おはようございます。いまだにインフルエンザが出ていますね。2週間くらい前は春日、今は二の宮地区で発生しています。今シーズンかからなかった方、まだ狙われていますので、高熱、だるさ、関節や筋肉があちこち痛む、あるいは吐き気、胃の痛み(B型は時に胃腸炎症状を引き起こします)などあれば、ひょっとしてインフルかもしれませんので、ご注意を。
ところで、細菌やウイルスなどの病原体に感染すると(固い表現ですいません)、熱が出たりします。これをどうするか?下げたほうが良いの?我慢したほうが良いの?ちょっと悩みませんか?「熱は体が菌やウイルスと闘いやすくするために出ているのだから、下げると治りが悪い。」とか、「熱が高いと脳みそに悪い影響がある、心配。」とか考えたり、聞いたことはありませんか?よく考えてくださいね?どちらもうそです!だいたい、40度かそこらで菌やウイルスが弱るなら煮沸消毒は不要です。風呂に入って温めたらどうでしょうか?(笑)この考えは、発熱のメカニズム、要するに、熱が出る仕組みが分からなかった30年位前の、昔の医学の考え方から来ています。いわゆる病原体に感染すると、白血球の一部から(単球、マクロファージと呼ばれる成分です)からサイトカインと呼ばれる物質が放出され、それが脳にある視床下部という体温を調節する中枢に働き、体温が高くセットされ(エアコンの設定を変えるようなものです)そして熱が出るのです。では、これに意味があるかというと、体に良い反応だという証拠はなく、「ただ熱が出る」だけなのです。
現在でも、基礎医学のテキストには、発熱は感染に対して、いくつかの有益な反応をする、と言ったことが書いてあることも(例;ブラック微生物学 第2版)。しかし、臨床医学(実際の医療現場では)ではそうした証拠はなく、例えば、「解熱薬の使用が感染症の回復を遅らせるという証拠はなく、感染からの回復や、免疫システムに補助的に作用するという証拠も存在しない、よって、発熱やそれに伴う症状を治療することは、感染症の治療を遅らせたり、妨げたりしない。」(以上、ハリソン内科学 第3版)
と言うように、世界で最も信用されている内科書でこのように言い切っています。ですから、僕は熱が出たり体が痛くなったりしたら、迷わず解熱剤を飲みます。ただし、子供の場合はその種類に注意が必要です。13歳まではアセトアミノフェンか、せいぜいブルフェンが使えるくらいです。また、熱が出たからと言って、1日3回解熱剤を飲むのも間違いです。大した症状がなければ飲む必要ありませんし、まして、一時的に体温が39度になったくらいで脳が溶けたり、ダメになったりは、感染症の場合はありません。脳炎や、髄膜炎など、脳細胞がウイルスや細菌によって直接破壊されたり、あるいは新型インフルエンザなどによるサイトカインストーム(免疫過剰状態の一種です)で脳細胞が壊されると、発熱と脳の障害が同時に起こることがあります。しかし、それは熱によるものではありませんので、誤解しないで下さい。
今回のお話は、少しなじみのない言葉が出てきて読みにくかったでしょうか?病気の正しい理解には、きちんと詳しくお話ししようとすると、時にかなり難しい内容で、医学、生物学の基礎知識が必要なことがあります(あえて言わせていただけば、医学部に入ってからの勉強は、入試より大変です)。ですから短時間で説明することが困難な話題、内容も医学にはたくさんあります。そのあたりはご了解ください。ではまた。