師走に入り、流石に寒くなってまいりました。
皆様、お忙しい事とは思いますが、体調管理、大事ですよ!



さて、先日録り溜めたDVDを整理していましたら、衛星放送で放映されてたアメリカの「Saturday Night Live」がまとまって出てきました。



今でも確かNBCで放映されている筈ですが、今はmusical guestはどんなアーティストが出ているんでしょうか?



この番組の売りは、毎回キラ星の如く素晴らしいミュージシャンが惜しげもなく?生演奏を2~3曲披露してくれる事でして、むか~しNHK衛星でも何度か特集され、必死で衛星システム持っている知り合いに頼み録画させてもらったものです。




1975年のスタート当初は、如何にもニューヨーク!という雰囲気が漂ってまして、(何しろ、オープニングは無名時代のChevy Chaseが寸劇の後に、「Live from New York, It's a Saturday Night!」とキメるものでした。)今見ても大人の番組だなあ、という感じがします。



そのSNLに何度も登場し、準レギュラー的な存在感を示していたのが、あのPaul Simonです。




放映第二回目では番組ホストとして、唄は勿論のこと、司会、進行、コントまでやってのけます。


しかも、Art Garfunkelを引っ張りだしてきて「ボクサー」「スカボローフェア」をハモッてくれるんですよ!


丁度限定復帰?シングル「My little town」を出した頃だったから、あまりサプライズは無かったかもしれませんが、確か82年まで共演ライブはなかったから、貴重な映像ですけどね・・・。




という訳で、今回の壁ジャケットはPaul Simonを特集してみました。




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1975年の傑作「Still crazy after all these years」です。
邦題は「時の流れに」でした。



ガーファンクルとのコンビ解消以来、ポールサイモンはどちらかといえば、フォークやロックなどの白人音楽以外の音楽、例えばレゲエ(当時はレガエ)や、リズム&ブルース、ニューオーリンズジャズ、第3世界の民族音楽など、自らの引き出しを広げて雑多なノンジャンル音楽を展開していたように思います。



そんな彼が離婚を機に(多分)、ニューヨークで孤独感に浸りながら辣腕ミュージシャンと創り上げた傑作だと思います。



勿論、前作「ひとりごと」でもみられたマッスルショールズ録音のものもありますが、全体に流れる寂寥感、夜のしじまに、といった雰囲気は紐育を強く感じさせるものです。



冒頭のタイトル曲のオープニングの印象深いエレクトリックピアノ、てっきりRichard Teeだと思ってましたが、実はBarry Beckettなんですねえ。

他のミュージシャンも、スタッフ関連かと思いきやマッスルショールズリズムセクションなんですね。


間奏のMichael Breckerのサックスソロも素敵ですが、SNLでのDavid Sanbornのソロも負けず劣らずでしたね。


心地よいエレクトリックピアノの余韻を引きずりつつ低いピアノの音で始まる2曲目の「My little town」ですが、これは先述したように久々のガーファンクルとの公式録音でして、同時期に発表されたガーファンクルのソロアルバムにも収録されています。


でも、やっぱりサイモンのアルバムに入ってた方がしっくりきますね。曲順もここしかありえない!って感じがします。



これもマッスルショールズリズムセクションがバックですが、こういった曲での彼等は水を得た魚のようにいきいきとしたビートを叩き出しています。特にDavid HoodとRoger Hawkinsのリズム隊が素晴らしい!



3曲目の「I do it for your love」こそ、このアルバムでサイモンが最も言いたかった内容ではないでしょうか?CDの詳しい解説を読んで納得しましたが、ペギーとの離婚はかなりこたえたみたいですね。
もの哀しい旋律もいっそう寂寥感に拍車をかけています。



4曲目の「50 ways to leave your lover」は、Steve Gaddが練習中に何気なく叩いていたリズムパターンを元に創られた曲で、シンプルな作風ながら全米一位に輝いています。



このドラムパターン、簡単なようですが、なかなかあの味は出せません。
やはりガッドは凄い!



ビルボード名古屋で彼のドラミングを真近に見る機会がありましたが、ジョンボ―ナムよろしく4 sticksで叩きまくる勇姿に圧倒された覚えがあります。



A面最後はトウーツシールマンスの職人芸ハーモニカをフューチャーした「Night Game」です。



これこそnight musicといいますか、昔これを聴いてから寝る習慣になっていた時期がありました。



曲調、演奏共に何となく冬の凍てついた紐育を彷彿とさせるものがあります。今の時期にピッタリです。




B面はA面に比べるとあまり聴きこんでないのですが、一曲目の「Gone at last」は当時売り出し中の才女、Phoebe Snowが客演しており、いい雰囲気のデュエットになっております。



シェルターレーベルから出した傑作デヴューアルバムに続いて、コロンビアに移籍してPhil Ramoneのプロデュースにて発表した彼女のセカンドアルバムはジャケットといい、参加ミュージシャンといい、曲調といい、「時の流れに」と兄弟アルバムのように似ています。



これも傑作なので是非未聴の方は聞いてみて下さい。



このアルバムでグラミー受賞も成し遂げたPaul Simonですが、この後、創作意欲が低下したのか、ベスト盤や、映画出演とそのサウンドトラックの発表はありましたが、純粋な新作集は1982年まで発表されませんでした。


ただ、TV出演などは盛んだったようで、SNLにも何度か登場し、あのGeorge Harrisonと即席デュオを組んだり、(これは素晴らしかった!)エンターテインメント界での交遊を通じてか、女優キャリーフィッシャー(スターウオーズのレイア役で有名)と再婚したり、話題には事欠かなかったですね。



1986年には問題作「Graceland」を発表し、またまたグラミー賞を獲得しますが、この後はチャート的にはともかく、音楽面では新しいヒットを出せないでいるようです。


私も、新作はなるべく追っかけてはいたんですが、あまり印象に残った作品は無いです・・・。



という訳で、過去の作品にバックしてみましょう。





待合壁の2枚です。




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世評的には彼の最高傑作とされる、1973年の「ひとりごと」です。





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原題は「There goes rhymin' Simon」です。




仕事も家庭も絶頂?期の作品なので悪い訳がありませんが、これほど多彩な音楽性を大衆性を損なわずに表現できたアルバムもそうはないでしょう。



冒頭のマッスルショールズ録音の躍動的な「Kodachrome」から、一転してアンニュイなムード漂う「Tenderness」が始まります。ゴスペルライクなコーラスをフューチャーした佳曲で、個人的にはこのアルバムの白眉です。


3曲目はニューオーリンズの情景漂う「Take me to the Mardi Gras」です。留学時代にマルディグラ祭を観に行った事がありますが、ちょっと変わった(ここでは書けない)奇習?の事もあり、今でも忘れられません。


4曲目は名曲「Something so right」です。後の「時の流れに」へ繋がる都会的なサウンドが聴かれます。良い曲ですよね。



B面は一曲目の「American' tune」と最後の「Loves me like a rock」が群を抜いてます。



前者は非常に評価が高く、アメリカの第二の国歌だ、なんて声も上がったほどですが、個人的にはあまりピンときません。



後者は解説の小倉エージさん曰く「悪乗り」と評される程、シニカルな彼には珍しい程の明るい(逆ハイ?)熱唱が聴かれます。


これもSNLでゴスペルグループをバックにアツ~く歌われてました。




もう一枚は何にしようかと悩んだのですが、やはりこれにしました。




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Simon & Garfunkelとしての最終作「明日に架ける橋」です。




1970年の年間チャートをシングル、アルバム両部門で制覇した名盤です。


ラリーネクテルのピアノが印象的な、いかにもガーファンクルが鼻の穴を拡げて(失礼!)熱唱してそうな表題曲も素晴らしいですが、民族音楽好きのポールらしい「コンドルは飛んで行く」や、シンプルなリズムに猥褻な歌詞をのっけた「セシリア」、S&Gとしての最高傑作の一つ、サイモンらしいシニカルな歌詞が光る「ボクサー」など名曲満載のアルバムです。



数年前、S&Gとして来日した際には名古屋ドームまで観に行きましたが、やはり「明日に架ける橋」は腰の重い中高年をも総立ちにさせるパワーがありましたね。


個人的にはサイモンの「時の流れに」が一番嬉しかったですねえ。アレンジもキーも殆ど変えてなかった所も良かったです。