こんにちは。今日は寒くてあいにくの休日ですね。通りのプラタナス、公園のカエデなどの紅葉もそろそろ色あせ、落ち葉で歩道が色づいています。間もなく冬が訪れてきます。寒くなると急に上がってくることがあるのが血圧です。今日は血圧、中でも血圧とは何を測っているのかということと、血圧計について少しお話します。
まず皆さんご存知の血圧についてですが、これは血管内の圧力のことです。さらに、心臓が収縮したときに生じる圧のことを収縮期血圧(上の血圧)と言い、拡張したときの血圧を拡張期血圧と言います。また、それを体の外から測定できないかということで、ロシア人医師のコロトコフさんが考えた方法が、今、私たちが日常的に測っている「血圧」です。まず動脈を血液が流れないほど圧迫し、次いでその圧迫を少しずつ緩めてゆきます。するとあるところで血液の流れが再開し、トントンという音が聞こえます。その時の圧力が収縮期血圧で、さらに緩めると音がしなくなります。ここを拡張期血圧と言います。つまり、血管を圧迫し、その際に生じる音を聞いて、その時圧迫している圧力のことを「血圧」と言っているのです。自動血圧計はまたちょっと違って、圧迫をするのは同じですが、音ではなく、血液が流れる圧(脈圧)をセンサーで感知し、上下を決めています。圧迫を緩めてゆき、脈圧が急に上がったところが上の血圧で、圧迫が緩んだために抵抗が減り、低くなったところが下の血圧、という訳で、実は微妙に違うものを測定しているのです。だって片方は音で、もう片方は圧ですから。本来は音で判断することが望ましいとされていますが、人間の場合聴力、耳の良し悪しに左右されること、また機械に音センサーを付けたものも有りましたが、センサーの位置で精度が狂うことや雑音を拾うことなどもあり、現在は圧を測定するオシロメトリック法が主流です。ただ、聴覚が正常な人間と比べると、下の血圧が高く出る印象が有りますが、その一方機械の方が低く出る、という論文もあります。
僕は今のところ耳は悪くなっていないようで、下の血圧は機械より5~10mmHg低い所まで聞こえます。ですから外来では自分の測定値を優先してます。そこで昔循環器学会の会場で聞いた、笑うに笑えない話を一つ。10年以上前のことです。僕が血圧の発表をしている、比較的小さなセッションを聞いていた時、司会(座長と言います)の先生どこかの教授でしたが、聴衆者の中に高血圧の専門の他大学の教授を見つけ、「先生、何かご意見有りませんか?」と振ったわけです。その先生は発表についてコメントしてから、「ところで、うちの医局(大学病院)は、全部自動にしたんだ。なんでかというと、うちの大学の近くにうちと定年退職した元教授なんかが勤めてる病院が有って、そこへ患者が行くと、うちの若いやつが(医師のことです)血圧が高いよって言ってる患者にも、「良い血圧ですよ。」て言ってるんだ!あいつら聞こえてないんだよ!耳が悪くなってさ。(だから、その先生たちの測る血圧は当てにならない、ということです)」をおっしゃいました、会場は笑っていいやら悪いやら、年配の先生方は固まっていたようでしたが、さらにその先生は、「俺も年だから、当てにならないんだよ。」と続け、最後にダメ押し「あんたらも気を付けたほうがいいよ。」大先生らしく、誰も何も言えないままその場は終わりました。
日付が変わり、24日になりました。間もなく9時。雪が降っていますね。僕は子供みたいにうれしいです。ではまた。