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投稿者: furujinmachi
先日来られた患者さんの話ですが、現在お仕事を休職されており、復職するに当たって、カウンセリングを受けて、自分の問題点をきちんと解消してから復職して下さい、と言われたとのことでした。
これまで3回ほど休職をされたことがあるため、これ以上休職しないで良いように、対策を立ててきて欲しいとのこと。
同じような話は他の方からも聞きます。完全に治して、問題なくフルタイムで働けて、再発しないようになったら復帰して欲しいとか。でもそれって過剰要求ですよね。風邪が治って仕事復帰するのに、2度と風邪を引かないようになってから復帰してくれって言ってるのと同じくらい、厳しい話だと思います。
ちなみに、一般的に要求される復職基準について、以下の記事でも紹介してますので参考にしていただければ。
ただ、確かに再発予防対策は重要です。しかし、冒頭に紹介した方のようなケースで少し気になるのは、世間一般の人がカウンセリングにどのようなイメージを抱いているのか、というところです。
数回、カウンセラーと話をしたら、再発予防対策が出来るような気づきがしっかり得られて、その人のメンタルに定着する、みたいに思われているのでしょうか?
カウンセリングの重要度が認識されて、カウンセリングを希望される方が増えてくるのはとてもありがたいのですが、どうも提供する我々と、希望される患者さんやご家族、会社の認識がすごくずれていると感じることが多々あります。
こちらの記事にも書きましたが↓
カウンセリングのイメージは筋トレです。コツコツ継続的にしていると必ず成果は出ますが、短期的にすぐ成果を得ようとするとかなり難しいです。
ですから、例えば3ヶ月間休職が出来るとして、その3ヶ月間でカウンセリングをして、しっかり再発予防対策をしてから復職して欲しい、というのは、3ヶ月間で腹筋を鍛えて腹筋を6つに割って欲しい、みたいな要望と近いと思ってます。はっきり言って無理です。
実際には、カウンセリングでも、話し合う内容を絞って短期間で成果を上げるようなプログラムもあります。これからは、そういうプログラムが人気が出るかもしれませんね。今人気の認知行動療法は、効果を高めるためにかなりプログラム化されたものもあります。ただ、実際は、プログラムをこなせばいいというほどの簡単なものではなく、カウンセリングを実施する人の力量だったり、受ける患者さんのモチベーションだったりもすごく大事になってくるようです。短期間で腹筋を6つに割るのも、めちゃくちゃ頑張れば、出来るかもしれない?みたいな感じでしょうか。
あとは、マンパワーの問題もあって、当院は今心理師が1人なので、頻繁にカウンセリングを受けたいと言われても、予約枠的に難しいという物理的な問題もあります。そうなると、リワークデイケアのように、集団で行う認知行動療法プログラムが一番効率的、ということになります。
(当院のリワークデイケアについての紹介も良かったらご覧下さい)。
カウンセリング、という言葉が一人歩きしないよう、カウンセリングの実態的なものが、筋トレのイメージくらい一般的に広まるようになって欲しいと感じます。
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投稿者: furujinmachi
精神科にかかり出した患者さんのフォローとして、薬剤師さんにしていただいて助かるのは残薬チェックです。患者さんがこれまで処方された薬を、どれくらい飲み残していらっしゃるか。それはすなわち、患者さんが、医療機関から処方されたお薬を、どれくらい指示通り内服されているかの指標になります。
お薬は、きちんと飲んでいることを前提に効果が期待されます。お薬を飲んでいるのに、思ったより効果が出ないな、というときに、お薬の内服状況が良くない場合という可能性が出てきます。それに気づかず、お薬が効いてないなら量を増やしましょう、種類を増やしましょう、ということになると、処方される薬がどんどん増えてしまう、ということになってしまいます。
そこで、実は患者さんがあまりお薬を飲んでおらず、結果として残薬が多いということがわかると、対応が変わってきます。患者さんは、お薬を飲んでいないということを医者に伝えた時に、医者がどのような反応をするかを心配して、医療機関には正直に言わない事があります。でも、薬局で確認されると、「実はまだお薬が1週間分残っている」とか、「今回はいらないくらい残っている」とか、そういったお話をしていただけることがあるようです。
なので、薬局から「この薬は残薬がこれだけあるので処方をこれだけ減らして欲しいとのことですが」といった連絡があると、「おや、患者さんはお薬をきちんと飲んでいないんだな」ということに気づけます。
お薬は、だいたい目安として、9割程度内服していただけていたら、効果は期待できます。ですので、2週間ごとにくる患者さんが、1、2回程度の飲み忘れをしている程度は大丈夫ということになります。人間ですから、うっかり忘れることはあります。
しかし、それ以上に飲み残しがある場合は、どうするか検討する必要があります。
まず、そもそもその薬を内服する必要があるかどうかを検討します。例えば睡眠薬を処方していて、その飲み残しが多い場合。患者さんがすでに薬を飲まずとも眠れるようになっているなら、お薬を減らす、やめるという選択肢が出てきますよね。
でも、できればもうしばらく、しっかりお薬を飲んでいただきたい場合だと、どうするか。まず、なぜお薬を定期的に飲めていないのか、その理由を把握する必要があります。単純にうっかり忘れてしまう場合や、定期的に内服しなければならないのを知らずに、調子の悪い時だけ飲めばいいと思っていた場合、飲んだ方がいいのは分かっているが、面倒で飲まずに寝てしまう場合だったり、内服した時の副作用がしんどくて、ついつい飲み飛ばしてしまう場合など、色々な理由があります。その理由に応じて、対策を立てていく必要があります。
・単純な飲み忘れ→飲み忘れない工夫を一緒に考える
・定期内服だと知らなかった→継続内服で効果が出ることを説明
・内服が面倒→内服回数や処方薬の数を減らす、注射などに切り替える
・副作用が気になる→副作用対策をする、薬を変更する などなど
また、さまざまな理由で、薬をやめたいとなった時に、自己判断で中断することは患者さんに負担をかける場合があります。前回の記事に書きました、離脱症状が出るからです。ですから、お薬をやめたい場合も、主治医に相談するよう伝えていただきたいのです。
精神科のお薬に慣れていない薬剤師さんでしょうか、患者さんに対して「こんなにお薬が出てるんですね」といったお話をされる方がいらっしゃるようです。そのように言われると、患者さんは不安になり、「お薬をやめた方がいいのだろうか」と考えて、自己中断に至る場合があるようです。患者さんもお薬を飲むことに不安を感じながら、治療を継続されています。「お薬を頑張って内服されているのですね、何か不安な点はありませんか?」といったように、患者さんが安心できるような声かけいただけるとありがたいなと思います。
実際の講演では事例を提示しながら話してみようと思います。
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投稿者: furujinmachi
当院は、はじめて来られる方は、看護師が最初に聞き取りをさせてもらっています。どういうことで相談に来られたのか、というところから始まり、これまでの経緯を聞かせていただいています。
精神科は、患者さんからの情報が大事です。とくに、以下のような情報があると、非常にありがたいです。
・何に困っているのか。病院に来ようと思ったきっかけは何か。
・自分で病院に来ようと思ったのか、誰かに勧められたから来たのか。
・その困りごとはいつから始まったのか。きっかけが何かあったか。
・困りごとに対して、自分で何か対処を試みたか。
・今までに、精神科の治療を受けたことがあるか。
・身体的な病気で何か治療を受けているか。
・今、誰と住んでいるか。家族や同居人は受診のことを知っているのか、あるいは何らかの支援が受けられるか。
・仕事/学校に在籍している人は、行けているのか。
・そうでない人は、何らかの社会参加をしているのか。
・受診にあたり、希望することは何か。診断書が欲しい、検査が受けたいなど特別に希望することはあるか。
診療所によっては、直接医師が診察を行うところもあると思います。患者さんからすると、医師にだけ1度話せばいいので、それはそれで負担が少ない点もあっていいと思います。
しかし、いきなり初対面の医師に、これまでのことを落ち着いて話すという作業はハードルが高い場合もあります。最初は看護師が聞き取った方が、話しやすい場合もあると思います。
また、昨今の、精神科/心療内科の予約の取りにくさはとても問題だと思っています。困っている人が、すぐ受診できない。この問題をどうにかしたいのですが、精神科/心療内科の初診の方は、時間を必要とすることが多いのです。何に困ってこられたのか、その状況を詳しく伺わないと、何をしたらいいのかが決まりませんので、最初の情報収集が重要になります。それが5分で終わることはまずありません。短くて20分、長いと1時間くらいかかります。
そして、通院されている患者さんも多い。そうなると、もし医者一人で聞き取りからすべてやっていると、初診の方は、1日1人みれるかどうか、ということになると思います。なので、医療機関によっては、初診の枠をかなり少なくしているところもあると思います。そのため、初診の予約が取りにくくなっています。
もう少し、困っている方に早く対応したいという思いもあり、当院ではスタッフを増やして、分業化して、1日にみる初診の患者さんの人数を増やしてます。それでも1日4人が上限かな、と思います。
精神科/心療内科の受診を迷ってらっしゃる方は、まずは、地域の精神科/心療内科の新患受付状況を確認してみてください。すぐに予約が取れないことが多いので、早めに行動されることをお勧めします。
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投稿者: furujinmachi
「こんなことで病院に来ていいのかどうか迷いました」と、初診の時におっしゃる患者さんがいます。これって、精神科や心療内科に独特の話なのでしょうか?
自分のことに置き換えて考えてみると、例えば歯医者さんとかは、歯が痛くなくても、定期健診でも行きます。私は割と虫歯になりやすい方なので、かかりつけの歯科医院から、定期健診の案内が来たら、診てもらいに行ってます。虫歯が出来てても、自覚症状がないうちに治療してもらえた方が、治療も大事にならないし、こちらも楽です。
あと、年に1回、内科検診も行っています。長く元気で働くためには、メンテナンスは大事ですよね。
精神科・心療内科に関しては、メンタル不調を経験した人が、維持療法として、定期的に通院を継続される方はもちろんいらっしゃいます。しかし、メンタル不調を経験していない人が、予防的に受診する、というパターンは経験したことがないです。冒頭のようにおっしゃるような方でも、何か困りごとが出来たから、病院に来ているので。
ただ、病院に来られて、色々とお話を聞いて、お薬を少しお出ししておきましょうか、次回はいついつ来て下さい、といった話をさせてもらった後に、「先生、私は病気ではありませんよね」とおっしゃる方がいます。私の頭の中は「?」ってなってしまうのですが。いや、病気だからお薬を出すんですけど…病気じゃないなら薬なんかいらないですよね?みたいな。
でもこれって、「精神科の病気」に対するイメージの問題がありますよね。精神科の病気になると、もう治らない、社会復帰できない、みたいな。
精神科の病気でも、内科の病気と同じで、病気の種類も重症度も人それぞれです。放置していたら悪化するところを、早めに来てくれて、悪化せずに改善することもあります。精神科の病気の多くが、内科の病気と同じように、治療を早く始めた方が早く回復するのです。ですから、メンタルの不調を感じたら、早めに病院に来てくれた方が、本来はいいと思うんですよね。
実際、「これって病気かな?自分の怠けかな?」って悩むレベルになっているときは、たいてい病気になっています。病院に来られて、お話を聞かせていただいて、それで、「それはあなたの怠けですね」ってなるケースはほとんどありません。
でも、「自分の怠け」と言われるのは辛い方もいるし、病気と言われるのが怖い方もいる。そうなってくると、それは「精神科の病気」に対する誤解の部分があるのかなと思います。
精神科の病気の方でも、確かになかなか改善せず、長く通院していただいて、長くお薬を試していただく方もいます。でも、お薬を飲みながらでも日常生活を支障なく過ごしておられる方もいます。また、短期間の治療で改善し、通院をやめる方もいます。そのあたりは、内科の病気と同じで、風邪だったり、糖尿病だったり、癌だったりで、重症度も通院期間も全然違ってくると思うんですよね。
なので、精神科に来られて、お薬が出たときには、いわゆるこころの風邪くらいにはなっていると思います。でも、それをどう伝えるかは、相手の受け止め方に応じて工夫する必要があるのだろうなと思ってます。しっかり病名として伝えてもらった方が納得できる人もいるでしょうし、はっきり病名を言われるとショックを受けて余計辛くなる人もいるでしょうし。何度か通院いただき、通院することになれてこられた頃にお伝えする方が負担が少ない場合もあると思います。
冒頭の話に戻ると、個人的には、あまり我慢せずに、「なんだか調子が良くないな」と感じたら、病院受診を検討してもらえると良いのではないかと思っています。
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投稿者: furujinmachi
薬剤師さんの勉強会の資料作りについての記事の続きです。『「こころの不調」に気づく〜うつ病のサインとその対応〜』についてです。
以下前回の記事です。
患者さんが精神科にかかりだしたときのフォローについて。精神科のお薬は門前薬局で受け取られることもあると思いますが、もともとのかかりつけ薬局で受け取られることもあると思います。
患者さんがどのくらいお薬のことを理解されているか、医師からなんて説明されているかを聞いていただけるとありがたいです。こちらも説明はしていますが、お薬が複数になると患者さんは誤解されていることもあります。理解が不十分な部分は補足していただけると助かります。
精神科でお薬を出す場合、メインの薬と、サブの薬がある場合があります。絶対飲んでおいて欲しい薬と、ある程度自己調整してもらっていいお薬です。頓服で出ているお薬は、自己調整してもらっていい場合が多いですよね。そのあたり、患者さんは誤解されていることが多いように思います。
精神科のお薬は、飲み出してすぐ効果が出ないものが多いです(それでも最近の薬は効果発現が早くなったと思います)。鎮痛剤みたいに、飲んだらすぐ効くと思われていると、効果がないと思って自己中断につながってしまいます。飲み続けることでじわじわ効果が現れますよ、とは説明するようにしていますが、初診はとにかくいろんなことを説明しますので、患者さんが覚えきれないこともあると思います。こちらが言い忘れてしまうこともあります。なので、そのあたり補足していただけるとありがたい。
副作用は出る場合は内服直後に出ることが多くて、なので最初は副作用は出たのに効果は出ない、という状態になるんですよね。でも飲み続けると副作用は軽減し、効果はじわじわ出てきます。ですので出来れば飲み続けてみていただきたい。薬はなるべく副作用が出ないように少量から開始するようにしていますが、どうしても体質的に強く副作用が出てしまう人がいます。そういう場合は一旦中止し、次回受診時に相談するようお願いしています。
患者さんの体質の問題もあったりするので、私はかなり薬を細かくして出すことがあります。1/8錠まで割ってもらうことがあります。同じようにしている精神科医もいるかもしれませんので、「この量はなんだ?」と思うことがあっても、そういう処方もある、と知っておいていただけると助かります。
あと、精神科の薬は、離脱症状が出るものが比較的多いように思います。ある程度の量を飲んでいて、急に中止すると、反跳現象が出てしまうのです。脳が、薬がある状態に慣れていて、急に薬が無くなると反動が起きてしまうのですね。めまい、吐き気、頭痛、冷汗、ふるえ等の症状がよく見られます。不眠になる人もいます。
離脱症状を防ぐために、お薬をやめるときは徐々に減らしていきます。なので、調子が良くなって薬をやめたいな、と思ったときも相談していただけるとありがたいです。やめたときにしんどくならないように少しずつ減らしていきます。
そういった精神科の薬の特徴についての説明を、薬剤師さんから補足していただけるとありがたいなと思います。
このシリーズはまだもう少し続けます。
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投稿者: furujinmachi
私は元々カウンセラーになりたいと思っていたのですが、医学部に入学できたため、精神科医になりました。元々カウンセラー志望だったこともあり、医者になってからも心理療法のほうが勉強していて面白いと感じることが多いです。
しかし、せっかく医者になったならば、医者でなければ出来ないことも頑張りたい。医師でなければ出来ないことの一つが、お薬を出すことだと思います。
大学時代に薬理学の授業がありましたが、私は薬理学がけっこう好きで、一生懸命勉強しました。その流れで、医者になってからも、新しい薬が販売になると、どんな作用機序のどういう薬なのかを知ることに興味が強いです。
薬物の開発というのは本当にすごくて、私が医者になってからこの25年の間、精神科の薬は大きく変わりました。より効果が早く、より副作用が少なく、安全な薬が増えていきました。
当院には常勤の公認心理師がいて、認知行動療法やカウンセリングをしています。私自身も公認心理師の資格を持っていて、日々心理療法の勉強をしております。認知行動療法も実施できます。そのような特徴のある診療所のため、「できれば薬を使いたくない、カウンセリングだけで治してほしい」という希望の方も来られます。
しかし、実際にはそれはかなり難しい場合があります(そしてなぜか、カウンセリングだけでは難しい人ほど、カウンセリングだけで治したいと希望される傾向があります)。その方の病気の種類によっては、薬物治療を行わずに治療をするのは現実的ではない、と判断せざるを得ないというか。例えば、高熱を出している人がいて、それを本人の治癒力を高めることだけでなんとか治してほしいと言われたら、高熱の原因とその方の体力によっては、可能な場合もあるかもしれませんが、高熱を放置することで非常に危険に晒されることになると思うんですよね。それと同じで、まずは今の精神的苦痛・苦しみをお薬で緩和しないことには、カウンセリングに取り組むことすら難しい場合があります。
あと、カウンセリングでの治療は、時間がかかることが多いです。コツコツと行う、筋トレのようなもので、成果を感じるのにある程度の時間を要します。なので、苦痛感があまりにも強いと、カウンセリングでの成果が出るのが待てない時もあると思います。
また、薬物治療で改善する症状と、カウンセリングや心理療法で改善する部分は異なります。それぞれの治療で、どの部分を治療し、どの部分を補うのか。その見立てが重要になってきます。
あとは、薬物治療の中でも、「漢方薬」という選択肢もあります。漢方薬でも、精神症状に効くものがいくつかあります。西洋医学的な安定剤、向精神薬に抵抗のある方でも、漢方薬なら飲んでもいい、という方がいらっしゃいます。なので、漢方薬も上手に利用しながら薬物治療を行うと、選択肢が広がり対応できる幅が広がります。
知識のブラッシュアップが大変ではありますが、精神科のお薬はまだまだ新しいものも開発されています。新しいお薬の知識も集めながら、心理療法との組み合わせも考えながら、漢方薬に対する知識も広げていきたいと、欲張ったことを日々考えています。
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投稿者: furujinmachi
昨年縁あってサイコシンセシスという心理療法の勉強会に参加し、膨大な参考図書を読みました。ずいぶん前に、別の心理療法の勉強会でも紹介され、そのときにも参考図書を何冊か読んだのですが、とにかく難しかったという印象で、あまり理解できないまま、いつか勉強しようと思って放置していたんですよね。
今回学んで、理解できた部分と、やはりまだ難しい部分とありますが、少しずつアウトプットしていきたいと考えています。
サイコシンセシスとは何か、という基本的な話からになりますが、正確な定義的なことを知りたい場合は検索されるなりchatGPTなりに聞いていただければよいかと。このnoteでは、私なりに理解した内容を書いていきます。
サイコシンセシスの創始者であるアサジョーリという方は、精神分析の創始者であるフロイトから、精神分析をまず学ばれたそうです。精神分析も、当時の精神医学界では画期的な治療法で、いろいろな精神医学的な症状が、人間の無意識の問題から派生している、と考え、無意識を意識化していくことで、それらの症状の治癒を目指したものになります。
無意識に抱えている問題を意識化する作業というのは本当に大切で、私たちは日々、多くのことを、無意識的に、自動操縦的に行っています。それでうまくいくこともたくさんあれば、そのせいでうまくいかないこともたくさんあります。自分の中で何が起こっていて、どうしてそのような行動、症状につながっているか、それを意識し理解するだけで問題が軽減することがよくあります。
この「無意識の意識化」という取り組みは、いろんな心理療法でやり方、言い方を変えていろいろと行われています。サイコシンセシスも、その点はとても重要視しています。ただ、サイコシンセシスでは、カウンセリングの目的をそこにとどめず、もっと人が成長するためには何が必要なのか、そういった視点が強く出ています。
なので、何か悩みや問題を抱えている人がいて、その悩みや問題を解消するための方策がカウンセリングだとすると、サイコシンセシスは、悩みや問題を解決することだけではなく、さらにその人が人間として成長を助けるための手法を構築している、と言えるかと思います。そのため、サイコシンセシスでは、カウンセリングを「ガイディング」と表現し、カウンセラーは「ガイド」と呼ばれます。「ガイド」と呼ばれるあり方とは、その人の人生を伴走し、ともに歩んでいくイメージになると思います。
とはいえ、心理療法として、カウンセリングとしてサイコシンセシスのテクニックを利用する場合は、その人の悩みや問題をどう取り扱うか、の部分が重要視されると思います。しかしそれでも、問題を抱えている人が、人生をどう歩んでいくのかという大きな視点を持ってみていく、ということにサイコシンセシスの特徴や意義があるように感じます。
定期的にこのシリーズは続けていきます。
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投稿者: furujinmachi
親子、夫婦などご家族内でメンタル不調者が複数人いらっしゃって、診療所にかかることもあると思います。
最初のうちは、患者さんのご家族を新たに担当して診察することはお断りしてたんですよね。
というのも、主治医は患者さんの味方でいるべき、というスタンスでいましたので、家庭内で何かストレスを抱えている場合に、どちらの味方をしたらいいか分からない事態を避けたかったんですよね。なのでそのリスクを避けるために、すでに通院されている方のご家族はみない、というルールにしていました。
今でも、明らかに大きな問題を抱えている家族同士はみないことにしています。例えば、現在すでに離婚協議中の夫婦をお二人とも患者として担当する、という事態は避けてます。ときどき、そのような状況下で、配偶者を診て欲しいと依頼されることってあるんですよね。でも実際のところそれって難しい。配偶者の方にもし精神科治療が必要なのであれば、その方の味方をしてくれる主治医にかかった方が良いと思うんですよ。私はどうしても、すでに通院されている患者さんの味方になってしまうので。
しかし、そこまで揉めていない、いわゆる普通の関係性のご家族までお断りするのは過剰防衛かな、と考えるようになりました。自分が信頼している医者に、自分の家族を診て欲しいと思うのは、ごくまっとうな願望だと思います。
ただ、お互いの診察内容は私からは話さないということとし、できるだけ家族が来ていることを意識せず、その人一人を診ている感覚で診察に当たるようにしておりました。そしてそのことを了承してもらって、対応しておりました。実際はそれもなかなか難しいところがあって、どうしても、「お母さんはこの前ああおっしゃってたなあ」とか「お姉ちゃんはこの前こんなこと話してたなあ」とかを思い出しながら診察することもあります。ある意味、患者さんの話だけを聞いてあげたいのに、バイアスがかかってしまうというか、先入観が入ってしまうというか。そういうのも避けたかったので、最初は断ってたわけなのですが。
でも、最近スキーマ療法という治療法のプログラムを視聴して、「家族を家族として診る」という視点をもっと意識するようになってきました。家族みんなを支援することが、結果それぞれ個人を支援することにつながる。誰にとってもプラスになるような、そんな支援が出来れば、双方へのメリットになる、という考え方ですね。喧嘩の仲裁に入るにしても、どちらが正しくてどちらが悪い、という解決ではなくて、双方が納得する、あるいは双方が折り合いがつくところが見つけられるといいし、そもそも仲裁するのではなく、どちらの気持ちもくみ取り共感することは可能なのかなと思います。
これは、具体的に何をするということでは無くて、治療をする私自身のスタンスの問題というか。この「家族全体」にとって、何の支援が望ましいのだろうか?という視点を意識したいと思っています。
しかし、ご家族の状況によっては、やはり個別性を重要視した方が良い場合もあると思います。ご家族を診させてもらえるかどうか、状況を確認ししっかり見定めていきたいと思います。