頼を置いているテレビや新聞報道にも、理系の専門分野については時にずいぶんとお粗末な内容があることは、研究者の方々がたくさんおられるつくばでは時折耳にすることです。「研究内容について、記者発表の時いくら説明しても(出席した記者は)全然判んなくて、後で記事を見たら(自分たちが言ったことと)全然違うこと書いてるんですよね。」ということを、あちこちの研究所の方からお聞きすることがあります。なんにせよ、今回の放送はとても良い内容でしたので、片手落ちになってしまっているのは残念ですし、どこかで高名な先生がお話しされる機会が有れば良いのですが。
世の中には、みんなにとって何か有益な情報や、ぜひ知ってもらいたいことがあっても、そういうことに限ってなかなか正しく伝わっていないものですね。正しいことをみんなで分かちあうように、それぞれの立場で皆が努力することで、世の中は少しづつでも良くなるのでしょうか?あ、また話が大きくなってしまい、まとまりがつきません。今回の僕の言いたいことは、まず高血糖スパイクの存在と原因について、もうひとつは、大事なことをであっても、それが必ずしも正しく伝えられているわけではないようだ、ということです。ではまた、ごきげんよう。
カテゴリー: 総合
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。もう10月ですね。この間夏になったと思ったらあっという間に秋になっていました。毎年この季節には、僕たちのクリニックではインフルエンザのワクチンを毎日打っています。午後2時半から3時半までの1時間、昼休みや午後の診療時間を30分削って、ひたすらワクチンを打っているのです。すでに土曜日は12月末までほぼいっぱい、平日も、10月の空きはわずかです。一般の診察時にも、例えば高齢者の患者さんには診察時に注射していますし、合わせると延べ1000本以上は打つと思います。
そう言うと、なんとなく「書き入れ時。」とか「儲かってますね(さすがにこの辺りでは、面と向かってこう言うストレートな物言いをする方はいませんが)」というイメージをもたれがちですが、僕たちからすると、そう言うポジティブなイメージはありません。むしろ「あー、なんか忙しいよね。」とか「毎日疲れるよね、昼休み短いし(休みなしで働いている皆さん、ごめんなさい。ですが、これ以上時間を詰めると僕も年になってきたので、午後の診療に間違いなく響くのです。)」というものなのです。
時には、せっかく僕たちのクリニックを信用していただき、予防接種を受けようとしても、すでにいっぱいでお断りすることがあります。そして毎年外来で繰り返す「先生のところがいっぱいで入らなかったんですよ!」「すいません。」「仕方ないのでよそで打ちました。」「ごめんなさいね、間に合ってなくて。」など。こうしたやり取りはなるべく避けたいので、僕としてはできるだけ頑張っているつもりですが、それでも希望される方全員に打てないのが現実です。すいません、皆さんの希望に添えなくて、この場を借りて、お詫びいたします。
ただし、かかりつけの患者さんにできるだけ不便をおかけしないように、例えば僕のクリニックでは、インフルエンザのワクチンのみ打ちに来る、いわゆる「一見さん」はお断りしてます。いつも来てくれる人にしか注射しません。また、流行っていない病院が客寄せのために、「デフレ価格」でやっているところを除けば、価格は抑えているつもりです(とはいえ、ヤマダ電機のように、きっちり周辺調査をしているわけではありませんが)。
インフルエンザの予防手段として、WHOも一番に推奨するワクチン。でも、医療機関にとっては医学的な要素以外で、悩み多き代物です。なお、当院では今月6日から、12月29日、年末まで行います。ご希望の方は、お電話あるいは直接窓口にてご予約を受け付けていますので、お早めにご連絡ください。ではまた。
明日が皆さんと僕にとって良い日でありますように。