私の医者としての欠点2

こまった薬ができたもんだ

今週、新しい注射の糖尿病薬が
発売された。

原理的には以前よりあり
現在までに、飲み薬と注射薬があったのだが、
これにさらに新しい成分が
追加された注射薬が発売された。

詳しい内容は、
ややこしいので省略するが、
結果、
この薬を使用すると
明らかに食欲が低下するのである。
つまり、痩せるのである。

簡単に言えば、食欲と
消化管の動きを抑えて
食事量が減ってしまうのである。
そして
いままでの薬より
より食欲を抑える効果が
高くなるのである。

これは、決してこの薬の主作用ではない。
しかるに、いままでも
これらの薬がやせぐすりとして
処方されてきているのだが、
今回、この薬が発売されたことによって
さらに
やせ薬としての処方が増えてしまうことは
間違いない。

元来は、その他の効果を
使って糖尿の治療を行う
予定であったが、、、、、

この薬は外国で作られたのであるが
そもそも
欧米の白人と東洋人
には糖尿病において
決定的な違いがある。

外国人は、インシュリン(糖分を
代謝するホルモン)
の分泌が比較的いい人が多く
われわれから見て
とてつもない肥満で糖尿病
になる人が多いのだが、
東洋人は、基本的に
インシュリンの分泌が少ない。

よって、欧米でやせ薬の効果もある
こういう薬が効果がつよく
開発された。
ところが、東洋人には
この薬は基本的には、
少し意味合いが少しちがう
(詳し原理を説明するとわかりにくくなるので
省略するが、)
この薬を糖尿病の治療薬
使用するには基本的に
インシュリンの分泌する
力が必要なのである。

よって、この薬を日本人につかうということは
やせ薬としての意味合いが強いのだ。

先週もいったが、
私の父は医者であったのだが、
戦中に医者になった医者で、
いわゆる昔堅気の医者で
医業に対する誇りが
非常に強かった。
基本的に
医業で儲けをすることを
非常に嫌った。

おやじは仕事が忙しく
ほとんど話をすることもなかった。
子供のころから
ずっと一日会う時間と
いえば10分あればいい方で、
ほとんど話をすることは
なかったのだが、
どういうわけか
こういうところだけ
似てしまった。
(兄は、父親ともっと接する
時間があったのであるが
それのためか、まったくタイプが
おやじや私とちがう医者になってしまった?)

というわけで
どうしてもこの薬を
本来の目的以外で
使う気にはなれないのである
(儲けや、人気とりには、なるのであろうが)

また、どうしても新しい薬は
あとでいろいろ問題がでてきたりするので、
クリニックレベルでは
一般に処方されてしばらく
情報を得てから使うことが多い。
(実際、まだ使用が始まってから時間が
たっていないので長期の実績が不明で
糖尿病学会もガイドラインにのせていない)

もちろん必要な人には出すのだが、、、
それでも、、、
いつも見ている患者さんが
糖尿で、どうしてもといわれると、、、、

感情としがらみの板挟みになることは
間違いない。

ああ、こまった薬ができたものだ。