精神科の薬物治療では、維持療法が大事になってきます。お薬を飲んで、症状が良くなっても、しばらくお薬を継続するんですね。これは内科とかではあまりないことだと思います。いや、内科でも高血圧とか、慢性的な病気は同じですかね。とにかく、しばらくお薬を続ける必要があります。十分な維持療法をせずにお薬をやめてしまうと、再発のリスクが高まり、些細なきっかけで、あるいは特にきっかけなく、症状が再発する可能性が高くなってしまいます。

ただ、じゃあその維持療法の期間をいつまでにするのか、そこが問題です。一応、病状に応じて、3ヶ月とか、半年とか、目安はありますが、どうしようかなと悩むことがあります。

ある程度の量のお薬を飲まれていると、急にやめてしまうと離脱症状が出ることがあります。離脱症状を再発と勘違いし、お薬は一生やめられないと思い込んでしまう方もいますので、離脱症状には注意が必要だと思っています。

すっかり良くなっていたのに、お薬を減らしたりやめたりした途端に悪くなり、お薬を再開したらすぐ良くなった、という場合には、病状の再発ではなくて、お薬を減量したりやめたりしたことによる離脱症状の可能性が高いです。その場合は、いったんお薬を減量前の量に戻し、症状が落ち着いてから、再び、もっとゆっくりとしたペースで減量していきます。または、離脱症状の出にくいお薬に一旦置き換えて、それからやめていくようにしたりと、工夫をします。

ただ、このような状況では、患者さんがお薬を減らすことをどう思っているか、どんなふうに受け止めているかがかなり重要になります。離脱症状であることを納得し、冷静に合理的に受け止めていられる方であれば、上記のような工夫でお薬の減量を進めていきます。しかし、離脱症状で嫌な思いをした、あるいは離脱症状を再発だと勘違いされている場合などでは、再びお薬を減らすことを怖がられる場合も結構あります。その場合は、無理に減らそうとすると、患者さんが「お薬を減らされることが不安」になり、結果として精神症状が悪化する、という現象が起きてしまいます。お薬を減らす場合は、減量することに患者さんがどれくらい前向きか、どれくらい不安な気持ちがあるか、そのこともとても大切になってきます。

お薬を減らすことに不安が強い場合は、通常の維持療法より長めに維持療法の期間を持ちます。また、患者さんの性格にもよりますが、飲み忘れなくきっちり飲まれているうちは、維持療法を継続することが多いです。患者さんが薬を飲むことで安心感を得ている場合が多いように思えます。だんだん飲み忘れが増えてきたら、減量のタイミングかな、と思います。(まだ維持療法を続けて欲しい期間に飲み忘れる方の場合は、もう少しだけ頑張って飲んでいて欲しいとお願いします)。

なので、一応の維持療法の期間を伝えつつも、患者さんの様子を聞きながら、いつまで続けるかを決めていっている感じです。大事なのは、薬をやめるかどうかではなく、日常生活がきちんと送れることだと思います。お薬を減らすことを頑張るあまり、日常が辛くなっては意味がありません。要はバランスなのかなと思います。