カテゴリー: コラム2009年
投稿者: kishimoto2
生きていくのに必要な情報量の8割は目から取り入れていると言われていますが、もっとも避けなければいけない状態は、失明、見えなくなることです。

日本の身体障害者申請(視覚障害)を元にした調査によれば、2001年~2004年調査では

1位 緑内障
2位 糖尿病網膜症
3位 網膜色素変性症
4位 加齢黄斑変性
5位 強度近視
6位 白内障
       となっています。

これは1989年(約 20年前)の調査では

1位 糖尿病網膜症
2位 白内障
3位 緑内障
4位 網膜色素変性症
5位 強度近視
6位 加齢黄斑変性      でした。

緑内障に関しては、診断技術の向上により、以前は原因不明に分類されていた潜在的な緑内障も診断できるようになったことが、数の増加に影響していると考えられます。注目すべきは、 1989 年に6位であった加齢黄斑変性が4位になっていることです。もともと加齢黄斑変性は、欧米では失明原因のトップであり、近年の食生活の欧米化、紫外線の増加により、日本でのさらなる増大が懸念されています。病因としては、酸化ストレスに関連があるのではといわれているため、抗酸化ビタミンやルテインの摂取、紫外線からの防護および禁煙は 勧められる予防法と考えられます。網膜の中心である黄斑部は、酸素需要が大きく、活性酸素の産生をひきおこす多量の光にさらされているなど、酸化ストレスの影響を受けやすいためです。一方、白内障に関しては、眼内レンズが広く普及したため、失明にいたる症例は、日本ではほとんど存在しなくなり、現在では手術をすれば治る病気となっています。
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投稿者: kishimoto2
先日、6ヶ月の赤ちゃんの結膜炎で、目薬を処方したのですが、お母さんから 「さそうとす ると、目をつむり、泣いて嫌がります。うまくさせる方法はないでしょうか?」 という質問をされてしまし いました。
そこで、今回は、赤ちゃん(もちろん幼児も含めて)の目薬の上手なさし方のコツをお話したいと思います。

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目薬の上手なさし方

まず寝かせた赤ちゃんの頭の方に座ります。赤ちゃんの頭が動かないよう、ママ(パパ)の太ももの間にはさみ、目 頭のあたりに目薬を1,2滴、落とします。赤ちゃんが、目をつむっていたとしても、まばたきすると、自然に目の 中に入っていきます。目薬の容器が、せまってくると怖がってしまう赤ちゃんが多いので、そっと横からさしてあげ ましょう。

目やにが多いときは?

目やにが多いときは、市販の清潔なガーゼを、ぬるめのお湯でしぼって、目頭から目じりにかけて、そっと押さえる ようにして拭き取ってあげてください。そうしてマブタのあたりをきれいにしてから、目薬をさしてあげましょう。
ガーゼは、その都度、捨てて、ママ(パパ)は必ず、感染防止のため自分の手洗いもお忘れなく!

赤ちゃんが泣いてしまったときは?

赤ちゃんが泣いているときは、目薬をさしても涙で流されてしまいますので、泣きやむのを待ってからにしましょう 。赤ちゃんが疲れて寝てしまってから、そっと目頭のあたりに、目薬をさしてもらっても構いません。

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投稿者: kishimoto2
チック症とは

チック症とは、ピクピクっとした素早い動きなどが、本人の意志とは関係なく
繰り返しおきてしまうものをいいます。肩をピクっと動かす、顔をしかめる、口を曲げるなどいろいろありますが 、一番、多いのは瞬きです。本人は、わざとやっているわけではなく、止めようと思っても止まりません。


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なりやすいのは

幼児から小学校低学年ぐらいまでの子に多くみられます。
本人の性格が、感じやすい、傷つきやすい、優しい子に多いと言われています。
不安、ストレス、緊張、心の葛藤などがきっかけでおきることが多いですが、そのようなことがなくてもおきる子 もいるようです。


対処法は

できるだけリラックスさせてあげることが必要です。
注意したり、しかったりすると余計に症状が強くでる場合があります。
言わなくても、態度にでたりすると、本人はますます気にして、緊張感が高くなります。そのようなことがないよ う、精神的にゆったりとしていられるような環境づくりが大切です。精神的なストレスや緊張感から、一時的にこの ような症状のでる子は、決して少なくはありませんが、そのほとんどが、短期間に、症状は消えていきます。チック 症は大きな問題ではないと、軽く考えてください。


注意・・・症状がきつかったり、長引いたり、本人が気にしているようなら、まれにお薬を使う場合もあり ます。

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投稿者: kishimoto2
目薬は、目からあふれるほど大量にさした方がよいと思っていないでしょうか?いかにも効きそうなかんじですが、あまりよくありません。目薬も他のお薬と同様、正しく使わないと十分な効果が出ない場合があります。以下の正しい目薬のさし方を覚えておきましょう!!

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①一回の目薬は、一滴で!

2滴以上さしても、目の外にあふれてくるだけです。あふれた目薬の成分で、目の周りがただれてマブタの皮膚炎をおこすことがあります。それに、すぐになくなってしまうので経済的にもよくありません。

②目薬をした後は、まばたきを多くせず、静かに目を閉じてそのままに!

目薬をしたあと、まばたきをやりすぎると、すべて目頭にある涙点という涙の出口から目薬が鼻の方にぬけてしまいます。1~2回、まばたきをすると目の中にいきわたりますので、その後は、1分程度、静かに目を閉じて、目薬が吸収されるのを待ちましょう。

③2種類以上の目薬をするときは、5分以上あけましょう!

目薬を続けてさすと、目薬があふれたり、まざったりして、充分な効果が得られません。できれば5分以上、時間の無いときや多種類の目薬をさす場合でも、最低2~3分はあけるようにしましょう。

ただし、例外としてドライアイ用の目薬など、間隔をあけなくてもよい場合もあります。

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投稿者: kishimoto2
はやり目とは、アデノウイルスの感染によっておこる結膜炎です。
強い充血、まぶたの裏側にぶつぶつが出来て、目やにや涙が増えます。
症状がきつくなると、耳前リンパ節が腫れ、発熱が起こることもあります。
感染力が非常に強いので、周りの人に移さないように注意する必要があります。

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今回は、あまり知られていない、 重症化した場合のはやり目の後遺症と、治療用の点眼薬による合併症のことをお話ししたいと思います。

発症してから、落ち着いてくるまで約2週間くらいかかります。
充血や目やにが減り、また痛みやゴロゴロ感などの症状がなくなってくると、「治ったし、もう病院に行かなくていいか・・・」と自己判断して目薬を中止して診察にも来られなくなる患者さまがおられます。私たち眼科医からすると非常に危険です。

目薬を急に止めてしまうと、角膜混濁という結膜炎の後遺症が強く残ってしまう場合があります。結膜炎の症状が治まってきた頃に、黒目(角膜)の表面に小さな点状の円い混濁が多数出てくることがあり、ほっておくと、かすみがとれず、視力が低下してしまうことがあります。結膜炎の症状が無くなっても、しばらく目薬を続けることで後遺症を出なくすることができます。必ず、医師の指示に従って、「もう大丈夫ですよ!」言われるまで目薬を続けるようにしてください。

また、治療でステロイドの目薬を処方されることが多いのですが、副作用で眼圧が上がる、いわゆるステロイド緑内障になってしまうことがあります。自己判断で目薬を中止するのと同様、逆に、だらだらと目薬を続けることもよくありません。ステロイド緑内障になると、知らないうちに眼圧が上がって、長期間、眼圧が高いまま放置していると視神経が障害され失明してしまうこともあります。必ず医師の指示に従って、正しい治療を受けるようにしてください。

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角膜上の丸い点状混濁

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投稿者: kishimoto2
加齢性黄斑変性症の見え方と、簡単なチェック法です。

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加齢性黄斑変性症とは、50歳を過ぎた頃から増え始め、60~70代がもっとも多い目の奥の病気です。目の奥の網膜の中心部にある「黄斑部」が、老化によって機能が低下します。ただ、白内障のようにすべての人に発症するわけではなく、特定の人にしか発症しません。男性の発症率が高く、女性の2倍程度と言われています。我が国では推定40万人、視覚障害認定者の第4位となっています。
症状は  視力が下がる
       視野の中心がゆがんで見える
       周囲は普通に見えるが、見ようとするところが見えない 

具体的にどのような見え方かと言うと、例えば新聞を見るとこんな感じになります。
 


今回は、黄斑変性症の簡単なチェック法がありますので、ぜひ、一度やってみてください。

読書をする距離で、片方ずつ目を閉じて、中心の白い点を見て、線のどこかに
ゆがみがないかみてください。老眼鏡を掛けてもらっても構いません。
中心の白い点だけを見て、視線を動かさないようにしてください。


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もし、① 線が歪んで見える
    ② 線がぼやけて見える
    ③ 線の一部が欠けて見える

このような症状が一つでもあれば、早いめの眼科受診をお勧めいたします!
加齢性黄斑変性症は、早期発見、早期治療が有効です。
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投稿者: kishimoto2
突然、視野にギザギザの光、そして視野の一部が真っ暗に・・・こんな経験はないでしょうか?

これは、ほとんどは片頭痛の前兆現象としてみられる閃輝性暗点(せんきせいあんてん)という現象です。
典型的な症状は、こんな感じです。
突然、両目の視野の一部にギザギザの光が見え、片目ずつでも同じように見えます。そして視野の一部が真っ暗になり、場合によっては極端に視野が狭くなることもあります。そして、このような症状は 15 分ほどで消え、この後、ズキズキするような拍動性の頭痛が
3~4時間続きます。閃輝性暗点のみで頭痛を伴わない場合もあります。
最初のギザギザの光と視野異常のみなら閃輝性暗点症、頭痛を伴った場合なら前兆現象のある片頭痛ということになります。

※片頭痛患者さんの 15 ~ 20 % に前兆現象が見られます。

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原因は

まだはっきりとは分かっていませんが、何らかの誘因で脳内のセロトニンの量が増加すると、脳内の血管が収縮して脳の視覚野の血流量が減ると閃輝性暗点の症状が出ます。その後、セロトニンが代謝されて急激に減少すると脳の血管が拡張し、周りの神経を刺激して片頭痛を引き起こすと考えられています。
ただ、なぜ頭部の血管のみがセロトニンに反応するのかなどの疑問が残っています。

対処法

○安静にする

○片頭痛の引き金になりやすい食べ物をさける
(チョコレート、ピーナッツ、紅茶、チーズ、ワインなど)

○ 症状がきついようなら内服治療

閃輝性暗点症ですが、まれに脳腫瘍、脳内出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などによっても引き起こされる場合があります。また網膜剥離や網膜裂孔でも光のようなものを感じることがあります。症状を自覚された場合は、まず眼科を受診して目の奥(眼底)に何も異常のないことを確認していただき、その後、神経内科や脳神経外科を受診してCTやMRIで精密検査を受けていただくことをお勧めします。特に短期間に繰り返して起こる場合は要注意です。
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投稿者: kishimoto2
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ドライアイを治すには

① 水分を補充する。
② 涙を目の表面に長く保持させる。
1)蒸発を防ぐ。
2)表面を親水性にする。


目の表面を覆っている涙の層は、三層に分かれています。
一番外側が油層、間に位置する涙液層、そして内側にあるムチン層です。
主な働きは以下の通りです。

油層         涙の蒸発を防ぎます。
涙液層        涙で満たされている最も厚い層です。
粘液層(ムチン層)  涙を目の表面に保持します。


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ドライアイの治療は、いかにこの三つの層を維持できるかにかかっています。

まず、水分の補充ですが基本は防腐剤無添加の人工涙液(ソフトサンティア点眼液など)とヒアルロン酸の点眼液(ヒアレイン点眼液やティアバランス点眼液など)です。

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○ ヒアルロン酸点眼液の使い方のコツ

ヒアルロン酸点眼液をまず先に行い、約1分後、ソフトサンティア点眼液を点眼します。そうすることによりヒアルロン酸の保水性を十分に生かすことができ、また防腐剤を希釈することができます。




注意 ①  防腐剤を含むヒアルロン酸点眼は一日6回を限度としてください。

注意 ②  ドライアイが重症になると糸状角膜炎という状態になることがありまが、ヒアルロン酸点眼は上皮のターンオーバーを低下させムチンの蓄積が増加しますので、ヒアルロン酸点眼液は使わないようにしてください。

そして蒸発を防ぐには油層を充実させないといけません。
油層の治療には、眼軟膏の塗布が効果があります。

最後の目の表面を、親水性にするための目薬ですが、現在、まだ市販されていませんが開発中となっています。


① DE-089 (P2Y2 受容体作動薬)
角膜や結膜の上皮からムチンの分泌、水分の分泌を促進します。 
現在、治験は終了しましたので、近いうちに処方できるようになるかもしれません。

② OPC-12759 点眼液、エカベトナトリウム点眼液
粘膜保護剤 
現在、胃薬として使用されているお薬(胃粘膜保護剤)をドライアイ治療用の点眼薬として応用、開発中となっています。

従来のドライアイ治療薬は「水分補充型」が主流ですが、現在、様々な点眼薬が治験、開発中です。今後のドライアイ治療薬の広がりが期待できそうです。
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投稿者: kishimoto2
去年よりかなり早く花粉が飛んでいるようですが、花粉症対策はおすみでしょうか?花粉対策の基本は、花粉情報を有効に活用して日常生活のセルフケアを行うことです。

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花粉情報は以下のサイトで見ることができます。

http://kafun.taiki.go.jp/index.aspx


花粉が多く飛散する日は、できるだけ外出を控え、どうしても外出しなければいけない時は、マスクや保護用の眼鏡を着用し、しっかり防御して出かけましょう。その他の日常生活のセルフケアを少しまとめてみます。

○花粉がつきやすいウールなどの衣服をさける。
○外出して帰宅後は、うがい、手洗い、洗顔を行う。
○窓から花粉が入らないように、開けっ放しにしない。
○こまめに掃除する。
○できれば室内は空気清浄器をつける。
○室内の湿度を高めにする。(室内が乾燥していると花粉が舞いやすくなります。)
○洗濯物を外に干さない。



次に、目の痒み対策です。

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○冷たいおしぼりで目をマブタの上から冷やす。

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これは、炎症を鎮めることで痒みをおさえる効果があります。

○防腐剤の入っていない人工涙液(ソフトサンティア点眼液など)で、花粉を洗い流す。

○ぜったいに目を擦らない。

これは、言うのは簡単ですが意外と一番難しいのではないでしょうか?

目を擦ると、細胞からヒスタミンなどが炎症物質が出てきますので、痒みが余計にひどくなったり、マブタが腫れたり、充血がきつくなったりします。また擦りすぎで黒目(角膜)に傷ができたり、雑菌が目の中に入って本当の感染性結膜炎になったりすることがあります。

○水道水での洗眼 を避ける。(塩素による刺激を避けるため)

○市販の洗浄用カップでの洗眼は避ける。
(マツゲや目の周りに付着した花粉が目の中に入る可能性があり、多くは 高濃度の防腐剤のため黒目の表面を荒らすこともあるため)

痒みがきつい場合は、眼科専門医を受診し、適切な医療用の目薬を点眼してください。目の痒みに関しては、内服薬よりも目薬の方がよく効きます。痒みがおさまったからといって、すぐに目薬を中断したりせず、根気よく治療を続けることが大切です。

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