精神科医のつぶやき「大切な友人を大切にするように、自分自身も大切にする」 (2025/07/07)
投稿者: furujinmachi
「どうして私はこんなにダメなんだろう」「また失敗してしまった」。ふとした瞬間、こんな言葉が頭に浮かぶことはありませんか?誰かに言われたわけでもないのに、自分自身に対して、まるで厳しい上司、厳しい親、厳しい先生のような言葉を投げかけてしまう。こうした「自分への語りかけ」は「セルフトーク」と言われ、その影響力の大きさは、種々の心理療法で指摘されています。
私たちは普段、他人に対しては気をつけて言葉を選びます。相手を傷つけないように、勇気づけられるように、やさしい言葉やいたわりの言葉を探そうとします。けれど、自分に対しては、どうでしょうか?ミスをしたとき、疲れて動けないとき、うまくいかないとき―そんな場面で、自分を責めるような言葉がすぐに出てきてしまうのは、とても多いことです。
私自身も、なかなか自分にダメ出ししてしまうクセが抜けませんでした。でも、1日の中で、自分自身に一番多く語りかけているのは、他ならぬ自分自身です。その自分が、自分の自己肯定感を下げるような言葉やイメージをずっと繰り返していると、それは自分に良い影響を与えません。そこで、自分で自分を責めるような気持ちになっていることに気づいたら、意識してそれを変えるように練習するようにしました。
調子の良いときに、自分を肯定的に捉えることは比較的容易です。でも調子の悪いときこそ、それ以上に自分をいじめないように、自分に追い打ちをかけないように、弱っている自分をいたわるように、自分自身に語りかけること。そのことは、意識していないと実際には難しいです。
でも、もしこれが友達だったら、大切な家族だったら、なんて声をかける?そんな風に考えて、弱っている自分にかける言葉を探しました。
「疲れてるんだから、休んでいいよ」「しんどい中でよく耐えてるね」「いっぱい悩んでいっぱい考えてること、知ってるよ」
そんなふうに、自分にやさしい言葉をかける練習を重ねるうちに、自分に対して肯定的に思える気持ちが増えてきました。
自分への言葉は、自分自身に向けた「栄養」のようなものです。厳しい言葉は、ストレスホルモンを増やし、体の回復力を下げてしまうことがあります。反対に、あたたかく思いやりのある言葉は、自律神経や免疫系に良い影響を与えることが、さまざまな研究でも示されています。
たとえば、今日一日の終わりに、「また何もできなかった」と自分を責める代わりに、「今日も一日、よくがんばったね」と言ってみる。
朝起きたときに、「今日も不安だ」と思う自分に、「そんなふうに感じるのも自然なことだよ」と寄り添ってみる。
そんな小さな言葉の積み重ねが、自分との関係性をあたたかくしてくれます。
自分にやさしい言葉を選ぶことは、甘やかすことではありません。
それは「今の私」に目を向け、「今できること」を大切にする姿勢です。
もし、あなたが大切な友人に声をかけるとしたら、どんな言葉を選ぶでしょうか?
その言葉を、どうか自分自身にもかけてあげてください。