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May 2016 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: satohcli10-9
おはようございます。いまだにインフルエンザが出ていますね。2週間くらい前は春日、今は二の宮地区で発生しています。今シーズンかからなかった方、まだ狙われていますので、高熱、だるさ、関節や筋肉があちこち痛む、あるいは吐き気、胃の痛み(B型は時に胃腸炎症状を引き起こします)などあれば、ひょっとしてインフルかもしれませんので、ご注意を。
ところで、細菌やウイルスなどの病原体に感染すると(固い表現ですいません)、熱が出たりします。これをどうするか?下げたほうが良いの?我慢したほうが良いの?ちょっと悩みませんか?「熱は体が菌やウイルスと闘いやすくするために出ているのだから、下げると治りが悪い。」とか、「熱が高いと脳みそに悪い影響がある、心配。」とか考えたり、聞いたことはありませんか?よく考えてくださいね?どちらもうそです!だいたい、40度かそこらで菌やウイルスが弱るなら煮沸消毒は不要です。風呂に入って温めたらどうでしょうか?(笑)この考えは、発熱のメカニズム、要するに、熱が出る仕組みが分からなかった30年位前の、昔の医学の考え方から来ています。いわゆる病原体に感染すると、白血球の一部から(単球、マクロファージと呼ばれる成分です)からサイトカインと呼ばれる物質が放出され、それが脳にある視床下部という体温を調節する中枢に働き、体温が高くセットされ(エアコンの設定を変えるようなものです)そして熱が出るのです。では、これに意味があるかというと、体に良い反応だという証拠はなく、「ただ熱が出る」だけなのです。
現在でも、基礎医学のテキストには、発熱は感染に対して、いくつかの有益な反応をする、と言ったことが書いてあることも(例;ブラック微生物学 第2版)。しかし、臨床医学(実際の医療現場では)ではそうした証拠はなく、例えば、「解熱薬の使用が感染症の回復を遅らせるという証拠はなく、感染からの回復や、免疫システムに補助的に作用するという証拠も存在しない、よって、発熱やそれに伴う症状を治療することは、感染症の治療を遅らせたり、妨げたりしない。」(以上、ハリソン内科学 第3版)
と言うように、世界で最も信用されている内科書でこのように言い切っています。ですから、僕は熱が出たり体が痛くなったりしたら、迷わず解熱剤を飲みます。ただし、子供の場合はその種類に注意が必要です。13歳まではアセトアミノフェンか、せいぜいブルフェンが使えるくらいです。また、熱が出たからと言って、1日3回解熱剤を飲むのも間違いです。大した症状がなければ飲む必要ありませんし、まして、一時的に体温が39度になったくらいで脳が溶けたり、ダメになったりは、感染症の場合はありません。脳炎や、髄膜炎など、脳細胞がウイルスや細菌によって直接破壊されたり、あるいは新型インフルエンザなどによるサイトカインストーム(免疫過剰状態の一種です)で脳細胞が壊されると、発熱と脳の障害が同時に起こることがあります。しかし、それは熱によるものではありませんので、誤解しないで下さい。
今回のお話は、少しなじみのない言葉が出てきて読みにくかったでしょうか?病気の正しい理解には、きちんと詳しくお話ししようとすると、時にかなり難しい内容で、医学、生物学の基礎知識が必要なことがあります(あえて言わせていただけば、医学部に入ってからの勉強は、入試より大変です)。ですから短時間で説明することが困難な話題、内容も医学にはたくさんあります。そのあたりはご了解ください。ではまた。
5月のさわやかな日差しの中、外に出ると、なんというわけではないけれども気持ちが明るく、いつもと変わらない景色の中を歩く、そんなことでさえ、足元が心なしか軽くなっているような気がするこの季節。しかし、そんな時でもある種の花粉は人々を襲ってきます。それは、ハルガヤ、カモガヤ、芝生など、イネ科雑草とも呼ばれる草草の一団。5月の初め、ようやくヒノキ花粉が終わったころから7月中旬の梅雨明けまで、外に出るとくしゃみ、鼻水、目の痒みが出現します。名前を言われてもどんな植物なのか、ほとんどの人は判らないでしょう。写真を見せて、「こんなのどこにでも生えているでしょう?」というと、「ああ、確かに。」とか「こんな草で花粉症になるんですか?」とか、みなさん言います。なるんですよ、いわゆる、どこにでも生えている雑草で!
これらは大部分が、明治時代にヨーロッパなどから牧草として持ち込まれた、いわゆる帰化植物です。だからどうという訳では有りませんが、これらが日本中に広がり、毎年人々が大量に花粉にさらされているうちに、アレルギー反応を起こすようになってしまった、ということです。ちなみに、日本のスギは日本固有種で、海外にはありません。ですから、海外から来たからといって、それが特別悪いわけではありません。なお、これらイネ科雑草のアレルギーは意外に早くから発病し、患者さんの過半数は、子供のころから発症します。また、外でスポーツをする子供は特に多い印象があります。現に、サッカー、野球、テニスなどのクラブチームや部活で活動する子供や中高生が、今の季節にはたくさん外来に来ます。たくさん走るスポーツですから、練習や競技中は絶対にマスクはできません。花粉症眼鏡も、サッカーやラグビーの競技ではかけられず、従って、抗アレルギー薬を飲み、まめに目薬をつけるしかありません。
我慢は禁物。鼻が出て、目が痒ければ試合にも練習にも集中できませんし、走るのも苦しいし、ボールの見え方も悪くなります。「なんだか目をこすって。」とか、「外にでると鼻出てるんだよね。」などがあれば、一度受診をお勧めします。一般的に、アレルギー性鼻炎が自然治癒する可能性は1~5%以下と思われますので、何か画期的な治療法が現れるまでは毎年同じように発症し、同じように治療する、といったことになります、やれやれ。
それとは全く関係ないことですが、僕は昨日(13日朝にこれを打ってます)55歳になってしまいました。生きているのは嬉しいですが、年を取ること自体はうれしいとは思いません。ですが、個人的には若いころに戻りたいとか、もう一度生まれ変わって、とは思いません。だって、若いころはあとで考えると愚かしくて恥ずかしいことをいっぱいしていたり、世の中で軽く見られたり、いろんな意味で余裕がなかったでしょう?今風に言えば、「黒歴史」がいっぱいで、思い出したくないことも多いのです。まあ、今となっては懐かしいことですが。
皆さんはいかがですか?若いときに戻りたいですか?ではまた、お会いしましょう。