模範解答

テレビの主役の外科医は、
① 手術が終了するなり手術着で
② 家族に“手術は成功でした”と告げるなり
③ 背広に着替えて
④ 綺麗なナースに“お疲れさん”そう言って、
⑤ さっそうと病院を後にして、
⑥ 小奇麗な飲み屋で一杯のんで
⑦ 手術の成功をかみしめるのであった


項目①
基本的に手術着で手術室の外に出てきてはいけません。
厳密にいうと手術室と外では着るものが同じなのは禁止
です。
手術が終わると急いで着替えて先ずは術後の患者のもとに
はせ参じなければいけません。

項目②
手術は成功でしたというセリフをよく聞くが、この言葉に
対しての違和感は強い。逆に失敗でしたということはある
のであろうか? 手術は成功するのが当たり前であり、ど
んな手術も失敗せず一応の決着をつけるのである。
もちろん術後の経過がよくなかったり、合併症が出たりす
ることはある。しばしば病変の広がり方や、個人の解剖
的な違いから(人によって血管の走行が違っていたりする。)
予定外のことがあり、手術法を変更することはあるし、想
定外のことが起こることもあるが、
手術が終了した時点では、厳密に言うと失敗したというこ
とはまずありえない。(すくなくとも自分は経験したことが
ない)
せいぜい手術は予定通り終了しました。という話になる。
(もちろん急患の手術で出血が止まらなかったり、間に合
わなかったことはあるが)

項目③
背広で出勤する医者もいるが、概して、医者は、病院で白
衣に着替えるのでラフな格好で出勤するものが多く、特に
私の当時の外科系はそういう傾向にあった。最近のDrは、
ファッションにこだわる人が多いが、昔は、そういう暇さ
えなかった。ちなみにネクタイは医療では不潔になりやす
いといわれている。

項目④
綺麗なナース。
ドラマではかなり美人の若いナースが多いが、これ以上は
コメントしません。。。

項目⑤
手術が終了してすぐ帰ることはありえない。
外科医に言わせてもらうと術後ほど大変なものはない。
今では大きな病院では、術後を他の麻酔科の医者や、担当
の医者に任せることもあるが、ふつうは、手術が終わると
術後の状態が安定するまで見ていなければいけない。
それが終わると摘出した臓器をホルマリンに固定しなけれ
ばならない。(これが結構大変で、例えば胃なら、その周囲
のリンパ節というものを探して取り出して分けて固定する。
胃は胃で板に張り付けなければならないので慣れていても
小一時間かかる。)
それが終わると手術記事といって、行った手術の記録をか
かなければならない。(昔は、下っ端医者は手術自体が見え
ていないのに手術記事を書かなければならなかった。)
それから、また、術後の出血がないかとかいろいろまた
患者さんを観察していなければいけない。
そこまで当日に終わらせないと、次の日もまた手術がある
ので、仕事が溜まってしまう。
そしてそこで仕事が終わるわけではない。
病棟の担当の入院患者さんの状態を見なければいけない。

項目⑥
そんなこんなで食べる暇もないぐらいで、手術の時間次第
では夜中になり、飲みに行く余裕などあるはずがない。

項目⑦
毎日ほぼ同じ手術をしているので、手術自体に酔いしれる
ことはなく、むしろ、何もなかったことの安堵感が疲れと
ともに出てくるぐらい。

訂正文
実際の外科医は、手術が終了するなり急いで着替えて患者
さんをみて、家族に摘出し臓器を見せて細かく説明したう
えで“おおむね予定通りの手術でした”といい。
それからは、摘出標本を作ったり手術の記録をかいたりし
てさらに術後の患者さんをみて
疲れ果てて食事をしてそれからさらに病棟の入院患者さん
をみて
夜空の星を眺めて、今日の手術も無事終わったと安堵して
家に帰るのでした。

これは標準的な中小の病院の手術を執刀できる主治医クラ
スを対象とした話です。
大学病院の教授クラスはそこまでないし、逆に下っ端はも
っと悲惨です。(私が外科をしていた時代はさらに悲惨でし
た)これではドラマにはならないのは当たりまえ。