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23 June 2025 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

サイコシンセシスについて、少しずつ書いていき、とりあえず、書きたかったことを書けたように感じています。今まで書いたことを、まとめてみようと思います。

サイコシンセシスでは、人の意識領域の周りにある無意識をの領域を、大きく3つに分けています。下位無意識、中位無意識、上位無意識の3つです。

下位無意識は、自分のこれまでの人生での経験で感じたこと、考えたこと、思ったこと、いろんな記憶やエネルギーが抑圧されています。願望、欲望、行動力といった、とても強い、人としての根本的な生命エネルギーが溢れているエリアでもあります。

中位無意識は意識を中心として、今現在の意識に近いエリアで、何かきっかけがあればすぐ思い出せるような意識、現在の活動に直接関わっているエリアです。

上位無意識は、自分と他人を繋ぐような、集合無意識であったり、自分の人生の目的、自分の存在意義、自分が何に向かうべきかといった、人間を成長に導くエネルギーのエリアです。

従来のカウンセリングは、下位無意識と言われている、その人のトラウマの問題であったり、インナーチャイルドの問題であったり、その人の抱えている歪んだ信念だったりを、ケアしていくのが大きな目的であったと思います。サイコシンセシスも、下位無意識への対処はとても重要視しています。

しかし、実際、下位無意識へのアクセスはとても負担が大きいものです。そもそも、辛い体験であるからこそ、蓋をして、意識の奥深くに閉じ込めて、自分の意識に登ってこないように、無意識に抑圧しているエリアです。その蓋を開ける作業が簡単なはずもないし、楽しいはずもありません。

サイコシンセシスでは、その大変な作業を行うのに、上位無意識の力を借りることがあります。この視点が、他の心理療法にない視点かな、と思います。
上位無意識のエリアには、自分が望ましいと思う特性を強化するヒントがたくさんあります。そのエネルギーを拝借しながら、下位無意識のアクセスを進めていくイメージです。

何が必要かは、その人によって違います。純粋にエネルギーを必要とする人もいますし、リラックスできること、自分にパワーがあると信じること、愛情、忍耐力、意志の力、清明さ、いろんな要素を必要とすることがあります。今、たちまち健康であまり困っていない人でも、「もう少し自分を律せるといいなあ」とか「もう少し体力があるといいいなあ」とか「もう少し自己主張できるといいなあ」とか、そんなふうに思うこともありますよね。そういう時にも、上位無意識の力を借りて、イメージによって得たいものを取り入れるようにしていくことが可能です。

サイコシンセシスでは、下位無意識や中位無意識の理解のための方法の一つとして、サブパーソナリティワークというのをします。私たちはいろんな仮面をかぶって生活しています。それは、例えばオーケストラみたいなイメージでしょうか。たくさんの演奏家がいて、一つの曲を演奏しています。演奏家の一人一人がサブパーソナリティで、その指揮をしている人が、「セルフ」と呼ばれる、自己の中心的存在、ということになります。たくさんのサブパーソナリティがいても、「セルフ」が指揮をとってうまく調和が取れていると、特に大きな問題にはなりません。

ところが、サブパーソナリティが、「セルフ」が意図していないところで急に動き出すと、少し困る場合が出てくると思います。

実際、「なんであのとき、あんな風にしちゃったのかな」と思うことや、「いつもこのことがうまくいかないな」と感じているときには、想定していないサブパーソナリティが出てきてしまっていることがあると思います。適応的なサブパーソナリティも含めて、自分にどんなサブパーソナリティがあるか、少し考えてみましょう。

何か強い負の感情を感じているときは、サブパーソナリティが出てきていることが多いです。怒っているときや、悲しんでいるとき、落ち込んでいるとき、不安になっているとき。そして、その感情を何とかしようとして、何か行動を起こします。それがうまくいくといいのですが、あまりうまくいかないことも多く、かえって事態を悪化させてしまうこともあるのです。

サブパーソナリティは、だいたいが、子どもの頃の経験から形成されています。子どもの頃、辛かった体験をなんとかやり過ごそうとして、子どもなりになんとか振る舞い、そのときに学習したパターンがサブパーソナリティとなって、私たちの中に残ります。子どもの頃は、それでなんとか、そのしんどい状況を切り抜けていたのですが、大人になった今は、それは不必要だったり不適切だったりすることがあるんですね。でも、自分の中の子どもは、一生懸命そのパターンを繰り返して、頑張って自分を守ろうとしています。

なので、何かうまくいかないときに、「なんで自分ってこんなにダメなのかな」とか「自分って最悪だ」といった形で自分を責めるのではなく、「子ども時代の私が必死で頑張ってるんだ」「何が困って子ども時代の私がSOSを出してるんだろう?」と自分に問いかけてみるのが良さそうです。

サブパーソナリティと対話する方法はいくつかあります。サイコシンセシスで一番有名なのは「エンプティチェア」の技法だと思います。イメージの中で、椅子に座っている自分をイメージします。そして、向かいに椅子を用意し、そこに、自分のサブパーソナリティが座っていることをイメージします。そこで、二人で会話をします。そうして、そのパーソナリティに対する理解を深めるというやり方です。

このやり方は、少し心に負荷をかける方法で、トラウマの大きい方は気持ちのつらさが出てくる可能性があります。気持ちのつらさの強い人は、カウンセラーと一緒に取り組む方が良いかなと思います。

それより安全で取り組みやすい方法として、絵を描くというやり方があります。白い紙に大きな丸を書きます。そして、それを8等分する線を書きます。ピザとかケーキとかを切るような線ですね。そしたら、8個のおうぎ形が出来ます。そのそれぞれに、自分のサブパーソナリティをイメージする絵を描きます。それは、直感的なものでいいのです。綺麗に書こうとか思わなくて大丈夫です。ただ、自分のサブパーソナリティを象徴するような色、形、エネルギー、イメージをそこに書きます。書いてみて自分が何を感じたかを感じ取って下さい。

大切なのは、サブパーソナリティの存在に気づくことであって、サブパーソナリティを変えようとしたり消そうとしたりすることではありません。ダメな自分にダメ出しをするのではなく、「そばにいるよ」「大丈夫だよ」と自分の子ども時代の苦労をねぎらい、「どうするのがいいのか一緒に考えよう」というスタンスで、サブパーソナリティ達と対話していくようにできるといいのかなと思います。

同一化と脱同一化について。これもサイコシンセシスの主要な技法の一つです。サブパーソナリティとの対話の場合にも使える技法になります。

まず、同一化について。自分のサブパーソナリティや自分の一部に、しっかりと入り込む感じです。サブパーソナリティの感覚、感情、思考、意欲、そのようなものとしっかりと一体化します。そのサブパーソナリティの中で呼吸をして、その存在をしっかりと感じ取ります。同一化することで、何か気づくことがあるか、感じることがあるかを受け止めていきます。

それと、脱同一化ですが、これは、自分のサブパーソナリティから離れることです。ちょっと客観的になって、「あ、今、私のサブパーソナリティが出てきて何か訴えているぞ」と気づくことです。このような気づきを持てているときは、そのサブパーソナリティと距離を置けていて、脱同一化できていることになります。自分の精神機能のさまざまな部分にも、この脱同一化をすることが出来ます。

すごく悲しくなったり、不安になったりしているときも、「自分自身が悲しみなのではなく、今私は悲しみを持っている、悲しみという感情を持っている」と認識することで、悲しみと自分自身を分けることが可能になります。悲しみに同一化し、しっかりとその感情を感じて受け止めていく作業と、悲しみから脱同一化し、感情は自分の一部であって自分自身ではない、という認識を持つことは、どちらも大事です。同一化と脱同一化を、自分の意志で行えるようになったとき、私たちは自分のサブパーソナリティや自分の思考、感情、意欲などともっと上手に付き合えるようになっていきます。

サブパーソナリティや、自分の精神機能(思考、感情、意欲、イメージなど)をとりまとめている、指揮者の部分を、サイコシンセシスでは「セルフ」と呼びます。本来の自分、本当の自分ですね。自分が「セルフ」の状態でいられるとき、心は落ち着いていて、均衡の取れた状態になります。「セルフ」であるためには「意志」をもつことが重要になります。

「セルフ」の行うことは「選択」です。例えば、前回の「同一化」と「脱同一化」ですが、何かと同一化することも、そして脱同一化することも、「セルフ」が「選択」することができます。ただ、この「セルフ」に気づいていない状態では、サブパーソナリティに無意識に同一化しているため、「自分らしさ」から離れてしまい、苦痛やストレスを抱えるようになります。そのことに気づき、「選択」できる状態になると、「本来の自分らしさ」が戻り、生きる喜びや充足感が得られやすくなります。

なので、サブパーソナリティや自分のパーツに気づくことはとても大事です。気づいて、しっかり同一化して、そして脱同一化する。そのことを繰り返していくうちに、自分で、今の自分がどの「モード」でいるのか、どの「モード」でいたいのかをコントロールできるようになっていきます。

「セルフ」は「選択」をしていくというのが大事な役割になっていくのですが、この「選択」をするために重要なのが「意志」の力です。

サイコシンセシスでは、「意志」にはいくつかの側面があると説かれています。
代表的なものに「強い意志」「たくみな意志」「善い意志」が挙げられます。

「強い意志」というのが、通常私たちが「意志」という言葉に抱くイメージだと思います。「あの人は意志が強い」とかいった表現をしたりもしますよね。エネルギーや力強さの象徴でもあります。でも一方で、熟達することやコントロールすること、鍛錬することも意志の大事な側面で、「うまくやる」ことで、「より楽しく」欲求を満たすことにも、「意志」が役に立つのです。それが「たくみな意志」ということになります。集中力、決断力、持久力、自発性といった特性も、意志に関連しています。そうやってみると、「意志」という精神活動にいろんな特性があることが見えてきます。

サイコシンセシスでは、それぞれの意志を鍛えるための演習も紹介されています。
「強い意志」を強化するための演習としては、以下のようなことが推奨されています。
・毎日、ほんの少し、無駄なことをする。
・単純で、やさしい、小さなことを、正確に、規則的に、持続的にいくつも行う
・数日したら、課題を変えて同じように取り組む
・定期的な身体運動を行う

「たくみな意志」を鍛えるための演習は、エネルギーを最も節約できるような戦略を開発することになり、「強い意志」の演習とは少し異なります。でも、「強い意志」で力押しに何かを勧めるのではなく、「うまくエネルギーを使う」という考え方は、私はとても好きです。
「たくみな意志」を鍛えるのには、イメージをよく活用します。
・置換の技法:何かにとらわれてしまったときに、他のイメージを選び、注意をそちらに向ける練習をする
・心理的毒素から注意をそらす:心理的にエネルギーを落としてしまうような、攻撃性・暴力・恐れ・うつ・落胆・貪欲の感情や意欲が出てきたときに、他のイメージを思い浮かべることで、注意をそらす練習をする
・望ましいイメージを喚起する:自分の望んだ状態が達成されているところをイメージし、そのように振る舞ってみる

ただ、どのような意志も、その目的が「善いもの」でなければ、自分自身と周囲、自然と調和することが難しくなっていきます。自分が成し遂げようとしていることが、他の人々の幸福と矛盾しないような目標を選ぶことが大事になってきます。それが「善い意志」と呼ばれる部分になります。常に、自分と周り、環境との調和にも目を向けるようになっていくと、自己実現をしていく中で、充足感を感じていけるようになると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

前回、「セルフ」は「選択」をしていくというのが大事な役割になり、その「選択」をするために重要なのが「意志」の力である、ということに触れました。

サイコシンセシスでは、「意志」にはいくつかの側面があると説かれています。
代表的なものに「強い意志」「たくみな意志」「善い意志」が挙げられます。

「強い意志」というのが、通常私たちが「意志」という言葉に抱くイメージだと思います。「あの人は意志が強い」とかいった表現をしたりもしますよね。エネルギーや力強さの象徴でもあります。でも一方で、熟達することやコントロールすること、鍛錬することも意志の大事な側面で、「うまくやる」ことで、「より楽しく」欲求を満たすことにも、「意志」が役に立つのです。それが「たくみな意志」ということになります。集中力、決断力、持久力、自発性といった特性も、意志に関連しています。そうやってみると、「意志」という精神活動にいろんな特性があることが見えてきます。

サイコシンセシスでは、それぞれの意志を鍛えるための演習も紹介されています。
「強い意志」を強化するための演習としては、以下のようなことが推奨されています。
・毎日、ほんの少し、無駄なことをする。
・単純で、やさしい、小さなことを、正確に、規則的に、持続的にいくつも行う
・数日したら、課題を変えて同じように取り組む
・定期的な身体運動を行う

「たくみな意志」を鍛えるための演習は、エネルギーを最も節約できるような戦略を開発することになり、「強い意志」の演習とは少し異なります。でも、「強い意志」で力押しに何かを勧めるのではなく、「うまくエネルギーを使う」という考え方は、私はとても好きです。
「たくみな意志」を鍛えるのには、イメージをよく活用します。
・置換の技法:何かにとらわれてしまったときに、他のイメージを選び、注意をそちらに向ける練習をする
・心理的毒素から注意をそらす:心理的にエネルギーを落としてしまうような、攻撃性・暴力・恐れ・うつ・落胆・貪欲の感情や意欲が出てきたときに、他のイメージを思い浮かべることで、注意をそらす練習をする
・望ましいイメージを喚起する:自分の望んだ状態が達成されているところをイメージし、そのように振る舞ってみる

ただ、どのような意志も、その目的が「善いもの」でなければ、自分自身と周囲、自然と調和することが難しくなっていきます。自分が成し遂げようとしていることが、他の人々の幸福と矛盾しないような目標を選ぶことが大事になってきます。それが「善い意志」と呼ばれる部分になります。常に、自分と周り、環境との調和にも目を向けるようになっていくと、自己実現をしていく中で、充足感を感じていけるようになると思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

前回、同一化と脱同一化について書きました。

同一化と脱同一化をしていくと、いろんなことを考え、感じ、動いている自分がいるのですが、でも、思考も感情も感覚も意欲もイメージも本来の自分ではない。それらは持っているだけで、自分自身ではないのです。サブパーソナリティも自分ではない。では自分とは?という問いかけになります。自分とは本質的には何者なのだろう?でも、確実に「自分」は存在します。

サイコシンセシスでは、この「自分」を「セルフ」と呼んだりしますが、「セルフ」の行うことは「選択」です。例えば、前回の「同一化」と「脱同一化」ですが、何かと同一化することも、そして脱同一化することも、「セルフ」が「選択」することができます。ただ、この「セルフ」に気づいていない状態では、サブパーソナリティに無意識に同一化しているため、「自分らしさ」から離れてしまい、苦痛やストレスを抱えるようになります。そのことに気づき、「選択」できる状態になると、「本来の自分らしさ」が戻り、生きる喜びや充足感が得られやすくなります。

なので、サブパーソナリティや自分のパーツに気づくことはとても大事です。気づいて、しっかり同一化して、そして脱同一化する。そのことを繰り返していくうちに、自分で、今の自分がどの「モード」でいるのか、どの「モード」でいたいのかをコントロールできるようになっていきます。

そうやって「セルフ」は「選択」をしていくというのが大事な役割になっていくのですが、この「選択」をするために重要なのが「意志」の力です。サイコシンセシスの創始者のアサジョーリ先生は、この「意志」の力をすごく重視されていて、それだけで本を1冊作られているほどです。

つまり、「意志」を鍛えると良い、ということになるのですが、「意志」を鍛えるのって、大変そうな感じがしませんか。なんだか辛そうな感じというか、滝修行でもするようなイメージがあります。なので恐る恐るこの本を読みました。

結論から言うと、実際、地道な練習も必要だったりするのですが、ただとにかく頑張る的な、「力押し」をするような意志の話だけではなかったんですよね。もちろん、意志の力が強い方がいいのは事実です。でも、力押しでやっていって、すぐに倒れてしまうようでは、大きなことをなしえていくのは不可能です。そこで、「巧みな意志」と言われる、意志の力を上手に活用する方法も提示されておりました。

次回、この「意志」についての話を続けていきます。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

実はこの本は、再読です。
でも、時々来られる摂食障害の患者さんに、もう少し助けになれたらと思いもう一度読むことにしました。

クリニックで診る摂食障害
www.amazon.co.jp
3,740円

読みたいと思った動機
もう一度、クリニックでできることを復習したい。

得たい知識
摂食障害の患者さんが来られて、クリニックで何をしてあげられるか。特に、心理教育についての知識をおさらいしたい。

クリニックに来る患者さんは、摂食障害の人に限らず、どのくらいの治療意欲を持ってこられるか、本当にまちまちです。その相手の治療意欲の程度を見て、どのような対応をするのか調整する必要があります。この本でも、「治療に対する動機づけの段階」として、次の5段階を挙げていました。
1 自分の状態を病気と認識していない段階
2 問題意識は芽生えているが、食行動を変えようとしていない段階
3 自分の状態を変えねばならないと考え努力している段階
4 治療を受けて治したい、または転医してきた段階
5 食行動が改善し、この状態の維持と再発を予防している段階

1の段階では、心理教育で病気について理解してもらった上で、現在の状態を続けることによって得ることと失うことについて考えてもらいます。

2の段階では、1と同じく、現在の状態を続けることによって得ることと失うことを考えてもらうのですが、現在、1年後、5年後について考えてもらいます。そして、得ることよりも、失うことが圧倒的に多いことを理解してもらいます。

3の段階では、病気で得ているものを捨てる覚悟をしてもらう必要が出てきます。病気に立ち向かい、自分を変えようと決意することになります。小さな変化を継続して引き起こしていくことを、応援し支えることになります。

4の段階では、具体的な食生活日誌を書いてもらい、取り組めることを一緒に考えていきます。

5の段階では、家庭、学校、職場でのストレスや問題を見つけ、それを解決するように促していきます。

この段階別の関わりを見ていくと、まず、心理教育にもう少し力を入れた方がいいなと思いました。患者さんに病気について知っていただき、病気がもたらす心身への影響について理解していただくことは、治療動機を高める上で重要だと感じました。

そして、患者さんの治療意欲に応じて、どこにポイントを置いて関わっていくか。最終的には、ストレスや問題に対処していくところまで支援していきたいのですが、それに取り組むためにも体力を回復させる必要があります。

別の講演会でも、摂食障害をもっと精神科医がきちんと対応できるようになっていく必要性があると、演者の先生が熱く語っていました。もう少し自分のスキルを上げていきたいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

症状が改善し、徐々にやめることになった場合、それに伴い通院も終了することがあります。通院の卒業で嬉しいことですよね。でもそのときにも、いくつか気をつけていただきたいことをお話ししているのですが、それについても資料を作ってお渡しした方がいいのかなと感じました。

以前、薬の開始時の説明についての資料を作りました。これは、使ってみたらかなり良い感じで、伝え忘れもないし、あとで患者さんに読んでもらえるし。予診や事前聞き取りをする看護師とも、このような資料を渡すという情報をシェアして、事前に伝えられることは伝えてもらえたり、あとで先生からこういった説明があると思います、といった話をしてもらってます。


開始時は本当に大事ですが、終了時だって大事ですし、同じように共通して話す項目がたくさんあります。

まずは離脱症状について。
・お薬をやめてしばらくの間、離脱症状がでることがあります。
・お薬はゆっくり減らしてから中止すると、離脱症状は出現しにくくなります。
・離脱症状として、不安感、発汗、ふるえ、頭痛などが出ることがあります。
・離脱症状は、長くても2週間ほどで消失します。
・離脱症状が現れても、軽症であればそのまま様子を見て下さい。
・離脱症状が気になる場合は、我慢せず一度診療所に連絡をして下さい。

それから、再発の徴候について。
・病気が一旦よくなっても、何か脳に大きな負荷がかかると再発することはあります。(私はよく骨折に例えます。骨折が治っても、交通事故に遇ったりしたらまた折れてしまうことはありますよね)
・再発の徴候は、睡眠と食欲に現れることが多いです。
・気になる徴候が出たら、我慢せず一度診療所に連絡をして下さい。

皆さん、通院を終了できるのは本当に嬉しいことと思うんですね。でも、それ以上に、生活を快適に送ることが大事です。通院再開を嫌がるあまり、生活に支障が出るのは良くないと思っています。病気は、何でも早期発見早期治療が良いと思っています。早く対処した方が早く良くなります。なので、困ったらとにかくまたすぐ来て欲しい。二度と病院に行かないことが大事ではなくて、時々メンテナンスをしながら、良い状態を維持することが大事ですよね。

そのためにも、良くなったらきちんと通院を終了する。通院し出すとやめられなくなると思われないようにしていきたいです。もちろん、通院していた方が安心する方は、しばらく通院を継続させていただいています。相手のニーズに応じて柔軟に対応することが大事かなと思います。

とにかく、これで資料を作って、薬物治療を終了する方に渡していきたいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

買ってみたものの、分厚い本で躊躇しておりました。しかし、目的を持って読み、知識を吸収していこうと思います。Amazonで見ると2024年1月に購入したとのこと。寝かせすぎですね。頑張って読見ました。

不安へのエクスポージャー療法: 原則と実践
amzn.asia
6,600円


読みたいと思った動機
暴露療法は心理師やPSWに任せっきりの状況なのですが、やはり自分でもちゃんと把握しておきたい。カウンセリングを希望されない方に対して、診察時間で少しでも伝えられることがあれば知りたい。

得たい知識
エクスポージャー療法の基本的な考え方、実践方法。
診察でも使えそうな方法があればそれも知りたい。

これは、いろんな不安に対するエクスポージャーの仕方が載っており、教科書的にそばに置いておきたい内容です。エクスポージャーといえば、強迫性障害に使用するイメージが強いのですが、社交不安症、パニック障害、広場恐怖、トラウマなど広範囲の不安に対応しており、また強迫性障害の中でも扱いにくく感じる「侵入思考」や「しっくりこない感じ」などに対する対応も書かれています。

エクスポージャーは、患者さんが不安だから避けていたり、なんとか不安を感じなくて済むようにとっている対処行動に対して介入する治療です。なので、取り組む難易度は高めだと思います。ただし、そのかわり、効果は高いです。不安障害に対する根本的な治療法と言っても過言ではないと感じます。

ただ、この難易度の高い治療法に取り組むには、工夫が必要です。避けている不安に向き合い、対処行動をやめていくためには、ある程度段階が必要です。でも、治療のための工夫の段階なのか、患者さんが不安と向き合うことを避ける手助けになってしまっているのか、治療者と患者さんが実施しようとしている方法が、どこに向かうことになるのか、それを理解しておくことが大事だと思いました。エクスポージャーの原則、原理をきちんと理解し、目の前の患者さんと話し合っている作戦が、その原則原理に外れていないかをチェックできるようになる必要があると感じます。

この本には、事例もたくさん載っていて、こういう点に気をつければいいのだなということが理解しやすいです。文量が多く読み応えはありますが、読むと自分の臨床スキルの幅が広がるのを感じられると思います。

短時間の診療でも、不安障害の患者さんにとって、どのような行動が望ましく、どのような行動が望ましくないのかを知っておくだけでも、患者さんにできる助言が変わってくると思います。ただ、その不安と向き合うことの大変さも理解し、その大変さをいたわる気持ちも忘れてはいけないと感じました。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

さて、10月の講演会ラッシュに備えて、資料作りをしていますが、一つ目の「メンタルヘルス不調の方の社会復帰について」はそろそろ仕上げになりそうです。


最後に伝えようと思っていることは、社会や家族にできることについてです。
・復職はゴールではなく「再スタート」
・無理のないペースで見守ること
・企業に必要な視点(柔軟な勤務設計、継続的配慮)
このような内容を話そうと思います。

復職は「ゴール」ではなく「再スタート」
・治療や休養を経て職場に戻ることは通過点
・再発予防・安定した就労継続のためには、長期的な支援が必要
・「元に戻る」ではなく「新しい働き方を築く」過程と考える
これは、医療従事者も気をつけなければなりませんが、休養を経て、なんとか復帰できると、そこがゴールのように感じて、周りは「良かった良かった」と安心するところがあるかと思います。でも、本人からするとそこからが踏ん張りどころです。また、「元通り」になることも気をつけなければなりません。「元通り」になるということは、「無理をして再発する」ことにつながる場合があります。メンタルヘルス不調の経験を経て、無理のない新しい働き方を見つけていくことが大切だと思います。

無理のないペースで見守ること
・本人の「できること」と「やりたいこと」にはギャップがあることも
・焦らせず、変化に一喜一憂しすぎず、日々の積み重ねを見守る姿勢が大切
・「励ましすぎず、突き放さず」:適度な距離感と共感的な関わりを
一番焦ってしまうのは本人で、周りがそれを止めるような関わりをしてちょうど良いことが多いです。無理をして途中で倒れてしまうより、確実にやっていけるペースの方がいいんですよね。しばらく休んでいたので、感覚を思い出すのにも時間が必要です。かといって、本人が少しずつペースを上げたいと思っているのに、あまりにも安全を取り過ぎても行けないので、まさに、「励ましすぎず、突き放さず」みたいなバランス感覚が大事なのかなと思います。

企業に必要な視点
・柔軟な勤務設計:例)時短勤務・業務調整・在宅勤務など段階的な負荷調整
・継続的配慮:例)面談の継続・業務内容の見直し・職場内理解の促進
・「復職=フル稼働」ではない。回復の段階に応じた職場づくりがカギ
復帰の際には、基本的に元の仕事を出来ることを目指していただくようになりますが、状況によっては、病状にあわせた配慮を検討してもらうことが出てきます。試し出勤制度を導入している会社も増えており、数ヶ月から半年ほどの期間をかけて、徐々に元の勤務量に戻すような、段階的な配慮をしていただけると、復職はずいぶんスムーズになると思います。

社会全体の理解と寛容さ
・メンタルヘルスの回復には「環境の安全性」が不可欠
・再発を責めず、助けを求めやすい空気づくりを
・「不調は誰にでも起こりうるもの」──その前提が支援の出発点
メンタルヘルスの問題は、もはや誰にでも起こりえるものになってきています。本当に、「明日は我が身」です。困ったときに、助け合える土壌は絶対必要と思います。みんなが、他人事ではなく自分事としてメンタルヘルス問題を受け止めるようになっていただきたいと思います。

これで、なんとか講演スライドをまとめます。そして次の講演資料作りに入りたいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

感覚過敏の患者さん、多いので、読んでみました。

感覚の困りごとへの心のケア―センサリーフレンドリーをめざす支援の実際
amzn.asia
2,640円


読みたいと思った動機
学会誌に紹介があり、感覚過敏の患者さんに対して何か役に立つ情報があればいいなと思って購入した。自分が現在している支援が正しいかどうかも確認できればと思っている。

得たい知識
感覚の困りごとに対する具体的な対応法があれば知りたい。
感覚に困っている人をどう支援すればいいのかが知りたい。

感覚過敏は、音(聴覚)、光(視覚)が一番分かりやすいですが、他にも味覚、触覚、嗅覚の感覚過敏もあり、食事や服のこだわりにつながることになります。それから痛覚。痛みに敏感あるいは鈍感であったりとか。それと、温覚、湿覚に過敏な人もいて、暑がりとか寒がりが酷かったり、体調を崩しやすかったり。湿気が高いと気分が悪くなり、乾燥してても喉が乾いて辛くなったり。あとは圧覚に過敏があるかどうか。これは天気や気圧が変化すると頭痛が起きて辛いとかですね、これは結構いろんな人にみられると思います。前庭覚に過敏があると、姿勢を保つのが難しくなったりするようです。温覚、湿覚、前庭覚なんかは初耳です。圧覚に過敏な人の話はよく聞きますが、これも感覚過敏に入るとは認識してなかったですね。

感覚過敏の人は、過敏でいることに疲れ、また解離や防衛のため、感覚鈍麻になることがあるようです。また、何かに夢中になる過集中やこだわりといった行動も、感覚過敏からくる可能性があり、感覚過敏だからこそ特定の感覚にこだわり過集中になる可能性があるとのこと。
また、感覚過敏があると対人関係にも影響し、人との関わりを避けたり、あるいは逆に、人を信用しすぎて騙されたりと、他人との距離の取り方がうまくいかなくなるとのこと。
そもそも、感覚過敏は自閉スペクトラムやADHDといった発達障害の人に多いので、その為もあると思うのですが、こだわりや過集中の強い人には、感覚過敏があるのでは?という視点を持つことは意義がありそうです。

また、不安が強くなると感覚過敏が悪化するとのこと。なので不安のケアをすることはとても重要になります。
あとは自分と周囲が理解し、可能ならば環境調整していく、苦手なことはスモールステップで慣らす、という対策が必要になるそうです。

他の人が平気なことができない、と感じて自己肯定感が低下している人は多いです。でも、感覚過敏であることで、たくさんの刺激を受けて疲れやすくなってしまっています。生活リズムを整えることを意識して、食事の好き嫌いも少しずつ慣らして、とにかく体調を安定させること、そして上述の不安対策をすること。

社会も少しずつ、感覚過敏の人に向けた取り組みが始まっているようで、スーパーで音響や光を柔らかくする日を設定するといった試みがあるようです。感覚刺激を減らすと、通常の人でも楽に感じます。社会全体が、もう少し様々な刺激を減らす方向に向かってくれると良いなと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

サイコシンセシスについて書いてます。前回までサブパーソナリティの話を書きました。


今日は、同一化と脱同一化について書きたいと思います。
これもサイコシンセシスの主要な技法の一つです。サブパーソナリティとの対話の場合にも使える技法になります。

まず、同一化について。自分のサブパーソナリティや自分の一部に、しっかりと入り込む感じです。サブパーソナリティの感覚、感情、思考、意欲、そのようなものとしっかりと一体化します。そのサブパーソナリティの中で呼吸をして、その存在をしっかりと感じ取ります。自分の一部と同一化する場合でも、例えば自分の感情をしっかりと捉え、その感情を体のどこに感じるのか、大きさはどれくらいか、どんな質感や形状をしているのか、温度感はどんな感じか、その感情が自分に何を訴えかけているのか、そういったことをしっかりと感じていきます。
そして、同一化することで、何か気づくことがあるか、感じることがあるかを受け止めていきます。

それと、脱同一化ですが、これは、自分のサブパーソナリティから離れることです。ちょっと客観的になって、「あ、今、私のサブパーソナリティが出てきて何か訴えているぞ」と気づくことです。このような気づきを持てているときは、そのサブパーソナリティと距離を置けていて、脱同一化できていることになります。自分の精神機能のさまざまな部分にも、この脱同一化をすることが出来ます。例えば、感情。私たちは、感情を持っています。でも、感情が私たち自身ではありません。何か強い感情に圧倒されそうになっているときに、「私は今、この感情を持っている、でも私自身が感情なのではない」という認識を持つことは、すごく大切だと思うんですね。

すごく悲しくなったり、不安になったりしているときも、「自分自身が悲しみなのではなく、今私は悲しみを持っている、悲しみという感情を持っている」と認識することで、悲しみと自分自身を分けることが可能になります。悲しみに同一化し、しっかりとその感情を感じて受け止めていく作業と、悲しみから脱同一化し、感情は自分の一部であって自分自身ではない、という認識を持つことは、どちらも大事です。同一化と脱同一化を、自分の意志で行えるようになったとき、私たちは自分のサブパーソナリティや自分の思考、感情、意欲などともっと上手に付き合えるようになっていきます。

サブパーソナリティや、自分の精神機能(思考、感情、意欲、イメージなど)をとりまとめている、指揮者の部分を、サイコシンセシスでは「セルフ」と呼びます。本来の自分、本当の自分ですね。自分が「セルフ」の状態でいられるとき、心は落ち着いていて、均衡の取れた状態になります。「セルフ」であるためには「意志」をもつことが重要になります。

次回は「セルフ」と「意志」について書きます。