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19 May 2025 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
先日、大学の心理学科に通っている学生さんから聞いたのですが、大学院への進学がすごく大変になっているとのこと。聞けば、実習協力医療機関を探すのに苦労しており、実習が出来ないため、たくさんの学生さんを受け入れられない状況になっているようです。

カウンセラーという職種は、長らく「臨床心理士」という資格が重視されておりました。しかし、それは国家資格ではなかったんですよね。正式には、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会という協会が認定した、いわゆる民間資格でした。ただし信頼性・専門性が高く、心理職の代表的資格として広く認知されているものではあったんですよね。そして、それを取得するのに、原則大学院まで進学することを要件としていました。民間資格なのに、かなりの学歴を要求する資格だったんですね。

ただ、これだけカウンセラーという仕事の重要性が増してきているのに、国家資格ではないことが問題視され、公認心理師という資格が2017年に生まれました。しかし、臨床心理士とは重なる部分と異なる部分とがあり、現在、心理学科の大学の多くは、臨床心理士と公認心理師の両方の資格が取れるようにカリキュラムを組んでいます。
特に、公認心理師の資格取得のためのカリキュラムになってから、医療機関での実習が重要視されているようです。しかし、まだ医療機関の方が、心理士さんの実習に十分対応できないようで、協力医療機関を確保するのに苦戦をしいられている、ということです。

私も地元の大学より依頼を受け、ここ数年大学院生の実習生を1年間で3人受け入れています。リワークデイケアや私の外来診察、心理検査、新患の予診の見学などをしてもらっています。

大学で心理学科を選択して入学された方の多くは、カウンセラーになることを希望されていると思うんですよね。カウンセラーに興味のない人が心理学科に来るとは思い難い。しかし、国が認める公認心理師だったり、あるいは民間資格ながら強い信頼性を持つ臨床心理士の資格を取るためには、大学院まで進学する必要があり、その大学院が狭き門になりつつある、という状況なのです。

ただし、大学院に進学できない人でも、公認心理師になれる道があります。いわゆる「Bルート」と言われるもので、指定された施設で2年以上(通常は3年間)実務経験を積むことで、公認心理師の受験資格を得られるというものです。
しかし、この指定施設が極めて少ないのが現状です。医療機関でこの指定をとっているのは、全国で1桁です。Bルートでの受験者は全体の1%未満という状況のようです。

これから、公認心理師の必要性はどんどん大きくなっていくと思います。なんとか、当院も指定施設として認定していただけないか、これから色々体制を整えてみたいと考えています。

医療スタッフの研修は、一筋縄でいかず、コツコツと育てていく必要があります。当院に実習生が来られている時には、ぜひ実習生の育成を見守っていただけるとありがたいです。
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投稿者: furujinmachi

講演会で聞いた話ですが、精神科治療の状況というのは日本と外国では違いがあるようです。それぞれの善し悪しもあるので一概にどこの国がいいとは言えないところもありますが、気になったのは、1日に診る患者さんの人数です。

ヨーロッパ諸国では1日あたりの外来患者数は10人未満の国が多く、アメリカでは地域により差がありますが、6人から25人とのことでした。精神科医の不足が懸念されているアフリカ諸国のデータでは、ナイジェリアが1日50人とのこと。

もっとも、イギリスは日本と医療制度が違い、イギリスで精神科の専門医にかかるためには3年程度の待機期間があるとのこと。それもそれで問題だな、とも思います。

しかし、この人数の比較だけでみると、日本では、精神科医が1日に診る患者さんの数が相当多いことになります。1日10人しか診ていないクリニックなんて聞いたことがありません(完全自費診療とかならあるかもですが)。それだけ毎日相当の数の患者さんを診ていて、その上で新患の予約が取りにくいということは、単純に需要と供給のバランスが成り立っていないということになります。私も1日の診察人数が50人を超えることはけっこうありますので、「ナイジェリアと一緒か…」と思うと、少し考えさせられるものがあるというか(ナイジェリアの医療事情を詳細には知りませんので、偏見や誤解はあるかもしれません)。

もし、ヨーロッパ諸国のように、1日数人の患者さんを診察するスタイルならば、今の日本の精神医療の質は全然違うものになると思います。
日本の精神科医療が、たくさんの患者さんを診るようになっているのは、精神科治療が入院中心だったときの名残であるとのことも、そのときの講演会で伺いました。また、精神科の診察を希望する患者さんの増加数に対して、精神科医の数が足りていない問題だったりとか、そもそも医者の人数も、地域によってかなりバラツキがありますので、医者偏在の問題とかもあると思います。

これからの精神科医療をどうしていけばいいのか、そういった大きな問題は、厚生労働省や医師会などでも議論されているところと思います。しかし、大きな改革はすぐには難しいので、なんとか今の体制で出来ることを考えていく必要があると思います。

先日、研究機関のアンケート調査に協力をしたのですが、そのアンケートでは、医師以外のスタッフによる業務分担の状況確認がありました。これからは、精神科でも業務分担だったり、いろんなスタッフと協力して、患者さんの満足度を高めていく流れになるのではないかと思います。しっかりと診察時間を確保することが難しい状況でも、お困り事に少しでも対応できるよう工夫していこうと思います。
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投稿者: furujinmachi

サイコシンセシスという心理療法について書くシリーズです。今日は、無意識の領域について。ある程度、人間の心理の構造を知ることで、ガイディング(サイコシンセシスのカウンセリング)で何をしようとしているのか、それを理解する基礎づくりをしていきたいと思います。

前回の記事も参考にしてください。


サイコシンセシスでは、人の意識領域の周りにある無意識をの領域を、大きく3つに分けています。下位無意識、中位無意識、上位無意識の3つです。

下位無意識は、自分のこれまでの人生での経験で感じたこと、考えたこと、思ったこと、いろんな記憶やエネルギーが抑圧されています。願望、欲望、行動力といった、とても強い、人としての根本的な生命エネルギーが溢れているエリアでもあります。

中位無意識は意識を中心として、今現在の意識に近いエリアで、何かきっかけがあればすぐ思い出せるような意識、現在の活動に直接関わっているエリアです。

上位無意識は、自分と他人を繋ぐような、集合無意識であったり、自分の人生の目的、自分の存在意義、自分が何に向かうべきかといった、人間を成長に導くエネルギーのエリアです。

従来のカウンセリングは、下位無意識と言われている、その人のトラウマの問題であったり、インナーチャイルドの問題であったり、その人の抱えている歪んだ信念だったりを、ケアしていくのが大きな目的であったと思います。サイコシンセシスも、下位無意識への対処はとても重要視しています。

しかし、実際、下位無意識へのアクセスはとても負担が大きいものです。そもそも、辛い体験であるからこそ、蓋をして、意識の奥深くに閉じ込めて、自分の意識に登ってこないように、無意識に抑圧しているエリアです。その蓋を開ける作業が簡単なはずもないし、楽しいはずもありません。

サイコシンセシスでは、その大変な作業を行うのに、上位無意識の力を借りることがあります。この視点が、他の心理療法にない視点かな、と思います。
上位無意識のエリアには、自分が望ましいと思う特性を強化するヒントがたくさんあります。そのエネルギーを拝借しながら、下位無意識のアクセスを進めていくイメージです。

サイコシンセシスのガイディングでは、イメージをたくさん使うのも特徴だと思います。自分の心というのは、言葉や文字だけでは表せないものもたくさんあり、視覚的、聴覚的、触覚的な要素や、その時の感情、思考、意欲など、いろいろな精神機能の要素を扱うのにも、イメージを使うというのが適切だったりするのだろうと思います。