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March 2016 の投稿一覧です。
カテゴリー: 1.アレルギー
投稿者: satohcli10-9
こんにちは。出かけていたので一週空いてしまいました。いつの間にか春めいて、ここつくばでは木蓮の花が咲いていますね。桜も咲き始めたようで、僕の生まれた北海道とは全く違う春の景色です。
さて、今回も食物アレルギーの話をします。食物アレルギーは、積極的な治療法があるのか?ということについてですが、最近マスコミなどでは、少しづつ食べさせて慣らしてゆき、いずれは食べられるようにする、いわゆる経口免疫療法が主流であるかのように言われています。しかし、これは全くの間違いであり、未だに実験的に一部の医療機関で研究レベルで行われている治療法である。よって、一般診療で行うことは推奨しない(食物アレルギー診療ガイドラインより一部改編)。となっています。筑波メディカルセンターで行われていた理由は、前部長の市川先生が、日本を代表する小児喘息の専門医の一人であり、先進的な治療を自ら行わなければならない立場でいらっしゃったためです。アメリカの食物アレルギーガイドラインにおいても、「一部の症例においてはこの治療の効果を認めるが、エビデンスは低く、専門家の意見としては推奨しない。その理由としては、安全性の確保が十分でなく、一度摂取可能となった食品についても、運動時、ウイルス疾患(風邪、インフルエンザ、胃腸炎など)に罹った際にはアナフィラキシー反応を含む全身性の反応が時に出現する。」ということが挙げられています。さらに、この療法を積極的に行っている病院の一つである、大阪市立病院が数年前に学会発表した論文でも、「免疫療法がどの患者に安全に行えるか、未だに事前に判定する手段がない。」とあります。ですから、この治療法に期待なさっている患者さんとその家族には大変残念ですが、なかなか安全確実に治る方法は、今のところないのが現実です。また、どんな抗アレルギー薬や、ステロイド剤を飲んだとしても、アレルギーが起こる食べ物は、食べられないのです。せいぜいアレルギー症状を押さえはしますが、安全に食べられはしません。ですから、今のところは、他に良い治療法や、安全にできる免疫療法が出てくるのを待つしかありません。
今日はがっかりさせてしまうお話でしたが、誤解したままでは非常に危険な問題ですので、あえて書きました。ではまた、お元気でお過ごしください。
こんにちは。肌寒い日が続いています。しかし、スギ花粉はそれなりに飛散しているようで、毎年それに苦しんでいる方が来院します。最近はスギ花粉だけでなく、イネ科雑草、ブタクサ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、さらにはそのほかにもさまざまな花粉症の方がいます。その中で、食物アレルギーを引き起こす花粉症をご紹介します。その植物は、本州の広い範囲に生息するハンノキの仲間、および北海道や本州の高原地帯分布する(北海道の人は必見です)シラカバです。
「なにそれ、聞いたことないけど。」という方も多いでしょうが、これはアレルギーの世界では知る人ぞ知る、有名なものです。まず前者について、。これはハンノキ科という地味な広葉樹が、本州では2月から3月いっぱいくらいまで花粉を飛散させます。スギとかぶっているため、この花粉による症状は目立ちません。認知度は極めて低く、その病気の存在を知る医師も多くは有りません。また、シラカバはよく知られた木ですが、この花粉症患者は意外に多く、例えば北海道では、これによる花粉症は人口の5から10%程度はいるのではないかと推定されています。これについても、スギほど激しい症状が出る人は少ないので、やはり知らない人も多いのです。ですが、この一見地味な花粉症が、果物や野菜のアレルギーを引き起こし、今まで食べられていたものが一生食べられなくなる、そんな事態を引き起こすのです。
当院はアレルギー疾患を広く診療していますので、このような患者さんが多く集まります。何らかの果物、野菜アレルギーを発症した患者さんは、百人以上はいます。誠に気の毒ですが、良い治療法はなく、一度アレルギーが起こった果物や野菜は、生の状態で食べることは二度とできません。さらに、食べられなくなるものが少しづつ増えてきます。キウイだけだったものが、モモ、メロン、イチゴ、リンゴ、さらにはトマト、セロリ、ニンジンなどの野菜にも広がってくる場合も多いのです。予防の手立てもありませんので、「食べられれば食べて良いですが、もしも何か変わったことが有ったらすぐ(食べるのを)やめてね。」と説明することが大事です。幸い、主な症状は口の中の違和感、痒み、腫れた感じなど、多くは重いものではありませんが、それを無視して食べ続けると、呼吸困難、ショックなどにつながりかねませんので、無理して食べ続けないでください。ただ、多くの場合は加熱すれば食べられますので、煮たり、ジャムにしたり、パイにしたり、レンジにかけるだけでも良いでしょう。そうすれば、みんなとほぼ同じものが食べられますので、「ボッチ」にはならないと思います。
どうしてこんな病気が増えてくるのか?それは、今のところ分かりません。清潔仮説、腸内細菌の異常、など、色々な仮説が有りますが、どれも正しいと証明されてはいません。僕たちに今できることは、そうした患者さんを見つけ、適切な対応、助言を行い、健康を損なわないようにすること、これに尽きるのです。
次回も食物アレルギーについてお話しする予定です。ではまた、お元気でお過ごしください。