前回、歯磨きの重要性について書きました。歯磨きという行為は、基本的な生活習慣と呼ばれます。この基本的な生活習慣は、大きく心に影響しています。ストレスの予防にもつながるものです。このことに関して、あるエピソードがありますので、以下に記します。

 戦前のドイツ、ナチスによるユダヤ人の収容所での出来事です。ある時、数ヶ月後に連合軍によって収容所が解放されるといううわさが流れます。病弱な人も含め、だれもがその時を期待して、過酷な収容所での生活に耐えて頑張りました。
 ところが、数ヶ月後になっても解放されることはありません。人々は、期待から絶望に変わり、悲嘆して次々に亡くなっていったそうです。
 でも、そのような状況でも、生き続けた人たちがいます。心の持ちようを変えたのではなく、毎日すべきことを淡々とした人たちです。悲嘆の中でも、朝起きたら口をすすぎ、薄汚れた毛布を叩いてたたみ、髪をすくなど生活習慣を淡々と続けた人たちでした。

 このエピソードの中に、大きなヒントがあります。ストレスに負けそうだ、うつ気味だ、へとへとに疲れたなと思った時でも、とりあえず決まった時刻に起き上がり、顔を洗い、歯を磨き、男性はひげを剃り、女性は化粧をして髪をすく。そして、パジャマから、普段着に着替える。その後に、体調に併せて横になるか、活動するか。

 リタイヤした人の中で、来客もないし外出もしないので一日中パジャマで過ごしたり、ジャージで過ごしたりする人がいます。ぜひ、着替えてください。一日中来客がなくても、着物を身に付け薄化粧をして、きちんとしたたたずまいで過ごした高齢の女性の方がいます。もちろん、認知症などなく聡明な頭で過ごされました。

 行動が変われば、気持ちが変わる。気持ちが変われば、考え方が変わる。考え方が変われば、生き方が変わる。そして、生き方が変われば、行動がさらに変わり、そして気持ちが変わり、心が癒えていきます。