精神科医のつぶやき「日本の精神科治療の状況は、外国と比べてかなり違いがあるようです|そこから見えてくること、考えること」 (2025/05/19)
投稿者: furujinmachi
講演会で聞いた話ですが、精神科治療の状況というのは日本と外国では違いがあるようです。それぞれの善し悪しもあるので一概にどこの国がいいとは言えないところもありますが、気になったのは、1日に診る患者さんの人数です。
ヨーロッパ諸国では1日あたりの外来患者数は10人未満の国が多く、アメリカでは地域により差がありますが、6人から25人とのことでした。精神科医の不足が懸念されているアフリカ諸国のデータでは、ナイジェリアが1日50人とのこと。
もっとも、イギリスは日本と医療制度が違い、イギリスで精神科の専門医にかかるためには3年程度の待機期間があるとのこと。それもそれで問題だな、とも思います。
しかし、この人数の比較だけでみると、日本では、精神科医が1日に診る患者さんの数が相当多いことになります。1日10人しか診ていないクリニックなんて聞いたことがありません(完全自費診療とかならあるかもですが)。それだけ毎日相当の数の患者さんを診ていて、その上で新患の予約が取りにくいということは、単純に需要と供給のバランスが成り立っていないということになります。私も1日の診察人数が50人を超えることはけっこうありますので、「ナイジェリアと一緒か…」と思うと、少し考えさせられるものがあるというか(ナイジェリアの医療事情を詳細には知りませんので、偏見や誤解はあるかもしれません)。
もし、ヨーロッパ諸国のように、1日数人の患者さんを診察するスタイルならば、今の日本の精神医療の質は全然違うものになると思います。
日本の精神科医療が、たくさんの患者さんを診るようになっているのは、精神科治療が入院中心だったときの名残であるとのことも、そのときの講演会で伺いました。また、精神科の診察を希望する患者さんの増加数に対して、精神科医の数が足りていない問題だったりとか、そもそも医者の人数も、地域によってかなりバラツキがありますので、医者偏在の問題とかもあると思います。
これからの精神科医療をどうしていけばいいのか、そういった大きな問題は、厚生労働省や医師会などでも議論されているところと思います。しかし、大きな改革はすぐには難しいので、なんとか今の体制で出来ることを考えていく必要があると思います。
先日、研究機関のアンケート調査に協力をしたのですが、そのアンケートでは、医師以外のスタッフによる業務分担の状況確認がありました。これからは、精神科でも業務分担だったり、いろんなスタッフと協力して、患者さんの満足度を高めていく流れになるのではないかと思います。しっかりと診察時間を確保することが難しい状況でも、お困り事に少しでも対応できるよう工夫していこうと思います。