彼岸花

私が上里病院にやってきたとき
丁度9年前の9月になる。

9年前の9月1日より働きだして
前病院を辞めて
医者として新な世界に踏み出して、
不安と希望が交錯する
なにかもやもやする心境の中、
疲れを感じだした
9月下旬。

病院や愛生苑の周囲に
一斉に赤と白の彼岸花が
咲き乱れたのである。

病院や老人施設の周りに咲くのは
少し複雑な気もしたのだが、
あとで調べると
なにか暗いイメージがあるが、
実は、彼岸花自体は
決して暗く、忌み嫌うような
ではなく、そういう花ことばがあるわけでもなく

どうも、彼岸に咲くとか
お墓の周りに多く見られるとか
勝手に暗いイメージを持っている
様である。

いずれにしても、私には
上里病院の秋を印象づける
花なのである。

皆も心の中では、
勝手に暗いイメージを持ちながら
暑かった夏が終わる象徴として
どこかで
待ち望んでいる様な気がする。

もちろん私は、
少なくなった季節感に
頑強に抵抗するそのいでたちが
毎年、心のどこかで
待ち望んでいるのである。

さて、
毎年、この時期になると
突然芽がでてきて
咲き始めるのだが、

今年は、9月中旬になっても
病院の周囲のどこにも
うんともすんとも
影形がなくて
毎日心配していた。

今年は、病院の周囲の
雑草の刈込が強すぎたのか
(愛生苑の施設長や、
うちの婦長が
ことしはいつもより
入念に刈っていた?)

暑すぎる夏と
まだ来ない本当の秋が
影響したのか。。。
とほとんどあきらめていた。

ところが!!

先週のはじめころから
突然にょっきり茎が出現し
毎日みるみる成長して
なんと23~26日を中心に咲き乱れた
のであった。

自然というものはすごいもので、
なぜカレンダーを見る様に
出現して開花するものなのか。

調べたがよくわからない様である。
昔、理科でならったごとく
気温の変動で咲く要因と
日照時間で咲く要因が強い様であるが

気温でかんがえれば
今年なぞ、気温が高いままであったので
この時期に咲くわけがないし
日照時間で考えるなら
いつも地上に顔をだしている
植物ならまだしも
地下茎で土の中にうまっていて
突然出てくる
形態をとっている植物なので
日照時間を感知することも
考えにくい。

なにか特殊なカレンダーが
組み込まれているに違いない。

いずれにしろ
私が上里病院にやってきたときの
思い出をもたらし、
私を励ます様な
この彼岸花に
なにかこころが安らぐのである。。。