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13 May 2025 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

うつに気づくにはどうしたらいいのでしょう?
まず、うつ病についての基本的な知識を知っておくことは大事だと思います。知らないものに関しては、気づきようがないと思うんですよね。
でもうつ病って、本当に全身いろんなところに症状が出て、それもいろんな組み合わせがあるので、結構個人差が大きい病気なんですよね。
でも、比較的共通する症状としては、気分の落ち込み、意欲の低下、集中力の低下といった精神症状と、あとは食欲不振と不眠です。

患者さんは、精神症状は病気と認識していないことが多くて、食欲不振や胃腸の調子が悪くなること、眠れないことで自分の異変に気づくことが多いように思います。なので、最初は内科の病気を疑って内科にいかれたり、ホルモンバランスが悪いのかと考えて婦人科に行ったりされます。

そこで、医師の方が異変に気づき、心療内科に行くよう助言することもあります。けれども、もともと持病があって、そのせいで体調不良があったり不眠があったり全身倦怠感があったりすると、うつ病のせいでしんどいのか、単なる持病でしんどいのか、その見分けは案外難しい部分もあると思います。

定期通院されている患者さんの場合は、普段と違うご様子に気づいた時に、気分が沈んでいないか、今まで好きでやっていたことへの興味が減っていないか、それを聞いてみていただけるといいのかなと思います。

薬剤師さんも、同じと思います。何か普段と違うご様子の方、普段より元気がない、声に覇気がない、動きが緩慢になっている方だったり。あと、内科に通院中の方であれば、以下のようなことがうつに気づくきっかけになることもあります。

・服薬コンプライアンスの低下:飲み忘れたり、内服をやめたと言い出したり。理由を聞いても、「なんとなく」「面倒になって」といった、曖昧な返事であることが多いようです。
・身体症状の訴えの増加:頭痛、倦怠感、胃腸症状が増える傾向にあります。検査しても異常が見つからないことが多いです。
・会話が続かない、あるいは長くなる:質問しても小さな声でボソボソと話されるのみで会話が続かない場合と、考えがまとまらず堂々巡りの話を繰り返すためにかえって話が長くなる場合とがあります。

そして、気づいたら、どう声をかけるか。
まずは、お元気のない様子を、主治医の先生が把握されているかどうかが大事だと思うんですよね。睡眠薬や安定剤などが追加されていたら、主治医の先生もメンタル不調に気づいて対応されているのだろうと思います。すでに心療内科受診を勧められているかもしれません。でも、特に何か主治医の先生が対策をされているような状況でなければ、不調そうに見えること、何かお困りになっていないのか、声をかけてみていただけるとありがたいなと思います。

そして、心療内科受診についての声かけ。そのような提案をされてすごくびっくりされる方もいれば、自分でも受診した方がいいのではないかとすでに考えている人、もう予約はとってあるという人まで色々な場合があり得ます。びっくりされた方には、少し丁寧に説明する必要があると思います。メンタル不調は誰にでも起こることで、早めの受診が早い回復につながること、メンタル不調があると内科の持病にも悪影響があることなどを伝えていただくと良いかと思います。

ただ、おそらく今どの地域でも、心療内科・精神科クリニックの予約はすごく取りにくくなっているのではないかと思います。受診したいと思っても、希望のクリニックで予約が取れるのに時間がかかるかもしれないので、そういう意味でも、早めに予約することを推奨していただけると良いのではないかと思います。

この内容はもう少し続けます。
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投稿者: furujinmachi

前回、メンタル不調で復職するに当たって、一番良いパターンは、メンタル不調がすっかり良くなって復帰するパターンだと書きました。そして、メンタル不調が改善したとする基準についても触れました。


しかし、問題になるのは、理想的なパターンだけではなく、すっかり良くなったわけではないけれども復帰しなければならない、という場合ですよね。

前回、復帰のパターンとして次の3つをあげました。

①十分メンタル不調が回復し、本人が意欲的に復帰する
②これ以上休めないので復帰する
③これ以上休んでも状態の改善が期待できないため一旦復帰する

②のケース。これは経済的な事情もかなり影響してきます。職場の規定でこれ以上休めない、休むと退職になる場合とか、傷病手当金をもらってきたけれども、受給できる期限を迎えてしまう、とかですね。

経済的に危機を迎えること自体が、うつ状態をさらに悪化させるリスクを伴います。コロナ禍でうつになる方が増えた、との報告がありますが、その一因として経済的に困窮した方が増えたからだ、とも言われています。なので、経済的な安定を得るメリットの方が、十分回復していない状態で復職するリスクを上回る場合は、復帰に踏み切ることがあります。

また、③の場合というのは、休業期間が長くなってきた方で、長期間休んでいるということ自体が、メンタル不調の原因になってしまってきているような場合です。うつ病は、急性期は休養が重要ですが、長期化して慢性化するとむしろ活動した方が良くなる場合があります。低活動であることでうつが遷延している場合は、いっそ復帰した方がいい場合があったりします。もちろん、可能であればその前にリワークデイケアや試し出勤など、リハビリが出来ると理想です。

いずれにせよ、②や③のパターンで復職を成功させるためには、周囲の支援が欠かせません。職場が、どのくらい患者さんのことを理解しサポートしてくれるのか、プライベートで、ご家族含めどのくらい支援が期待できるのか。支援が多いほど、復職が成功する可能性が高まります。

職場がメンタル不調に理解があって、試し出勤制度を利用できたり、本人の心理的負担が少ないように異動の調整、勤務時間の調整などしてくださると非常にありがたいです。働きやすくなりますし、それだけ配慮してもらえることに対して、(遠慮してしまう気持ちもありますが)正直嬉しい気持ちを患者さんも感じられます。

ただ、状況的にはまだ休むことが可能なのに、「職場に迷惑をかけている」といった罪悪感や、「あまり休むと二度と仕事に行けなくなるのではないか」といった不安・焦りから復職を希望される方もいます。職場から「早く復帰してほしい」と急かされる、と訴える方もいます。しかし、「職場から早く復帰しろと言われる」と話される方でも、よく聞くと、確かに職場の人は「いつくらいで復帰できそうですか?」と尋ねてこられていますが、事実確認であって急かしているわけではない、ということもままあります。本人の焦りや不安が「急かされている」という受け止め方に繋がる場合もあります。

正直、焦って復帰すると、復帰後にかなりしんどい思いをされ、結果、数ヶ月後に再び復職になるパターンが結構あります。休むことが可能であるならば、認知機能の改善が得られ、集中力や意欲が回復するところまで待って、リハビリを経て復職するのが理想と考えています。
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投稿者: furujinmachi

メンタル不調でお仕事をお休みされた方は、いつどのようなタイミングで復職するのでしょうか?
メンタル不調の復職判断基準は、内科疾患ほど明確に決まってないように思います。急性の内科疾患、感染症などであれば、完治したら復帰、ということになりますが、メンタル不調の場合はそうはいかないですよね。

実際の現場では、どういった状況で復帰になるかには、おおむね次の3つのパターンがあるように思います。

①十分メンタル不調が回復し、本人が意欲的に復帰する
②これ以上休めないので復帰する
③これ以上休んでも状態の改善が期待できないため一旦復帰する

①は一番良いパターンです。メンタル的にも体調的にも整ったので復帰する、という状況ですね。

②は、そもそも会社が3ヶ月しか休めないなど、病休の期間の規定がある場合。そこで復帰しなければ退職になるので、十分に回復していなくても一旦復帰してみる、ということはあります。また、傷病手当金の支給が切れてしまうタイミングで復帰する方もいます。

③の場合は、ある程度は改善したものの、元通りには至っていない。でも、おそらくこれ以上休んでいてもこれ以上は回復しないので、それであれば職場に配慮願いなどして一旦復帰してみる、というものになります。

こうやって考えると、メンタル不調の職場復帰の判断には、いろんな要素が絡んでくることが見えてきます。
職場復帰に関連する要素としては、次の3つがあるかなと思います。
①病状の改善②経済事情③支援体制

まず、病状の改善について。これは、先程の復帰パターンでも、一番いいのは、すっかり良くなって復帰することだと書きました。しかし、ここで問題になるのは、メンタル不調の改善を何をもって判断するのか、という点になります。

メンタル不調が改善したというのは、自覚症状の問題ですので、良くなったかどうかは患者さんが一番よく分かるはずです。でも、うつは脳機能のいろんなところに影響しますので、気持ちの落ち込みは改善したけれども、まだいまいちやる気が出ないとか、本を読んだりYouTubeを見ようとすると、疲れてしまうとか、そういう状況になったりします。また、復職するのに対して不安が高まると、不安のせいでなんだか不調を感じたりします。でもその不安は、復職しないと改善しない部分もあったりします。そのような意味で、本当に完全にメンタル不調が消失して復職できる人は少数派ではないかと思います。

先日受けた産業医講習会では、産業医の先生が復職を許可する基準として以下のようなものをあげていました。
・労働者自身が職場復帰に関して十分な意欲を示していること
・通勤時間帯に1人で安全に通勤ができること
・職場が設定している勤務時間の就労が可能であること
・業務に必要な作業が可能であること
・業務による疲労が翌日までに十分に回復していること
・適切な睡眠リズムが整っていること
・昼間の眠気がないこと
・業務に必要な集中力・注意力が回復していること

なのでまずは睡眠リズムが安定し、一人で外出して、職場まで行くことが可能であること、それから、職場で必要とされる勤務時間程度の時間帯に活動が出来ること、それが達成できていれば復職できるのかな、と思います。

集中力・注意力は認知機能と言われる部分になり、これに関しては簡便な検査でどの程度回復しているか測定することも可能ですし、読書や動画視聴などが集中出来るかどうかで確認できます。

この話はちょっと長くなりそうなので、次回また続きを書きます。