こんにちは。やっとインフルエンザの患者さんも少なくなってきました。今年は皆さん大変でしたね。熱出るたびに、インフルエンザの心配をして、あの、鼻が痛い検査を無理やりされて、子供さんたちはそのたびにおいおい泣いて、でもしないと幼稚園も学校も行けない、預かれない、と半ば脅されて、子供たちには嫌なシーズンでした、本当に。
さて、冬場に体がカサカサして、あちこち痒くて、皮膚科や近くの小児科で保湿剤をもらった人も多かったでしょう。「乾燥肌ですね。」と言われ、保湿で良くなった人もいれば、湿疹があちこちにできて、夜中掻き壊したり、とびひになった人もいるでしょう。これって何?ただの乾燥ですか?と思う患者さんや、家族の方も多いでしょう。実は、治りにくい人の大部分は「アトピー性皮膚炎」なのです。「でも、そんなこと言われたことないし。」「私も乾燥して痒くなるので、体質が似てるんじゃない。」実は、アトピーや、その他のアレルギー疾患は遺伝要因が強いのです。かなり似ますので、親がアレルギーや、アトピー体質の場合は、子供も同じような状況になる場合や、あるいは親御さんより悪いケースが多いのです。アトピー性皮膚炎は、多くが生後2,3か月から発症し、顔をこする、頭をかく、耳が切れる、抱っこされた時に顔をスリスリこすり付ける、等の行動をします。これは眠くなると一層やるので、「眠いのね。」など度のんきに考える方が多いのですが、アトピー患者は、眠いと痒みが増すものです。また、癖ではありません。赤ちゃんに「癖」は無く、痒いからこするのです。やがて、顔がきれいになっても、今度は体がカサカサして、湿疹が出てきます。そうなるとあちこち痒いので、体が紅白のまだらになったり、掻き壊しの傷が出来たりします。こうなると、保湿だけでは収まらず、「皮膚炎」を治療するために、ステロイド軟膏が必要です。また、「塗ると良くなるけど、止めるとすぐ悪くなるのよね。」と言ってくるお母様もいますが、それは当然です。「慢性」の病気ですから、ちょっと良くなったからと言って、止めてはいけないのです。ただしその一方で、ある程度きちんと塗っていれば、自然に良くなる患者さんはたくさんいます。自然治癒、寛解((落ち着いてくること)が多いのも特徴ですから、あまりショックに陥ったり、泣いたりしないで下さい。「敏感肌でカサカサかいかいだから、軟膏塗ってきれいにしてあげよっ!」とか「良い所ばっかり似るわけじゃないし!」とか軽く考えて、せっせと塗ってもらえば、大部分の人は良くなってきます。ただし、一部の患者さんは小学生、あるいは思春期になっても治りきりません。その時は、本人と保護者の方が協力して、「塗って塗ってぬりまくって」ください。ステロイドが基本です。どの国の皮膚科テキストを見ても、ステロイドは基本と記載されています。そして、乾燥を防ぐために保湿剤を塗ること。さらには、痒みの範囲が広い場合には、かゆみを抑えるために抗アレルギー剤を飲むことも必要です。きっちり続ければ、ごく一部の人を除いて、かなり改善しますし、思春期前後までには寛解(落ち着くこと)する例が70%以上と言われています。
アトピーと言われるのが嫌で、「ただの乾燥だ。」とか「乳児湿疹だ。」などと言って、薬はしっかりステロイドを出している医者もたくさんいます。嫌なことを言っては評判が悪くなる、患者が少なくなる、などと、黒を白とごまかしているようではまともな診療はできません。言い方さえ考えれば、説明をきちんとすれば、判ってくれる人が大部分ですから、僕ははっきり言います。アトピーはアトピーなのです。そのうえできちんと理解して、病気に向き合ってほしいものです。なお、塗り方、回数、保湿剤の種類など、季節や状況によって、少しづつ変えてゆくのですが、詳しく説明するには、実際に診察することが必要ですので、受診してください。もう遅くなりました。ではまた。