カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
先日、患者さんより、「てんかんは精神疾患ではないと思っているんですが、なぜてんかんの人は、精神障害者手帳を交付されるのですか?」という質問をいただきました。
てんかんの人がすべて精神障害者手帳の取得要件を満たすわけではありませんが、治療状況によっては精神障害者手帳を交付される方もいます。でも確かに、なぜ「精神障害」なのでしょう?これは言われてみて私も、「確かに、なぜだ?」と感じました。
まず、てんかんが精神疾患なのかどうか、というところの確認からですが、もちろん、てんかんは医学的には精神疾患ではありません。
てんかんは、脳の神経細胞が一時的に異常な電気活動を起こすことによって発作が生じる「脳の病気」であり、神経疾患(neurological disorder)に分類されます。
しかし、日本の制度上、「精神障害者保健福祉手帳(以下、精神手帳)」の対象に含まれています。これは制度的・歴史的な経緯によるものであり、医学的な分類とは別の観点で成り立っているということになります。
では、なぜてんかんは「精神障害者保健福祉手帳」の対象になっているのでしょうか?
① 制度上の理由
精神障害者保健福祉手帳は、1995年に精神保健福祉法の改正によって制度化されました。その際の手帳の対象疾患として、以下のような病態が含まれました:
統合失調症
うつ病・躁うつ病
高次脳機能障害(交通事故後など)
発達障害
てんかん
てんかんがここに含まれた理由は、発作に伴う社会的制約や就労困難など、生活機能の障害という観点から配慮が必要とされたためです。
② 歴史的な背景
てんかんはかつて、精神病院での管理対象とされていた歴史があります。特に戦前~昭和中期には、精神病や知的障害と混同され、「特殊教育」や「社会的隔離」の対象とされることもありました。
このため、日本では長らく精神障害に準じた扱いを受けてきた経緯があります。私が研修医の頃は、てんかんの患者さんで精神科に通院されている方が一定数いらっしゃいましたし、精神科医のなかで、てんかんの専門医もたくさんいました。しかし、今ではてんかん専門医をもっている精神科医はかなり少数派になってきております。てんかんの方はほとんどが神経内科か脳神経外科に通院されています。
国際的にはどうなのでしょうか?
WHOの「国際疾病分類(ICD-11)」や、米国精神医学会の「DSM-5」においても、てんかんは神経疾患に分類されています。
実際、欧米ではてんかんは精神障害者の枠組みではなく、身体障害や神経疾患として支援されることが多いです。
今後の展望は?
現時点で日本において、てんかんを精神手帳の対象から外すという動きは明確にはないようです。
ただし、以下のような議論がされています:
「精神障害者保健福祉手帳」という名称自体が実態に合っていない
精神疾患だけでなく、発達障害や高次脳機能障害、てんかんなど多様な状態が含まれるため
「機能障害」や「社会的制約」を軸にした、新しい分類や支援制度が望まれる
また、障害者総合支援法の下では、てんかんのある人も「難病」や「身体障害」「精神障害」とは異なる枠組みで支援対象となる場合があります。こうした制度が今後発展すれば、より適切な支援の枠組みが整う可能性があります。
いずれにせよ、いずれかの段階で、てんかんが「精神障害者手帳」の対象から外れるようになっていく方が良いでしょうね。制度の見直しには時間がかかるでしょうが、病気の分類と制度の分類が一致するようになって欲しいと思います。
てんかんの人がすべて精神障害者手帳の取得要件を満たすわけではありませんが、治療状況によっては精神障害者手帳を交付される方もいます。でも確かに、なぜ「精神障害」なのでしょう?これは言われてみて私も、「確かに、なぜだ?」と感じました。
まず、てんかんが精神疾患なのかどうか、というところの確認からですが、もちろん、てんかんは医学的には精神疾患ではありません。
てんかんは、脳の神経細胞が一時的に異常な電気活動を起こすことによって発作が生じる「脳の病気」であり、神経疾患(neurological disorder)に分類されます。
しかし、日本の制度上、「精神障害者保健福祉手帳(以下、精神手帳)」の対象に含まれています。これは制度的・歴史的な経緯によるものであり、医学的な分類とは別の観点で成り立っているということになります。
では、なぜてんかんは「精神障害者保健福祉手帳」の対象になっているのでしょうか?
① 制度上の理由
精神障害者保健福祉手帳は、1995年に精神保健福祉法の改正によって制度化されました。その際の手帳の対象疾患として、以下のような病態が含まれました:
統合失調症
うつ病・躁うつ病
高次脳機能障害(交通事故後など)
発達障害
てんかん
てんかんがここに含まれた理由は、発作に伴う社会的制約や就労困難など、生活機能の障害という観点から配慮が必要とされたためです。
② 歴史的な背景
てんかんはかつて、精神病院での管理対象とされていた歴史があります。特に戦前~昭和中期には、精神病や知的障害と混同され、「特殊教育」や「社会的隔離」の対象とされることもありました。
このため、日本では長らく精神障害に準じた扱いを受けてきた経緯があります。私が研修医の頃は、てんかんの患者さんで精神科に通院されている方が一定数いらっしゃいましたし、精神科医のなかで、てんかんの専門医もたくさんいました。しかし、今ではてんかん専門医をもっている精神科医はかなり少数派になってきております。てんかんの方はほとんどが神経内科か脳神経外科に通院されています。
国際的にはどうなのでしょうか?
WHOの「国際疾病分類(ICD-11)」や、米国精神医学会の「DSM-5」においても、てんかんは神経疾患に分類されています。
実際、欧米ではてんかんは精神障害者の枠組みではなく、身体障害や神経疾患として支援されることが多いです。
今後の展望は?
現時点で日本において、てんかんを精神手帳の対象から外すという動きは明確にはないようです。
ただし、以下のような議論がされています:
「精神障害者保健福祉手帳」という名称自体が実態に合っていない
精神疾患だけでなく、発達障害や高次脳機能障害、てんかんなど多様な状態が含まれるため
「機能障害」や「社会的制約」を軸にした、新しい分類や支援制度が望まれる
また、障害者総合支援法の下では、てんかんのある人も「難病」や「身体障害」「精神障害」とは異なる枠組みで支援対象となる場合があります。こうした制度が今後発展すれば、より適切な支援の枠組みが整う可能性があります。
いずれにせよ、いずれかの段階で、てんかんが「精神障害者手帳」の対象から外れるようになっていく方が良いでしょうね。制度の見直しには時間がかかるでしょうが、病気の分類と制度の分類が一致するようになって欲しいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi
これもKindle本です。著者の講演を拝聴し、購入しました。紙媒体の本を読み終わったと思ったら、Kindleの中にもたくさん本が残っていました。頑張って読み進めていこうと思います。
心のお医者さんに聞いてみよう 大人の愛着障害 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法 (大和出版)
amzn.asia
1,260円
読みたいと思った動機
愛着障害の相談も、トラウマの時代に入って確実に増えています。きちんとした知識として身につけたいと思ったため。
得たい知識
愛着障害の定義、患者さんにどう説明するのがいいのか。それと日々の臨床で役に立つ対処などが知りたい。
イラスト入りの本で読みやすかったです。
愛着障害とどう向き合えばいいかも書かれていて、色々ヒントになることが多かったです。
甘えきらずに大人になった自分を自立させ大人にする
ちゃんと人を頼り、人に甘えられるようになることが「自立」です。自分で頑張るところと、人を頼るところをちゃんと分けられるようになり、頼るべきところは頼るようになるのが「大人」になるということですね。
自分の人生を俯瞰し、「よくがんばったね」とねぎらう
とにかく自分に優しく、自分を大事に。これが他人だったら、どれだけ大変でどれだけ頑張ったか。自分だからダメ出ししてしまうクセを減らして行くことが大事です。
他人に寛容で優しくするのと同じだけ自分にも優しくしてみる
これは私も以前記事に書きました。
親との関係がわるくないなら親と小さい頃のはなしをしてみる
親の気持ちを知ることで、違った視点が持てることもあります。
周囲の人たちにまんべんなくプチ甘えをする
甘えるというのもスキルです。練習しないと上達しません。
生活のなかで助けられたことを思い出して、記憶を上書きする
プチ甘えをしているうちに、昔は甘えていたこと、頼っていたことを思い出すこともあると思います。そうやって、「甘えられない」のではなく「甘えていい」「甘えられる」という自分に上書きしていきます。
心が緩んだら、下面の裏の不完全な自分を受け入れる
少しずつ、周囲に甘えて生きていいという安心感が育まれると、必死になって生きてきた自分を受け入れ、不完全で弱い自分を受け入れて大事にしていく準備ができていきます。人間は完璧でなくていいという当たり前のことを認識することも、愛着障害の人にとっては難しいことなんだなと感じます。
自分を総動員してかわいがり、自分自身を救い出す
これはもはやインナーチャイルドセラピーの話に近いですね。サイコシンセシスの時に紹介したエンプティチェアの技法が紹介されていました。
愛着が生まれてくると、忘れていたいいことを思い出せるようになる
人生、大変だったことが多いけれども、いいこともあったはずなんですね。でも大変すぎてそれを忘れてしまっている。愛着が育まれることで、自分の人生の中にあった大事な思い出を思い出せるようになり、人生の中でバランスが取れるようになると良いと感じます。
こうやってまとめると、愛着障害の方は、いかに自分をかわいがるか、大事にするか、ということがテーマになるようです。そのことを診察でも伝え続けていきたいと思います。
心のお医者さんに聞いてみよう 大人の愛着障害 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法 (大和出版)
amzn.asia
1,260円
読みたいと思った動機
愛着障害の相談も、トラウマの時代に入って確実に増えています。きちんとした知識として身につけたいと思ったため。
得たい知識
愛着障害の定義、患者さんにどう説明するのがいいのか。それと日々の臨床で役に立つ対処などが知りたい。
イラスト入りの本で読みやすかったです。
愛着障害とどう向き合えばいいかも書かれていて、色々ヒントになることが多かったです。
甘えきらずに大人になった自分を自立させ大人にする
ちゃんと人を頼り、人に甘えられるようになることが「自立」です。自分で頑張るところと、人を頼るところをちゃんと分けられるようになり、頼るべきところは頼るようになるのが「大人」になるということですね。
自分の人生を俯瞰し、「よくがんばったね」とねぎらう
とにかく自分に優しく、自分を大事に。これが他人だったら、どれだけ大変でどれだけ頑張ったか。自分だからダメ出ししてしまうクセを減らして行くことが大事です。
他人に寛容で優しくするのと同じだけ自分にも優しくしてみる
これは私も以前記事に書きました。
親との関係がわるくないなら親と小さい頃のはなしをしてみる
親の気持ちを知ることで、違った視点が持てることもあります。
周囲の人たちにまんべんなくプチ甘えをする
甘えるというのもスキルです。練習しないと上達しません。
生活のなかで助けられたことを思い出して、記憶を上書きする
プチ甘えをしているうちに、昔は甘えていたこと、頼っていたことを思い出すこともあると思います。そうやって、「甘えられない」のではなく「甘えていい」「甘えられる」という自分に上書きしていきます。
心が緩んだら、下面の裏の不完全な自分を受け入れる
少しずつ、周囲に甘えて生きていいという安心感が育まれると、必死になって生きてきた自分を受け入れ、不完全で弱い自分を受け入れて大事にしていく準備ができていきます。人間は完璧でなくていいという当たり前のことを認識することも、愛着障害の人にとっては難しいことなんだなと感じます。
自分を総動員してかわいがり、自分自身を救い出す
これはもはやインナーチャイルドセラピーの話に近いですね。サイコシンセシスの時に紹介したエンプティチェアの技法が紹介されていました。
愛着が生まれてくると、忘れていたいいことを思い出せるようになる
人生、大変だったことが多いけれども、いいこともあったはずなんですね。でも大変すぎてそれを忘れてしまっている。愛着が育まれることで、自分の人生の中にあった大事な思い出を思い出せるようになり、人生の中でバランスが取れるようになると良いと感じます。
こうやってまとめると、愛着障害の方は、いかに自分をかわいがるか、大事にするか、ということがテーマになるようです。そのことを診察でも伝え続けていきたいと思います。