虚血性心疾患とは、心臓や心筋に十分な血液が行き渡らなくなる病気です。心臓の表面には、心臓自体に酸素を供給している冠動脈という血管が走っています。冠動脈 が細くなり心筋が一時的に酸素不足に陥るのが狭心症で、冠動脈が完全に詰まってしまうのが心筋梗塞です。

狭心症は、動脈硬化などにより冠動脈に狭窄を生じ、心臓の筋肉に十分な血流が行かなくなると酸素不足となり、痛みや圧迫感、胸の違和感などの症状が出現します。狭心症は大きく労作性狭心症、異型狭心症(冠攣縮性狭心症)、不安定狭心症に分けられます。

労作性狭心症は、労作時(例えば階段や坂道を登るとき)に胸の違和感や締め付けられる感じを生じ、少し休むと症状が改善するという発作をみとめます。通常、症状は軽いことが多く、息苦しさを感じることもよくあります。しかし重症化すると、心臓のポンプ機能が低下する心不全や、心筋虚血による重症の不整脈を合併して生命への危険が高まります。カテーテルによる検査・治療が必要となることが多いため、診断の疑いが強い場合には専門施設に紹介いたします。

異型狭心症(冠攣縮性狭心症)は、冠動脈に動脈硬化がなくても冠動脈自体が痙攣(けいれん)・収縮して狭窄を生じ血流が悪くなり、狭心症のような症状をみとめます。日本人に多いとされ、早朝に胸が痛くて目が覚めるというのが最も多いですが、運動時に発作を起こすこともあります。寒冷や過呼吸が発作の引き金となることもあります。異型狭心症と診断された方は薬による治療(カルシウム拮抗薬・冠拡張薬)が主体となります。薬を途中で絶対にやめないことが大事です。

不安定狭心症は、急性心筋梗塞と同様に冠動脈に血栓ができて起こる状態で、急性冠症候群(ACS)として救急的治療が必要な状態です。狭心症の場合は胸の痛みを自覚することで外来受診されることが多く、詳細な問診や心電図検査などで診断されます。診察の結果、冠動脈CT、心臓カテーテル検査などが必要な場合は、当院と連携している専門機関にご紹介いたします。狭心症発作時の症状は、胸の締め付け感、圧迫感、歯の痛み、胃のあたりの痛みなど様々あます。それだけに心臓の病気と思わない患者さんも多く、自己判断は禁物です。特に糖尿病の患者さんでは、神経障害により痛みのない虚血発作(無痛性心筋虚血)や、心筋梗塞になっても全く痛みがなく、軽い息切れ程度の症状の場合(無痛性心筋梗塞)がありますので注意が必要です。重症になる前に診断、治療を受けられることをお勧めします。定期的な検査や健康診断が早期発見のために大切です。

心筋梗塞は、冠動脈が、血栓で詰まることによって発症します。心筋梗塞では、突然激しい胸の痛みを生じ、生命の危険性が伴います。重症の不整脈を発症し突然死する危険性があり、救急車にて専門病院に搬送され緊急でカテーテル治療を受けられる方がほとんどです。自動体外式除細動器(AED)による治療を必要とすることもあります。治療が奏功すれば1~2週間ぐらいの入院期間で退院できますが、急性期を乗り切った後も合併症(心不全、不整脈など)の管理や再発の予防のために通院と生活上の注意が必要です。当院では他院でカテーテル治療を受けられステントが留置されている方や冠動脈バイパス手術を受けられた方も病診連携の一環として治療を行っておりますので安心して受診してください。