先日、症状が改善し、通院を卒業された方がいました。当院のスタッフがずっと面談を担当して、困りごとを共感して聞き、必要に応じて助言をしておりました。

徐々に良くなられて、だんだんと通院間隔があいてきた頃、診察で「こういうときに、〇〇さん(面談担当スタッフ)や先生ならなんておっしゃるかな、って考えるんです」と話しておられました。

このように、診察や面談の場面以外でも、自分を支えてくれる人なら、こういう時になんて言ってくれるか、を考えられるようになると、メンタル不調の症状がよくなる方が多いように思います。

人生から、ストレスや悩み、困難を取り除くことは難しいです。むしろ人は、多少のストレスがある方が健康になるとも言われています。ストレスがあり、辛い思いをするときに、自分を理解し支えてくれる存在があることは、とても大事だと思うんですね。

でも、自分を支えてくれる存在に、すぐには話をできない場合もあります。そういった存在が身近にいて、毎日話ができる環境の人は、とても良い環境にあると言えますし、そういう人は余程の衝撃がない限りは、メンタル不調になりにくいと思います。

しかし、すぐにそういう人と話ができなくても、「あの人に話したらなんと言ってくれるかな?」と考えて、自分に思いやりのあるメッセージを言ってくれることを想像できるだけでも、温かい気持ちになれるんですよね。

メンタル不調になる人は、とにかく自分を責める方が多いです。自己肯定感が低く、自分のことが嫌い。なので自分に思いやりのあるあたたかい言葉やあたたかい気持ちを向けることがとても苦手です。

なので、私たちが患者さんにあたたかい言葉、あたたかい気持ちを向け、それを伝えていくことで、徐々に自分自身にそれを取り入れてくださると、とても嬉しく思います。

これは「カウンセラーの内在化」と言われているようです。最初は、通院し、カウンセリングを受けて、カウンセラーに支えてもらいます。カウンセラーは自分の外にいて、会いに行って助けてもらう存在です。でもずっと、カウンセリングを続けていると、そのうちに「こういう時に、あの人ならなんて言ってくれるかな」ということを考えられるようになっていきます。カウンセラーが自分のうちにいて、いつでもアクセスできる状態ですね。自分の中に、カウンセラーを取り込めた状態です。

最終的には、きちんと自分自身で、自分に思いやりやあたたかい気持ちを向けられるようになれるといいな、と思います。自分のことを大好きと思うのは難しいかもしれませんが、「まあ、悪くないかな」くらいに思えるようになっていただきたいなと思っています。