COPDという病気をご存じですか?横文字だし,あまり耳慣れない言葉でしょうか?
COPDは,Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字をとったもので,日本語では「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます.有害なガスなどの吸引で,緩徐に肺機能低下が進行し,多くの例が酸素を必要とするようになり,ついには死亡に至る病ですが,この「有害なガス」の代表格がタバコの煙,つまりは喫煙です.少なくともわが国では,タバコを吸わない人がCOPDに罹患する確率はほぼ0です.「ほぼ」と言ったのは,周りにヘビースモーカーが大勢いる人は,副流煙の影響が無視できないからです.要するに,COPDの原因はほぼ100 %タバコにあるとも言えます.

しかし,喫煙者が全員COPDになるわけではありません.タバコをぷかぷかやりながら90歳まで元気で長生きされる方ももちろんいらっしゃいます.これは,タバコに対する感受性に個人差があるからだと考えられます.タバコの煙に強い人,弱い人がいるということですが,残念ながら今のところそれを見分ける方法がありません.

COPDでは,歩行時の息切れなどの症状が極めて緩やかに進行するため,症状を訴えて病院を受診する頃には,すでにかなり進行した状態であることが少なくありません.もちろん,全ての喫煙者が禁煙することが望ましいことは言うまでもありませんが,喫煙される方は少なくとも年一回くらいは肺機能検査をお勧めします.その時の肺機能だけでなく,定期的に行うことで肺機能の経時的な変化を知ることができます.そしてこれが,先に述べたタバコ感受性を予測するための最良の手段となるのです.非喫煙者でも年齢とともに肺機能は少しずつ低下します.しかし,もしそれをはるかに上回るペースで肺機能が低下しているとすれば,その人はタバコに弱い人で,喫煙を続けるとほぼ確実にCOPDになります.着々と弱っていく自らの肺機能を見せつけられれば,禁煙への強い動機付けにもなることでしょう.