でも匂いや味、香りを感じない

私自身、結構新しもの好きで、決っして新しものを否定し
ているのではない。むしろ、畏敬の念さえ感じる。

毎年、年賀状が送られて来るなかで、宛名が手書きでな
い印刷のものに対して私は、なにかしらの寂しさを感じて、
昨年までは全て汚い字で宛名書きをしていた。
しかし、今年はついに忙しさにかまけて印刷にしてしっ
た。
確かに最初に住所を入れるのに手間はかかるが、来年から
は楽である。

印刷の宛名といえば、いつも漢字が間違ったまま
ずっと送られてくるものがあったり、20年前に亡くなっ
た父宛に最近まで宣伝公告関係の郵便が送られてきていた
のを見ると、やるせないものがある。

また、今では、いろいろな注文や問い合わせは24時間、
電話でいつでもできるものが多くなったが、、、
 電話すると“〇〇の方は1をそうでない方は2を、、、、”
番号を押すと再び“〇〇の方は1を、、、”が永遠につづくと
思わんばかりのガイダンスが始まる。
(途中で間違えると最初から、、、しまいには頭にくる)

電子媒体のやり取りは確かに早く確実であるが、本物の
買い物は店員とface to faceで、その人の顔色、状態、
声のトーンを聞いて、いわばお互いの駆け引きで初めて成
立するような気がする。

われわれの職業では、患者さんが診察室に入ってくる間
に、その人の状態、症状はもとより、身なりや年齢、匂い
(実はかなり重要)などで話が始まる前に会話の仕方を決
定しなければならない。(話し方一つで腹を割って症状を話
てくれるかどうかが決まる。“どうしたんなー”から“どう
されましたか”まで相手でさまざま)
ほんの3分で診断の行方が90%が決定するといっても過
言ではない。(10%は間違って修正するのに時間がかかる
のだが)

それだけに人より余計そう感じるのかもしれない。