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当院ではレーシックは行っておりませんが、最近、診察中によく患者さまからレーシックのことで相談されることがあります。レーシックは言うまでもなく近視矯正の手術です。
まずはレーシックの手術方法ですが、簡単に説明すると以下の通りです。


角膜にフラップと呼ばれる薄いフタを作成して開き、エキシマレーザーを照射して実質のみを切除した後にフラップを元の位置に戻します。
要するに、角膜を薄くすることで光の屈折を変えて網膜に焦点を結ぶようにします。(近視とは光が網膜より前で焦点を結んだ状態です。)


マスコミではレーシックの良いところばかりが取り上げられていますが、レーシックを受けられた方の中には十分に満足されていない方もおられます。
そこで、普段、あまり取り上げられることのないレーシック術後の問題点を触れてみたいと思います。



①夜間視力の低下とグレア、ハロー
瞳孔径と照射される面積によって、夜間視力の低下やグレア、ハローという、にじみやまぶしさがおこることがあります。

ただし、最近はウェーブフロントという概念の治療が始まり改善はされてきています。しかし通常のレーザー照射量より増加するため、角膜が十分に厚くないとウェーブフロントレーシックを受けることができません。

②ドライアイ
レーシックは、フラップを作るときに三又神経を一部を切断してしまいますので、ドライアイがひどくなる場合があります。

③眼球の衝撃に対する脆弱化(弱くなること)
レーシック後は角膜がうすくなりますので、ボクシングなどの格闘技やラグビーなどを行っている方には不向きです。

この場合は、角膜の脆弱性およびフラップのずれなどの危険性を考えてエピレーシックを選択する方がいいと思われます。

④老眼になった時の近見視力の問題
40歳以上の方で軽い近視があり手元が楽に見えていたのものが、レーシックを受けて、急に手元に焦点が合いにくくなることもあります。

⑤将来の白内障手術の問題
レーシック後の目は、白内障手術で入れる眼内レンズの度数計算が難しくなります。
術後に角膜曲率半径が変形してしまうためで、術後のデータを使って眼レンズの度数を計算すると誤差が大きくなります。
対策としては、術前の角膜のデータを保存しておき、白内障手術を受ける際はそれを示せるようにしておきましょう。

⑥治療費の問題
健康保険の適応ではありませんので、以前より安くなってきたとはいえ施設によって違いはありますが片眼で20万前後します。

⑦合併症の問題
まれにフラップのしわや異物、フラップ下炎症などを起こす場合があります(1%前後)。視力に影響しない場合はそのまま様子を見ますが、視力に影響する場合は、しわを伸ばす処置を行ったり、異物を除いたり、洗浄したりします。重度の合併症は非常にまれですが、フラップ作成時にケラトームによるトラブルで不完全フラップを作成することがあります。この場合は、3ヶ月以上経過してから再手術を受けることになります。

近視矯正手術は、以前に比べて安全性は格段に高まっていますし、レーシックで使うエキシマレーザーに対する長期的な安全性も実証されているようです。
ただ、どんな手術でもそうですが100%安全かつ合併症のない手術は存在しません。失明するような合併症はおこりませんが、手術前の矯正視力は良好ですので、手術後さらに良好な視力がでなければ満足度は下がることになります。

患者さま自身が、手術前の説明会などでレーシックの安全性および合併症の予防法、対処法を聞き十分に理解および納得された上で、熟練したレーシック専門医による手術を受けていただくのが大切だと思います。