カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi


先日、症状が改善し、通院を卒業された方がいました。当院のスタッフがずっと面談を担当して、困りごとを共感して聞き、必要に応じて助言をしておりました。

徐々に良くなられて、だんだんと通院間隔があいてきた頃、診察で「こういうときに、〇〇さん(面談担当スタッフ)や先生ならなんておっしゃるかな、って考えるんです」と話しておられました。

このように、診察や面談の場面以外でも、自分を支えてくれる人なら、こういう時になんて言ってくれるか、を考えられるようになると、メンタル不調の症状がよくなる方が多いように思います。

人生から、ストレスや悩み、困難を取り除くことは難しいです。むしろ人は、多少のストレスがある方が健康になるとも言われています。ストレスがあり、辛い思いをするときに、自分を理解し支えてくれる存在があることは、とても大事だと思うんですね。

でも、自分を支えてくれる存在に、すぐには話をできない場合もあります。そういった存在が身近にいて、毎日話ができる環境の人は、とても良い環境にあると言えますし、そういう人は余程の衝撃がない限りは、メンタル不調になりにくいと思います。

しかし、すぐにそういう人と話ができなくても、「あの人に話したらなんと言ってくれるかな?」と考えて、自分に思いやりのあるメッセージを言ってくれることを想像できるだけでも、温かい気持ちになれるんですよね。

メンタル不調になる人は、とにかく自分を責める方が多いです。自己肯定感が低く、自分のことが嫌い。なので自分に思いやりのあるあたたかい言葉やあたたかい気持ちを向けることがとても苦手です。

なので、私たちが患者さんにあたたかい言葉、あたたかい気持ちを向け、それを伝えていくことで、徐々に自分自身にそれを取り入れてくださると、とても嬉しく思います。

これは「カウンセラーの内在化」と言われているようです。最初は、通院し、カウンセリングを受けて、カウンセラーに支えてもらいます。カウンセラーは自分の外にいて、会いに行って助けてもらう存在です。でもずっと、カウンセリングを続けていると、そのうちに「こういう時に、あの人ならなんて言ってくれるかな」ということを考えられるようになっていきます。カウンセラーが自分のうちにいて、いつでもアクセスできる状態ですね。自分の中に、カウンセラーを取り込めた状態です。

最終的には、きちんと自分自身で、自分に思いやりやあたたかい気持ちを向けられるようになれるといいな、と思います。自分のことを大好きと思うのは難しいかもしれませんが、「まあ、悪くないかな」くらいに思えるようになっていただきたいなと思っています。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

精神科の薬物治療では、維持療法が大事になってきます。お薬を飲んで、症状が良くなっても、しばらくお薬を継続するんですね。これは内科とかではあまりないことだと思います。いや、内科でも高血圧とか、慢性的な病気は同じですかね。とにかく、しばらくお薬を続ける必要があります。十分な維持療法をせずにお薬をやめてしまうと、再発のリスクが高まり、些細なきっかけで、あるいは特にきっかけなく、症状が再発する可能性が高くなってしまいます。

ただ、じゃあその維持療法の期間をいつまでにするのか、そこが問題です。一応、病状に応じて、3ヶ月とか、半年とか、目安はありますが、どうしようかなと悩むことがあります。

ある程度の量のお薬を飲まれていると、急にやめてしまうと離脱症状が出ることがあります。離脱症状を再発と勘違いし、お薬は一生やめられないと思い込んでしまう方もいますので、離脱症状には注意が必要だと思っています。

すっかり良くなっていたのに、お薬を減らしたりやめたりした途端に悪くなり、お薬を再開したらすぐ良くなった、という場合には、病状の再発ではなくて、お薬を減量したりやめたりしたことによる離脱症状の可能性が高いです。その場合は、いったんお薬を減量前の量に戻し、症状が落ち着いてから、再び、もっとゆっくりとしたペースで減量していきます。または、離脱症状の出にくいお薬に一旦置き換えて、それからやめていくようにしたりと、工夫をします。

ただ、このような状況では、患者さんがお薬を減らすことをどう思っているか、どんなふうに受け止めているかがかなり重要になります。離脱症状であることを納得し、冷静に合理的に受け止めていられる方であれば、上記のような工夫でお薬の減量を進めていきます。しかし、離脱症状で嫌な思いをした、あるいは離脱症状を再発だと勘違いされている場合などでは、再びお薬を減らすことを怖がられる場合も結構あります。その場合は、無理に減らそうとすると、患者さんが「お薬を減らされることが不安」になり、結果として精神症状が悪化する、という現象が起きてしまいます。お薬を減らす場合は、減量することに患者さんがどれくらい前向きか、どれくらい不安な気持ちがあるか、そのこともとても大切になってきます。

お薬を減らすことに不安が強い場合は、通常の維持療法より長めに維持療法の期間を持ちます。また、患者さんの性格にもよりますが、飲み忘れなくきっちり飲まれているうちは、維持療法を継続することが多いです。患者さんが薬を飲むことで安心感を得ている場合が多いように思えます。だんだん飲み忘れが増えてきたら、減量のタイミングかな、と思います。(まだ維持療法を続けて欲しい期間に飲み忘れる方の場合は、もう少しだけ頑張って飲んでいて欲しいとお願いします)。

なので、一応の維持療法の期間を伝えつつも、患者さんの様子を聞きながら、いつまで続けるかを決めていっている感じです。大事なのは、薬をやめるかどうかではなく、日常生活がきちんと送れることだと思います。お薬を減らすことを頑張るあまり、日常が辛くなっては意味がありません。要はバランスなのかなと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

前回、下位無意識に閉じ込められているトラウマを扱うのに、上位無意識の力を借りることについて少し書きました。


トラウマケアをするための心理療法として、インナーチャイルドセラピーという手法があります。これは、子ども時代のトラウマで傷ついた子どもが、自分の心の中にいて、その子ども(インナーチャイルド)をケアしていく、という心理療法になります。

ただ、その人自身が、子どもをケアできるほどの状態でない場合、まず、その人自身が子どもをケアできるだけの自己肯定感だったり、自尊心だったりを回復する必要があります。本当の意味で、自己肯定感が回復し、自尊心が持てるようになるために、インナーチャイルドをケアしていかないといけないのですが、車輪の両軸のように、どちらも大事というか。インナーチャイルドのケアをするために、大人の自分がまずその力を強め、そしてインナーチャイルドのケアをする。そうしたらまた大人の自分に力がつく、その繰り返しになります。

大人の自分に力をつける作業が、上位無意識の力を借りることになると思います。まず、自分自身に必要な要素を、イメージの中で取り入れていくようにします。

何が必要かは、その人によって違います。純粋にエネルギーを必要とする人もいますし、リラックスできること、自分にパワーがあると信じること、愛情、忍耐力、意志の力、清明さ、いろんな要素を必要とすることがあります。今、たちまち健康であまり困っていない人でも、「もう少し自分を律せるといいなあ」とか「もう少し体力があるといいいなあ」とか「もう少し自己主張できるといいなあ」とか、そんなふうに思うこともありますよね。そういう時にも、上位無意識の力を借りて、イメージによって得たいものを取り入れるようにしていくことが可能です。

カウンセリングは筋トレ、と紹介したことがありましたが、


イメージ療法も筋トレです。日々、コツコツと行なうことが大切です。徐々に自分の中にイメージが定着したり、イメージが変化したりしていきます。

朝晩2回、3分程度のイメージから始めるので良いと思います。イメージを行って、気づいたことや感じたことを日記やメモとして書くことが推奨されます。そのメモは見直すこともあれば、見直さないこともあります。でも、習慣にしておくと、ある時ふっと気づいたりすることが出てきます。

イメージのやり方も結構自由でいいんですよね。でも何でもいいと言われたら困る方も多いので、いくつか典型的なイメージ法というのがあります。最近では、ネットでいろいろな音声が入手できるので、瞑想系のイメージ誘導文を音声で聞くのが簡単で良いと思います。私は自分でボイスメモに自分の音声を入力して、それを聞きながらやっています。目を閉じてイメージする方がイメージしやすいので、文章を目で読んでするよりは、音声を聞きながらする方がやりやすいと思います。

次回、私がやっている方法も含めて、イメージ誘導文の例をいくつか提示してみたいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

公認心理師が狭き門になっている現状をどうにかしたく、Bルート指定施設になるにはどうしたらいいかを思案中です。


公認心理師の受験資格取得の区分B(Bルート)のプログラム認定は、文部科学省と厚生労働省が合同で行なっているようで、厚生労働省のHPに資料がありました。


これによると、申請手続きを行うのに、一番大変そうなのは、プログラムの内容を決めることにありそうです。
プログラムには到達目標があり、これを大学において習得した内容と合わせて達成するように、とのこと。

一般的に、心理学科の大学で履修することになるものについても、厚生労働省で定められたものがありました。

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000964022.pdf

ということは、結局、何が習得できればいいのかを考えました。自分一人で考えてもわからないことも多く、chatGPTにも相談しました。

厚生労働省が提示する「到達目標」は主に次の5分野になります。
1.保健医療分野
2.福祉分野
3.教育分野
4.司法・犯罪分野
5.産業・労働分野

そして、施設の機能に応じて、どうしても重点的になる分野が出てくるのは致し方ないという判断になるようです。
大学で修得した知識を実際の支援に応用し、実務経験を積ませることが求められるとのこと。

当院は医療機関ですので、日々の業務は当然1.の保健医療分野に該当します。しかし、他の分野に関しては、以下のようなやり方で取り組めるとのこと(chatGPTの提案です)。

福祉分野:精神保健福祉士とのケースミーティングの実施し、支援の視点を共有。地域の障害福祉サービス事業所との連携記録を共有。福祉的制度(自立支援医療、障害者手帳)の活用支援場面への同席。
教育分野:学校との連携ケースに関わる。子どもや学生の来院ケースに同席し、発達支援の方針づくりを経験。教育機関からの紹介で受診した事例の初期支援を記録。
司法・矯正分野:保護観察中の患者との関わり(通院治療の支援)への同席。裁判所や家裁調査官との連携記録の共有(守秘義務に配慮)。DVや被害・加害に関連するケースへの支援。
産業・労働分野:リワークデイケアにおける復職支援の実務。産業医との意見交換や復職面談の記録。就労支援事業所との連携・報告書作成。

このような取り組みであれば、当院で普段から実施していることであり、特別何か追加しなければならないことはなさそうです。こうやって整理すると、医療機関で働いていても、さまざまな分野との連携があり、公認心理師として多くの知識や実務経験が要求されるのも当然、と納得できます。

補足的に他分野の専門家を招いて勉強会を行うのも良いとあるので、交流のある人にお願いしてみることも検討したいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

うちの診療所では心理検査をすることが多いのですが、患者さんにその必要性を説明するのに、説明資料をちゃんと作りたいと思うに至りました。特に、時間をかけて行う検査で、事前に予約が必要なものは、口頭では説明しておりますが、文章を用いてきちんと説明した方が良いと感じています。

以前リワークデイケアの記事を書き、その時にも資料作りがしたいと思って色々とまとめました。


しかし、このシリーズをまとめた結果、患者さんに何を伝えたいのか自分の中で結構整理できてしまって、結局資料を作らないまま、患者さんは私の熱い思いをただ聞くという状況が続いています。なんだか、資料にすると伝えたい情報が画一的になってしまって、この人にはこういう理由で伝えたい、という私の意図がうまく伝わらないような気がしてしまっているのです。(実際に参加が決定しましたら詳細な資料をお渡ししますのでご心配なく)。

話を戻して、心理検査なのですが、心理検査に関しては、患者さんから希望があって実施する場合と、こちらから実施したいということを説明して受けてもらう場合とがあります。患者さんからの希望で多いのは、発達障害に関する検査です。当院では大人の発達障害の診療にも力を入れていて、診断に有用な検査を実施しています。なので、大人の方で発達障害の診断を受けたい方からの問い合わせが多い状況にあります。

発達障害の診療は、子どもさんでもニーズが強いと思います。子どもさんの場合は、発達障害の診療をしている小児科を受診される方が多いですが、当院では中学生以上は診療させていただいており、小児科がなかなか予約が取れずに困ってらっしゃる方や、発達障害ではないかが気になる上に、少しうつになってきていたり、不登校の問題も抱えていらっしゃったりする中学生の方、高校生の方が来られたりします。

こちらがお願いして行う検査では、ロールシャッハテストという検査があります。これは、その人の心理状態や精神状態をよく反映したもので、自分の気持ちや状態をうまく言語化できない学生さんに実施させていただくことが多いです。

あとは、復職の可否を判定するのに、参考にすることが多い、ブルドン抹消検査という検査。これは認知機能を測定することが可能です。メンタル不調になり休職した方が、復職しても大丈夫かどうかは、気持ちの落ち込みが回復していることはもちろんですが、集中力や判断力などの認知機能の回復もとても重要です。その認知機能を測定できるのでとても便利な検査です。

これらの説明資料を作るために、普段何をどう説明しているのか、何回かに分けて書こうと思います。というわけでこの話はまた続きます。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

うちの診療所では、患者さんを私が呼びにいくスタイルをとっています。もう少し忙しくなれば、クラークを雇って、カルテ入力などは手伝ってもらうか、そのあたりも音声AIなどに助けてもらうか、色々と工夫をしようとは思っていますが、できる限り患者さんを呼びにいくのは継続したいと思っているんですよね。

患者さんを待合に呼びにいくと、待合でどんなふうに過ごしているのかが見えます。診察室では、特に通院を開始したばかりの方は緊張されていたりもするので、普段とはすこし違うところもあると思うのですよね。診察室ではあまり話をされない方が、待合ではご家族とよくお話をされたりするのを見ると、「診察室では緊張されるんだな」と気づいたりもします。待合でも硬い表情で緊張しておられるのを見ると、「まだ不安・緊張が強くてしんどそうでいらっしゃるな」と思ったりもします。

待合で座っていられずに立って待ってらっしゃる人とか(混雑しているのではなくて、様々な理由で座れないことがあります)はお待たせすると申しわけない気持ちになります。

患者さんの診断やお薬の聞き具合などは、もちろん患者さんが話されることを最優先に判断しておりますが、待合や診察室でのご様子を見て、表情や話し方などの情報もすごく大事です。うちは再診の患者さんも、看護師さんがご様子を聞きにいくのですが、看護師さんと話しているご様子なんかもちらっと見たりしています。

また、当院の待合は、大きめのソファー、カウンター席、2人席などいくつかのタイプがあり、患者さんにとってお気に入りの席があったりします。「この人は多分あの席にいるな」と思って呼びにいった時に、想像通りのところにいらっしゃると、なんとなく嬉しく思ったり。

最初に開業するときに、待合をどうするかを悩みました。開業する前には大学病院で勤務していたのですが、患者さんが「病院って、来るだけでしんどくなります」と話されたのを聞いて、「しんどいから来るのが病院なのに、病院に来てしんどくなってたら本末転倒だな…」と思ったんですよね。なので、できるだけ待合で待っている時間がリラックスできるように、いろいろなタイプの席を用意して、少しでもお気に入りの場所を作ってもらえたらな、と思っているのです。

それでも往復の道中がしんどい方もいらっしゃいますし、やはり待つのが疲れる方もいらっしゃいます。オンライン診療の導入や、待ち時間の短縮など、患者さんの通いやすい、利用しやすい診療所にする工夫はこれからも重ねていく必要があると思っています。

ちなみにうちは靴を脱いでスリッパに履き替えてもらうのですが、それも、靴を履いたままだとなんとなくリラックスできないように思って、履き替えていただくようにしています。患者さんには靴の脱ぎ履きをするというお手間をかけますが、待合ではできるだけゆっくりとした気持ちで待っていていただければと思っています。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
先日、大学の心理学科に通っている学生さんから聞いたのですが、大学院への進学がすごく大変になっているとのこと。聞けば、実習協力医療機関を探すのに苦労しており、実習が出来ないため、たくさんの学生さんを受け入れられない状況になっているようです。

カウンセラーという職種は、長らく「臨床心理士」という資格が重視されておりました。しかし、それは国家資格ではなかったんですよね。正式には、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会という協会が認定した、いわゆる民間資格でした。ただし信頼性・専門性が高く、心理職の代表的資格として広く認知されているものではあったんですよね。そして、それを取得するのに、原則大学院まで進学することを要件としていました。民間資格なのに、かなりの学歴を要求する資格だったんですね。

ただ、これだけカウンセラーという仕事の重要性が増してきているのに、国家資格ではないことが問題視され、公認心理師という資格が2017年に生まれました。しかし、臨床心理士とは重なる部分と異なる部分とがあり、現在、心理学科の大学の多くは、臨床心理士と公認心理師の両方の資格が取れるようにカリキュラムを組んでいます。
特に、公認心理師の資格取得のためのカリキュラムになってから、医療機関での実習が重要視されているようです。しかし、まだ医療機関の方が、心理士さんの実習に十分対応できないようで、協力医療機関を確保するのに苦戦をしいられている、ということです。

私も地元の大学より依頼を受け、ここ数年大学院生の実習生を1年間で3人受け入れています。リワークデイケアや私の外来診察、心理検査、新患の予診の見学などをしてもらっています。

大学で心理学科を選択して入学された方の多くは、カウンセラーになることを希望されていると思うんですよね。カウンセラーに興味のない人が心理学科に来るとは思い難い。しかし、国が認める公認心理師だったり、あるいは民間資格ながら強い信頼性を持つ臨床心理士の資格を取るためには、大学院まで進学する必要があり、その大学院が狭き門になりつつある、という状況なのです。

ただし、大学院に進学できない人でも、公認心理師になれる道があります。いわゆる「Bルート」と言われるもので、指定された施設で2年以上(通常は3年間)実務経験を積むことで、公認心理師の受験資格を得られるというものです。
しかし、この指定施設が極めて少ないのが現状です。医療機関でこの指定をとっているのは、全国で1桁です。Bルートでの受験者は全体の1%未満という状況のようです。

これから、公認心理師の必要性はどんどん大きくなっていくと思います。なんとか、当院も指定施設として認定していただけないか、これから色々体制を整えてみたいと考えています。

医療スタッフの研修は、一筋縄でいかず、コツコツと育てていく必要があります。当院に実習生が来られている時には、ぜひ実習生の育成を見守っていただけるとありがたいです。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

講演会で聞いた話ですが、精神科治療の状況というのは日本と外国では違いがあるようです。それぞれの善し悪しもあるので一概にどこの国がいいとは言えないところもありますが、気になったのは、1日に診る患者さんの人数です。

ヨーロッパ諸国では1日あたりの外来患者数は10人未満の国が多く、アメリカでは地域により差がありますが、6人から25人とのことでした。精神科医の不足が懸念されているアフリカ諸国のデータでは、ナイジェリアが1日50人とのこと。

もっとも、イギリスは日本と医療制度が違い、イギリスで精神科の専門医にかかるためには3年程度の待機期間があるとのこと。それもそれで問題だな、とも思います。

しかし、この人数の比較だけでみると、日本では、精神科医が1日に診る患者さんの数が相当多いことになります。1日10人しか診ていないクリニックなんて聞いたことがありません(完全自費診療とかならあるかもですが)。それだけ毎日相当の数の患者さんを診ていて、その上で新患の予約が取りにくいということは、単純に需要と供給のバランスが成り立っていないということになります。私も1日の診察人数が50人を超えることはけっこうありますので、「ナイジェリアと一緒か…」と思うと、少し考えさせられるものがあるというか(ナイジェリアの医療事情を詳細には知りませんので、偏見や誤解はあるかもしれません)。

もし、ヨーロッパ諸国のように、1日数人の患者さんを診察するスタイルならば、今の日本の精神医療の質は全然違うものになると思います。
日本の精神科医療が、たくさんの患者さんを診るようになっているのは、精神科治療が入院中心だったときの名残であるとのことも、そのときの講演会で伺いました。また、精神科の診察を希望する患者さんの増加数に対して、精神科医の数が足りていない問題だったりとか、そもそも医者の人数も、地域によってかなりバラツキがありますので、医者偏在の問題とかもあると思います。

これからの精神科医療をどうしていけばいいのか、そういった大きな問題は、厚生労働省や医師会などでも議論されているところと思います。しかし、大きな改革はすぐには難しいので、なんとか今の体制で出来ることを考えていく必要があると思います。

先日、研究機関のアンケート調査に協力をしたのですが、そのアンケートでは、医師以外のスタッフによる業務分担の状況確認がありました。これからは、精神科でも業務分担だったり、いろんなスタッフと協力して、患者さんの満足度を高めていく流れになるのではないかと思います。しっかりと診察時間を確保することが難しい状況でも、お困り事に少しでも対応できるよう工夫していこうと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

サイコシンセシスという心理療法について書くシリーズです。今日は、無意識の領域について。ある程度、人間の心理の構造を知ることで、ガイディング(サイコシンセシスのカウンセリング)で何をしようとしているのか、それを理解する基礎づくりをしていきたいと思います。

前回の記事も参考にしてください。


サイコシンセシスでは、人の意識領域の周りにある無意識をの領域を、大きく3つに分けています。下位無意識、中位無意識、上位無意識の3つです。

下位無意識は、自分のこれまでの人生での経験で感じたこと、考えたこと、思ったこと、いろんな記憶やエネルギーが抑圧されています。願望、欲望、行動力といった、とても強い、人としての根本的な生命エネルギーが溢れているエリアでもあります。

中位無意識は意識を中心として、今現在の意識に近いエリアで、何かきっかけがあればすぐ思い出せるような意識、現在の活動に直接関わっているエリアです。

上位無意識は、自分と他人を繋ぐような、集合無意識であったり、自分の人生の目的、自分の存在意義、自分が何に向かうべきかといった、人間を成長に導くエネルギーのエリアです。

従来のカウンセリングは、下位無意識と言われている、その人のトラウマの問題であったり、インナーチャイルドの問題であったり、その人の抱えている歪んだ信念だったりを、ケアしていくのが大きな目的であったと思います。サイコシンセシスも、下位無意識への対処はとても重要視しています。

しかし、実際、下位無意識へのアクセスはとても負担が大きいものです。そもそも、辛い体験であるからこそ、蓋をして、意識の奥深くに閉じ込めて、自分の意識に登ってこないように、無意識に抑圧しているエリアです。その蓋を開ける作業が簡単なはずもないし、楽しいはずもありません。

サイコシンセシスでは、その大変な作業を行うのに、上位無意識の力を借りることがあります。この視点が、他の心理療法にない視点かな、と思います。
上位無意識のエリアには、自分が望ましいと思う特性を強化するヒントがたくさんあります。そのエネルギーを拝借しながら、下位無意識のアクセスを進めていくイメージです。

サイコシンセシスのガイディングでは、イメージをたくさん使うのも特徴だと思います。自分の心というのは、言葉や文字だけでは表せないものもたくさんあり、視覚的、聴覚的、触覚的な要素や、その時の感情、思考、意欲など、いろいろな精神機能の要素を扱うのにも、イメージを使うというのが適切だったりするのだろうと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

先日来られた患者さんの話ですが、現在お仕事を休職されており、復職するに当たって、カウンセリングを受けて、自分の問題点をきちんと解消してから復職して下さい、と言われたとのことでした。
これまで3回ほど休職をされたことがあるため、これ以上休職しないで良いように、対策を立ててきて欲しいとのこと。

同じような話は他の方からも聞きます。完全に治して、問題なくフルタイムで働けて、再発しないようになったら復帰して欲しいとか。でもそれって過剰要求ですよね。風邪が治って仕事復帰するのに、2度と風邪を引かないようになってから復帰してくれって言ってるのと同じくらい、厳しい話だと思います。

ちなみに、一般的に要求される復職基準について、以下の記事でも紹介してますので参考にしていただければ。


ただ、確かに再発予防対策は重要です。しかし、冒頭に紹介した方のようなケースで少し気になるのは、世間一般の人がカウンセリングにどのようなイメージを抱いているのか、というところです。
数回、カウンセラーと話をしたら、再発予防対策が出来るような気づきがしっかり得られて、その人のメンタルに定着する、みたいに思われているのでしょうか?
カウンセリングの重要度が認識されて、カウンセリングを希望される方が増えてくるのはとてもありがたいのですが、どうも提供する我々と、希望される患者さんやご家族、会社の認識がすごくずれていると感じることが多々あります。

こちらの記事にも書きましたが↓


カウンセリングのイメージは筋トレです。コツコツ継続的にしていると必ず成果は出ますが、短期的にすぐ成果を得ようとするとかなり難しいです。
ですから、例えば3ヶ月間休職が出来るとして、その3ヶ月間でカウンセリングをして、しっかり再発予防対策をしてから復職して欲しい、というのは、3ヶ月間で腹筋を鍛えて腹筋を6つに割って欲しい、みたいな要望と近いと思ってます。はっきり言って無理です。

実際には、カウンセリングでも、話し合う内容を絞って短期間で成果を上げるようなプログラムもあります。これからは、そういうプログラムが人気が出るかもしれませんね。今人気の認知行動療法は、効果を高めるためにかなりプログラム化されたものもあります。ただ、実際は、プログラムをこなせばいいというほどの簡単なものではなく、カウンセリングを実施する人の力量だったり、受ける患者さんのモチベーションだったりもすごく大事になってくるようです。短期間で腹筋を6つに割るのも、めちゃくちゃ頑張れば、出来るかもしれない?みたいな感じでしょうか。

あとは、マンパワーの問題もあって、当院は今心理師が1人なので、頻繁にカウンセリングを受けたいと言われても、予約枠的に難しいという物理的な問題もあります。そうなると、リワークデイケアのように、集団で行う認知行動療法プログラムが一番効率的、ということになります。
(当院のリワークデイケアについての紹介も良かったらご覧下さい)。


カウンセリング、という言葉が一人歩きしないよう、カウンセリングの実態的なものが、筋トレのイメージくらい一般的に広まるようになって欲しいと感じます。