原稿作成の続きです。

2005年に、発達障害者支援法施行。発達障害という問題が注目されるきっかけの一つになりました。この法律ができたことよりも、薬物治療の開発が、発達障害の領域では大きかったように思います。これまで小児領域中心だった発達障害に、「大人の発達障害」という概念が出てきたのは、コンサータ(2007年販売)、ストラテラ(2009年販売)がそれぞれ大人にも適応拡大したこともかなり影響していると思います。薬物治療が出来ない頃は、発達障害は、本人の困りごとを聞いて根気よく対応指導していくという、児童精神科医でなければ対応できない分野でした。そして、児童精神科医は、子どもの診療で手一杯で、「大人の発達障害」まで十分フォローできない状況でした。しかし、薬物治療が出来ることで、専門医でなくとも患者さんの治療ができるようになってきました。

2005年は、香川大学医学部精神神経医学講座の教授の交代がありました。同じ年に、私は精神保健指定医の資格を取りたくて、三光病院に異動させていただき、精神科病院での経験を重ねました。この頃、香川県立中央病院で、女性外来の担当もさせていただきました。大学病院、単科精神科病院、総合病院と働く中で、精神科といえども本当にいろんな患者さんが、本当にいろんな困りごとで来院されることを体感し、自分自身としては、将来は開業して、外来での治療に重点を置きたいと思うようになりました。

三光病院での研修を経て、再び大学病院に戻ったのが2007年でした。その前年に、自立支援医療(精神通院)制度が開始されました。これまでも通院の公費負担制度はありましたが、サービスを利用しやすくなった印象はあります。この頃、都心ではいわゆる「メンタルクリニック」が急増し、軽症・ストレス疾患の受診が増加していきました。「うつ病」の社会的認知がかなり拡大し、高松市でもクリニックを開業される先生が増えた時期だと記憶しています。

2010年頃には、抗うつ薬の多剤併用が社会問題になった状況があり、この頃から少しずつ、単剤使用の推奨、多剤使用の制限がなされてきたように思います。2014年の診療報酬改訂で、睡眠薬/抗不安薬の処方数の制限から始まり、2016年には抗うつ薬/抗精神病薬の多剤使用時の減算処置がなされるようになりました。前回の診療報酬改訂では、抗うつ薬/抗精神病薬を2種類使用した場合の説明/カルテ記載の義務化も課され、国としては今後単剤化を推奨していきたい意図が見えています。

2010年代は、自殺総合対策大綱策定の制定があり、対策を講じた結果、自殺者数がやっと減少してきたところで、2020年のコロナ感染の拡大により自殺者数が再び増加してしまったのは、皆さんご承知のことと思います。

もう少し続きます。