カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
先日、症状が改善し、通院を卒業された方がいました。当院のスタッフがずっと面談を担当して、困りごとを共感して聞き、必要に応じて助言をしておりました。
徐々に良くなられて、だんだんと通院間隔があいてきた頃、診察で「こういうときに、〇〇さん(面談担当スタッフ)や先生ならなんておっしゃるかな、って考えるんです」と話しておられました。
このように、診察や面談の場面以外でも、自分を支えてくれる人なら、こういう時になんて言ってくれるか、を考えられるようになると、メンタル不調の症状がよくなる方が多いように思います。
人生から、ストレスや悩み、困難を取り除くことは難しいです。むしろ人は、多少のストレスがある方が健康になるとも言われています。ストレスがあり、辛い思いをするときに、自分を理解し支えてくれる存在があることは、とても大事だと思うんですね。
でも、自分を支えてくれる存在に、すぐには話をできない場合もあります。そういった存在が身近にいて、毎日話ができる環境の人は、とても良い環境にあると言えますし、そういう人は余程の衝撃がない限りは、メンタル不調になりにくいと思います。
しかし、すぐにそういう人と話ができなくても、「あの人に話したらなんと言ってくれるかな?」と考えて、自分に思いやりのあるメッセージを言ってくれることを想像できるだけでも、温かい気持ちになれるんですよね。
メンタル不調になる人は、とにかく自分を責める方が多いです。自己肯定感が低く、自分のことが嫌い。なので自分に思いやりのあるあたたかい言葉やあたたかい気持ちを向けることがとても苦手です。
なので、私たちが患者さんにあたたかい言葉、あたたかい気持ちを向け、それを伝えていくことで、徐々に自分自身にそれを取り入れてくださると、とても嬉しく思います。
これは「カウンセラーの内在化」と言われているようです。最初は、通院し、カウンセリングを受けて、カウンセラーに支えてもらいます。カウンセラーは自分の外にいて、会いに行って助けてもらう存在です。でもずっと、カウンセリングを続けていると、そのうちに「こういう時に、あの人ならなんて言ってくれるかな」ということを考えられるようになっていきます。カウンセラーが自分のうちにいて、いつでもアクセスできる状態ですね。自分の中に、カウンセラーを取り込めた状態です。
最終的には、きちんと自分自身で、自分に思いやりやあたたかい気持ちを向けられるようになれるといいな、と思います。自分のことを大好きと思うのは難しいかもしれませんが、「まあ、悪くないかな」くらいに思えるようになっていただきたいなと思っています。
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投稿者: furujinmachi
精神科の薬物治療では、維持療法が大事になってきます。お薬を飲んで、症状が良くなっても、しばらくお薬を継続するんですね。これは内科とかではあまりないことだと思います。いや、内科でも高血圧とか、慢性的な病気は同じですかね。とにかく、しばらくお薬を続ける必要があります。十分な維持療法をせずにお薬をやめてしまうと、再発のリスクが高まり、些細なきっかけで、あるいは特にきっかけなく、症状が再発する可能性が高くなってしまいます。
ただ、じゃあその維持療法の期間をいつまでにするのか、そこが問題です。一応、病状に応じて、3ヶ月とか、半年とか、目安はありますが、どうしようかなと悩むことがあります。
ある程度の量のお薬を飲まれていると、急にやめてしまうと離脱症状が出ることがあります。離脱症状を再発と勘違いし、お薬は一生やめられないと思い込んでしまう方もいますので、離脱症状には注意が必要だと思っています。
すっかり良くなっていたのに、お薬を減らしたりやめたりした途端に悪くなり、お薬を再開したらすぐ良くなった、という場合には、病状の再発ではなくて、お薬を減量したりやめたりしたことによる離脱症状の可能性が高いです。その場合は、いったんお薬を減量前の量に戻し、症状が落ち着いてから、再び、もっとゆっくりとしたペースで減量していきます。または、離脱症状の出にくいお薬に一旦置き換えて、それからやめていくようにしたりと、工夫をします。
ただ、このような状況では、患者さんがお薬を減らすことをどう思っているか、どんなふうに受け止めているかがかなり重要になります。離脱症状であることを納得し、冷静に合理的に受け止めていられる方であれば、上記のような工夫でお薬の減量を進めていきます。しかし、離脱症状で嫌な思いをした、あるいは離脱症状を再発だと勘違いされている場合などでは、再びお薬を減らすことを怖がられる場合も結構あります。その場合は、無理に減らそうとすると、患者さんが「お薬を減らされることが不安」になり、結果として精神症状が悪化する、という現象が起きてしまいます。お薬を減らす場合は、減量することに患者さんがどれくらい前向きか、どれくらい不安な気持ちがあるか、そのこともとても大切になってきます。
お薬を減らすことに不安が強い場合は、通常の維持療法より長めに維持療法の期間を持ちます。また、患者さんの性格にもよりますが、飲み忘れなくきっちり飲まれているうちは、維持療法を継続することが多いです。患者さんが薬を飲むことで安心感を得ている場合が多いように思えます。だんだん飲み忘れが増えてきたら、減量のタイミングかな、と思います。(まだ維持療法を続けて欲しい期間に飲み忘れる方の場合は、もう少しだけ頑張って飲んでいて欲しいとお願いします)。
なので、一応の維持療法の期間を伝えつつも、患者さんの様子を聞きながら、いつまで続けるかを決めていっている感じです。大事なのは、薬をやめるかどうかではなく、日常生活がきちんと送れることだと思います。お薬を減らすことを頑張るあまり、日常が辛くなっては意味がありません。要はバランスなのかなと思います。
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投稿者: furujinmachi
前回、下位無意識に閉じ込められているトラウマを扱うのに、上位無意識の力を借りることについて少し書きました。
トラウマケアをするための心理療法として、インナーチャイルドセラピーという手法があります。これは、子ども時代のトラウマで傷ついた子どもが、自分の心の中にいて、その子ども(インナーチャイルド)をケアしていく、という心理療法になります。
ただ、その人自身が、子どもをケアできるほどの状態でない場合、まず、その人自身が子どもをケアできるだけの自己肯定感だったり、自尊心だったりを回復する必要があります。本当の意味で、自己肯定感が回復し、自尊心が持てるようになるために、インナーチャイルドをケアしていかないといけないのですが、車輪の両軸のように、どちらも大事というか。インナーチャイルドのケアをするために、大人の自分がまずその力を強め、そしてインナーチャイルドのケアをする。そうしたらまた大人の自分に力がつく、その繰り返しになります。
大人の自分に力をつける作業が、上位無意識の力を借りることになると思います。まず、自分自身に必要な要素を、イメージの中で取り入れていくようにします。
何が必要かは、その人によって違います。純粋にエネルギーを必要とする人もいますし、リラックスできること、自分にパワーがあると信じること、愛情、忍耐力、意志の力、清明さ、いろんな要素を必要とすることがあります。今、たちまち健康であまり困っていない人でも、「もう少し自分を律せるといいなあ」とか「もう少し体力があるといいいなあ」とか「もう少し自己主張できるといいなあ」とか、そんなふうに思うこともありますよね。そういう時にも、上位無意識の力を借りて、イメージによって得たいものを取り入れるようにしていくことが可能です。
カウンセリングは筋トレ、と紹介したことがありましたが、
イメージ療法も筋トレです。日々、コツコツと行なうことが大切です。徐々に自分の中にイメージが定着したり、イメージが変化したりしていきます。
朝晩2回、3分程度のイメージから始めるので良いと思います。イメージを行って、気づいたことや感じたことを日記やメモとして書くことが推奨されます。そのメモは見直すこともあれば、見直さないこともあります。でも、習慣にしておくと、ある時ふっと気づいたりすることが出てきます。
イメージのやり方も結構自由でいいんですよね。でも何でもいいと言われたら困る方も多いので、いくつか典型的なイメージ法というのがあります。最近では、ネットでいろいろな音声が入手できるので、瞑想系のイメージ誘導文を音声で聞くのが簡単で良いと思います。私は自分でボイスメモに自分の音声を入力して、それを聞きながらやっています。目を閉じてイメージする方がイメージしやすいので、文章を目で読んでするよりは、音声を聞きながらする方がやりやすいと思います。
次回、私がやっている方法も含めて、イメージ誘導文の例をいくつか提示してみたいと思います。