交通事故で追突されその後に、長期にわたり頚部周囲の愁訴が遺残し、苦しんでおられる被害者の病態として、脳脊髄減少が原因であるとし、平成14年に篠永正道医師がブラッドパッチ療法が有効であると報告し、社会的に注目されるようになりました。

しかし、整形外科や麻酔科領域からはこの篠永医師の診断法や治療法に批判が集中しています。どうゆうことでしょう?

まずは『低髄圧症候群』とは?
脳や脊髄を構成する中枢神経は、髄液の中に浮かんでおり、髄液は脊柱が外から大きな衝撃を受けても、その衝撃を和らげる働きをしています。
この脳脊髄液の圧力が低下により生じる慢性的な頭痛を主な兆候とする症候群のことです。

どんな症状? 診断基準

A 頭部全体および、または鈍い頭痛で、座位または立位をとると15分以内に増悪し、以下のうち少なくとも1項目を満たし、かつDを満たす。
1) 項部硬直
2) 耳鳴
3) 聴力低下
4) 光過敏
5) 悪心

B 少なくとも以下の1項目を満たす。
1) 低髄液圧の証拠をMRIで認める(硬膜の増強など)
2) 髄液漏出の証拠を通常の脊髄造影、CT造影、または脳糟造影で認める
3) 座位髄液初圧は60mm水柱未満

C 硬膜せん刺その他髄液漏の原因となる既往がない。

D 硬膜外血液パッチ後、72時間以内に頭痛が消失する。

結局は?
交通事故との関係で、低髄液圧症候群が注目されるようなり、ブラッドパッチ療法で劇的に改善すると発表されたが、この方法ですべての症例が改善する訳ではなく、診断も難しいです。
整形外科では交通事故を扱うため、また交通事故で裁判になる可能性もあるため、診断する際は、診断基準や検査法を十分検討し、ブラッドパッチ治療が本当に有効なのか考えなければいけません。