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August 2014 の投稿一覧です。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
こんばんは。お盆休みも終わり、外来には夏なのに熱を出していたり、のどが痛い人が来ます。医者的には不思議ではないのですが、やはり夏の暑い時に風邪をひいてしまうなんて(意外だ!損した!)と思ってしまいますよね。今日は風邪について少々お話います。
まず、風邪って何だ?ということ。これは、寒いからとか、寝相が悪くてお布団からはみ出でしまい、体が冷えてしまったからなるものではありません。エアコンとも関係ありません。風邪とは、のどの粘膜や組織に病原菌やウイルスが付着し(くっつくこと)、それが増殖して(増えて)炎症を起こし(悪さをして)、それにより咽頭痛、咳、倦怠感(だるい)、頭痛や関節痛、筋肉痛、発熱などを生じた病気の総称である(まとめて呼んでいる)。
ちょっと堅苦しい表現ですが、こんなところです。感染症(流行病)ですから、当然他の人からうつされたものですし、誰かに移すことだってありです。ですから、「この風邪はうつるんですか?」と言われたら、当然僕は「はい、バリバリにうつりますから、学校(あるいは保育園、幼稚園)は休んだほうがいいですね。」(がっかり!!)とか「これはうつしたらごめんなさい!!と言って仕事に行けるレベルですよ。」などと言います。(ホントです)
次に、「1,2日で治るの?治るんですよね?」という質問に、「いや、結構かかりますよ。菌が強そうですから。」とか、「わかりませんね、微妙な感じですけど。」とか、皆さんの期待を裏切るお返事をしてしまいます。何故なら、「風邪」の原因となる菌、ウイルスはめちゃくちゃにたくさんいて、2,3日で大体良くなるものから、こじれると肺炎なんかになるものまでピンキリなのです。しかもウイルスによるものが約80%なので、抗生剤は効きません。症状を押さえながら、自然に収まるのを待つしかありません。
残りの約2割については、細菌がいる、または関与しているという証拠や状況証拠をつかんでから抗生剤を出します。また、その際も最初は、昔からあるペニシリンや、セフェム系でも古いものを使うのが正しいのです。
どうしてって?抗生剤に限っては、体に吸収する率が良いのと、意外に耐性菌はいないことから昔のもので良いのです。新しめの薬は薬価が高いので、売る方の都合で勧められています。医者も感染症の勉強をする人は少ないので、ついつい使ってしまうのですが。
「もし悪くなったらどうするんだ!」という人もいますが、何日かして治らなかったら、その時にもう一度医者にかかる方がいいです、面倒でも。数日間で自然に治る率が8割あるのですから。
「すぐ治りたいので、点滴でも何でもしてくれ。」さすがにこんなこと言う人は今は珍しいですが、こう思っている人は多いでしょうね。ですが言います。百万円もらってもすぐには治りません、治せません!!人間は生身の細胞でできていますので、例えばのどの粘膜がきちんと修復されるのに3~6週間かかることもあり、電化製品の部品を取り換えて「さあ治りました。」とはいかないのです。擦り傷だって何日かかかるじゃないですか!あれと同じ!

書いていたらすごく字数が多くなってしまいました。読むのが大変ですので、今日はこれまで、続きはまたあとで。
カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
皆さんご承知の通り、西アフリカでエボラ出血熱が流行しています。
致死率90%に近いザイール型なので、今生きている人でも大部分は死亡します。日本に来る恐れはない、少ないと言っていますが、知らない人を安心させるための大嘘です。
一人、二人潜伏期の間に帰国してきたら、あるいは飛行機の中で発症したら、どうなるでしょうか?発症した飛行機に乗り合わせた人は、まず全員隔離が必要でしょう。閉鎖環境である飛行機の中で、咳、嘔吐、下痢などした場合を考えてください。
ノロウイルスなら「ごめんなさい、汚しちゃって。」で済むでしょう?!が、この場合は冗談になってません。なんせ逃げようがありませんし、客室乗務員の方はどうするのでしょうか?手袋をして拭き取ったりしたって、防護服やフルフェイスの被り物をしないとうつるでしょうね。
でもそれってまずいですよね、機内でパニック起きそうだし!
「お前、医者のくせに人を不安にさせるようなこと言って良いのか?責任とれ!」とか言われそうですが、「あんた、どんだけ怖いか判って言ってるのか?皆素人だと思って、大した危険がないように嘘をつかれてるんだぞ!!」と言い返すでしょう、僕は。
エボラは直接接触でないとうつらない、といいますが、それならなぜ陰圧室で治療し、研究は外に空気を一切もらさず、なかの人も実験室内の空気を絶対に吸わない、P4と呼ばれる施設でだけ扱うのでしょうか?分泌物がだめなのですから、当然飛沫感染は有りです。

つくばには海外出張をなさる方が多いです。成田から筑波に直通バスも出て、それを利用する方も多いです。ほとんどの方はお元気でしょうが、なかには具合の悪い方もいます。さらに、残念ですが、その中の一部には、には、下痢をしたり、熱が出ているのに検疫に届けずに帰ってきて、そのまま病院に来る人たちがいます。赤痢やコレラなら、まだなんとかなります。しかし、新型インフルエンザ、SARS,そしてこのたびのエボラなど、どこの病院でもいきなり来られたら防御不可能なこれらの病気について、軽く考えてはいけないのです。
「ちょっとした風邪だろう。」「たくさん食べすぎたんだろう。」等思うのは自由ですが、熱が出ている、下痢をしている、だるくて頭が痛い、などありふれた症状でも、日本でなるのとウガンダでなるのとは違うのです。大げさに考えて、実は軽い病気だったらいいじゃありませんか!きちんと申告してください。

このようにして、伝染病は入ってきます。最後にはシステムやハードではなく、個人の倫理観、良心にかかってきます。水際で防ぐのは難しいですが、今のところこれしかありません。
皆さん、面倒でも、具合が悪い時は成田空港で正直に届け出てください。よろしくお願いします。医者だって人間です。ターミネーターやゾンビでは無いので、不死身ではありません。
お盆休みに入ります。ご迷惑をおかけしますが、何とぞご了承ください。

カテゴリー: 2.感染症
投稿者: satohcli10-9
今年も暑い夏です。別に今更良いことがあるわけではないけれど、僕たちの年代では山下達朗やサザンなんかかけて、車で海に行こうかなって感じですかね(笑)

さて、夏にはやっぱり食中毒が出るんですね、今でも。つい2,3日前にはお祭りの露店で売っていた冷やしきゅうり(僕は見たことないんですが)にO-157がついていて、それで何人も食中毒になっちゃいました。
きゅうりの栽培で着くものではないので、冷やしていた水か氷が汚染されていたのでしょう。重症になり、入院した人もいるようです。また仙台では、ラーメン屋さんのチャーシューにブドウ球菌がついてしまい、ラーメンを食べた人が当たったそうです。
ちゃんと煮て、直接手で触ったりしないできれいに切れば良かったんだと思いますが、ちょっとした切り傷があったり、きれいでない手で肉を押さえて切ったチャーシューだったのでしょう。ちょっとしたことで病気になってしまうのが怖いですね。

また、ウイルス性の胃腸炎は、食べ物に入ってなくとも、ウイルスがついている所に触って、十分に手洗いせずに、手づかみで何か食べたり分けたりしただけでなってしまうことがあります。ノロウイルスなどはその典型です。アルコール系の消毒薬が効かないので、30秒くらい手を洗う(!!)か、特殊な消毒薬を使うしかありません。まあ、なったら運が悪かったな、ということでしょうか?それくらい、予防は困難です。さらに、十年くらい前は冬に多かったのに、今は一年中出ます。と言っても検査しているわけではありませんが。
医師は、「あーノロウイルスですよ(たぶん)」とか、「ロタですね」とか言ってますけど、本当ですか?そんなの見えてないのに(人間には小さすぎて見えません)。インフルエンザって検査するのに。などと思うでしょう?
実は、日本人は(僕も日本人ですが)検査が好きで、また医者の言うことが必ずしも当てにならないので(医師のレベルの問題です)、すぐに検査なのです。しかし、先進国でもインフルの検査はほとんどしません。先日ドイツから帰ってきた患者さん(海外赴任)が、滞在中にインフルエンザに罹ったとのことで、話を伺いました。
「インフルエンザで、検査しなかったでしょ?」「ええ、しませんでした。」「タミフルくれなかったでしょ?」「もらえませんでした。」もちろん、きちんとした保険診療でもこれが世界の常識なのです。日本薬出しすぎ!!なのです。
胃腸炎でも、検査に健康保険効かない例が多く、やっても特別な薬があるわけでもないし(吐き気止めと整腸剤くらいですね、どこの病院でも)、2,3日で治ってしまうので、余計なことしなくて良いのです。ただし、下痢が回数が多くて、数日続く場合は細菌性のものが多いので、便の細菌検査が必要になってきます。
ただし、結果が出るまでに1週間ほどかかる(大きな病院でも)ので、見切り発車して、薬を出すことも多いです。その場合抗生剤が必要かどうかは意見が分かれますが、乳幼児なら出しますし、症状が重くて、しかも早いうちなら大人も出すことが多いです。僕はそうしてます。
まだまだ夏は続きます。食べ物の管理には気を付けて、怪しいものは食べないこと(マックのチキンの話ではありません)。ではまた。