こんにちは。先日溶連菌のことを書きましたが、その前に、溶連菌って何、どんな物?ということについて、今回は説明します。
1:溶連菌とは 正式には、溶血性連鎖球菌 の略です。ただし、感染しても人間の血液が溶けてしまう訳では無いので、心配しないでください。
2:いろいろな型が有ります 約130ほどの型が有り、その違いで扁桃炎、咽頭炎になるもの、とびひや他の皮膚感染を起こすもの、「人食いバクテリア」と呼ばれる、手足が壊死(腐ること)を起こしやすいものなどに分かれたりします。
3:どうやってうつるの? 飛沫感染が主ですので、くしゃみ、鼻水、痰などが飛んで行ってうつります。患者さんはマスクをして下さい。また、感染力が強いので、決められた通り学校、幼稚園などはお休みをして下さい。
4:人にうつすのはいつまで? 例えば、治療していない場合、10から21日間は感染性が有ります。化膿しているなら、もっと長期間感染力が有ります。ペニシリン(抗生剤の一つ)を始めると、約24時間で感染性がなくなります。(だから、幼稚園、保育園にも行けます)
5:一度かかると大丈夫? 一度かかった型には免疫ができますが、なんせ130種類もあるので、実際には何度も罹ります。
6:治療はどうするの? ペニシリンという抗生剤を10日間飲み続けます。必ず10日間です(WHOが勧告しているので、どんな医者も反論できません)。また、この抗生剤は必ず1日3回内服、と決まっているので、お昼に飲むことが義務です。学校、幼稚園、保育園には行って良いですが、お昼に薬を飲ませてもらわないといけません。
また、1日2回、1回の薬は、ぺニシリンより効果が不確実なので勧められていません(WHOはもとより、世界中の感染症学会、小児科学会などではペニシリンが第1選択薬)ですから、保護者や社会的都合から、「便利な」そのような抗生剤を投与するのは誤りですので、保護者の方が、正しい判断をして下さい。残念ながら、日本の医師は、感染症に対する意識が驚くほど低いことがよくあるからです。
7:きちんと飲ませるのは大変なんだけど? 大部分の患者さんは抗体ができて自然に治ってしまいますが、一部の方はその抗体が細菌だけでなく、自己抗体となって自分の体をも壊してしまうことが有ります。腎臓の組織、関節、あるいは心臓の弁、筋肉などが壊れることすらあります。しかも、前もって予測できません。ですから、「溶連菌に感染したら、全員がきちんと10日間内服してください。」ということになります。現実に、10年間薬を飲むことになったり、一生飲まなければならないなど、気の毒な状況にある患者さんもいます。きちんと飲んでください。
他にも有りますが、まあこのくらい知っておけば十分でしょう。なお、溶連菌はとてもありふれた感染症です。また、大人が保菌者となって子供にうつることも良くあります。溶連菌に感染した子供の保護者の方や、流行している学校、保育園などの先生方の中にも、感染していることに気付かない方が結構おられます。のどが痛かったら、大人の場合は熱がなくても溶連菌のことがありますので、医療機関にご相談してください。
では、今日はこの辺で。読んでいただき、ありがとうございました。
1:溶連菌とは 正式には、溶血性連鎖球菌 の略です。ただし、感染しても人間の血液が溶けてしまう訳では無いので、心配しないでください。
2:いろいろな型が有ります 約130ほどの型が有り、その違いで扁桃炎、咽頭炎になるもの、とびひや他の皮膚感染を起こすもの、「人食いバクテリア」と呼ばれる、手足が壊死(腐ること)を起こしやすいものなどに分かれたりします。
3:どうやってうつるの? 飛沫感染が主ですので、くしゃみ、鼻水、痰などが飛んで行ってうつります。患者さんはマスクをして下さい。また、感染力が強いので、決められた通り学校、幼稚園などはお休みをして下さい。
4:人にうつすのはいつまで? 例えば、治療していない場合、10から21日間は感染性が有ります。化膿しているなら、もっと長期間感染力が有ります。ペニシリン(抗生剤の一つ)を始めると、約24時間で感染性がなくなります。(だから、幼稚園、保育園にも行けます)
5:一度かかると大丈夫? 一度かかった型には免疫ができますが、なんせ130種類もあるので、実際には何度も罹ります。
6:治療はどうするの? ペニシリンという抗生剤を10日間飲み続けます。必ず10日間です(WHOが勧告しているので、どんな医者も反論できません)。また、この抗生剤は必ず1日3回内服、と決まっているので、お昼に飲むことが義務です。学校、幼稚園、保育園には行って良いですが、お昼に薬を飲ませてもらわないといけません。
また、1日2回、1回の薬は、ぺニシリンより効果が不確実なので勧められていません(WHOはもとより、世界中の感染症学会、小児科学会などではペニシリンが第1選択薬)ですから、保護者や社会的都合から、「便利な」そのような抗生剤を投与するのは誤りですので、保護者の方が、正しい判断をして下さい。残念ながら、日本の医師は、感染症に対する意識が驚くほど低いことがよくあるからです。
7:きちんと飲ませるのは大変なんだけど? 大部分の患者さんは抗体ができて自然に治ってしまいますが、一部の方はその抗体が細菌だけでなく、自己抗体となって自分の体をも壊してしまうことが有ります。腎臓の組織、関節、あるいは心臓の弁、筋肉などが壊れることすらあります。しかも、前もって予測できません。ですから、「溶連菌に感染したら、全員がきちんと10日間内服してください。」ということになります。現実に、10年間薬を飲むことになったり、一生飲まなければならないなど、気の毒な状況にある患者さんもいます。きちんと飲んでください。
他にも有りますが、まあこのくらい知っておけば十分でしょう。なお、溶連菌はとてもありふれた感染症です。また、大人が保菌者となって子供にうつることも良くあります。溶連菌に感染した子供の保護者の方や、流行している学校、保育園などの先生方の中にも、感染していることに気付かない方が結構おられます。のどが痛かったら、大人の場合は熱がなくても溶連菌のことがありますので、医療機関にご相談してください。
では、今日はこの辺で。読んでいただき、ありがとうございました。
こんにちは。連日の雨で桜もところどころ散りかけてはいますが、この週末はまだあちこちで花見ができそうです。関東は春真っ盛り、ほんの少しの間に冬はどこへやら、遠く過ぎて行ったようです。さて、新学期も始まり、学校、幼稚園、保育園も新しいクラスに通い始める子供たち、屈託なく、楽しそうです。今日はこの季節にも多くみられる感染症の一つ、溶連菌についてお話ししましょう。溶連菌とは「溶血性連鎖球菌」という菌の略称で、代表的な感染症としては、咽頭炎、扁桃炎など、喉にくっつき、炎症を起こし、熱が出たり、腫れたり、喉が痛かったりするものです。
「なんだ、そんなのただの風邪と同じじゃん?」と言われそうですが、似てはいますが全然違います。普通の風邪、大多数はウイルスによるものですが、これらは放っておいてもまず大丈夫、自然に治ります。しかし、溶連菌は自然に治る場合も多いのですが、場合によってはとんでもないことが起こるのです。例えば、リウマチ熱と言って、多関節炎、心臓の広範な炎症などを合併したり、急性糸球体腎炎という腎臓の炎症を起こすこともあります。場合によっては一生涯抗生剤を飲み続けることになる患者さんもいます。しかも、こんなありふれた、しかも重大な感染症があちこちの病医院で見逃されてしまっているのです!!なんてこった!治療はペニシリンを10日間内服させる、というシンプルなものです。診断が問題です。これは溶連菌の所見ですよ、という明らかなものはなく、すごく腫れている、とか、喉の粘膜がとても赤くなっていて、ちょっとした擦り傷なみのようであるとか、まあ、溶連菌の患者を500人くらい見ればわかるよ、というような、あいまいで、感覚的な所見しかありません。ですから、ある程度怪しい場合は、必ず検査します。僕が知っているちゃんとした小児科医の人たちは、見逃さないよう検査をなさっています。喉の専門家であるはずの耳鼻科医が意外に見逃しているのが、とても残念です。
なお、日本の医学部および大学教育では、感染症の教育がなおざりになっています。大学に臨床の感染症内科医がいる病院はごくわずかです。僕の知る限り、筑波大にもいません。教育が十分でないので、師匠もだめなら弟子もダメ、という状況が僕の若い時からずっと続いています。感染症に興味や関心を持つ医師は、本当に少ない、というのが現実です。良い所もたくさんある日本の医療ですが、感染症については、多くの改善すべき点があると考えます。
すいません、ちょっと力が入りすぎ?ましたか。なお、以前のブログも、「カテゴリー」の中から呼び出してお読みになれます。皆さんが病気を知るうえで、少しでも参考になるようにと真面目に、考えながら書いているつもりです。最後に、溶連菌については色々な話が有りますので、、また別の機会にお話しします。読んでもらって、皆さんのために少しでもなればうれしいです。では、また。
「なんだ、そんなのただの風邪と同じじゃん?」と言われそうですが、似てはいますが全然違います。普通の風邪、大多数はウイルスによるものですが、これらは放っておいてもまず大丈夫、自然に治ります。しかし、溶連菌は自然に治る場合も多いのですが、場合によってはとんでもないことが起こるのです。例えば、リウマチ熱と言って、多関節炎、心臓の広範な炎症などを合併したり、急性糸球体腎炎という腎臓の炎症を起こすこともあります。場合によっては一生涯抗生剤を飲み続けることになる患者さんもいます。しかも、こんなありふれた、しかも重大な感染症があちこちの病医院で見逃されてしまっているのです!!なんてこった!治療はペニシリンを10日間内服させる、というシンプルなものです。診断が問題です。これは溶連菌の所見ですよ、という明らかなものはなく、すごく腫れている、とか、喉の粘膜がとても赤くなっていて、ちょっとした擦り傷なみのようであるとか、まあ、溶連菌の患者を500人くらい見ればわかるよ、というような、あいまいで、感覚的な所見しかありません。ですから、ある程度怪しい場合は、必ず検査します。僕が知っているちゃんとした小児科医の人たちは、見逃さないよう検査をなさっています。喉の専門家であるはずの耳鼻科医が意外に見逃しているのが、とても残念です。
なお、日本の医学部および大学教育では、感染症の教育がなおざりになっています。大学に臨床の感染症内科医がいる病院はごくわずかです。僕の知る限り、筑波大にもいません。教育が十分でないので、師匠もだめなら弟子もダメ、という状況が僕の若い時からずっと続いています。感染症に興味や関心を持つ医師は、本当に少ない、というのが現実です。良い所もたくさんある日本の医療ですが、感染症については、多くの改善すべき点があると考えます。
すいません、ちょっと力が入りすぎ?ましたか。なお、以前のブログも、「カテゴリー」の中から呼び出してお読みになれます。皆さんが病気を知るうえで、少しでも参考になるようにと真面目に、考えながら書いているつもりです。最後に、溶連菌については色々な話が有りますので、、また別の機会にお話しします。読んでもらって、皆さんのために少しでもなればうれしいです。では、また。