精神科医のつぶやき「心理学的な「慣性の法則」|ゆっくりと慣らすことの難しさ」 (2025/05/28)
投稿者: furujinmachi
4月から環境が変わった方も多く、慣れないうちは疲れがたまり、GW明けで疲労感を感じてる方も多いと思います。でも徐々に慣れてきて、同じ作業をするのにも疲れは減っていくかと思います。新しいことを始める時の目安として、3のつく期間を目安にする、というのを以前どこかで知りました。3日、3週間、3ヶ月というのが一つの目安になるというものです。
新しい環境になって、例えば学校であったり職場であったり。まずは最初の3日間、行けるかというところですね。最初の3日、なんとか行けたら、次は3週間です。4月スタートで環境が変わると、3週間頑張ったら、GWが見えてきます。GWで一休みして、次は3ヶ月。3ヶ月頑張れると、かなり慣れてくると思います。そうやって、継続して学校にいったり働いたりできるようになっていきます。
物理の法則で「慣性の法則」と呼ばれるものがあります。動き続けている物体を動かすのには対してエネルギーは要りませんが、止まった物体を動かし始めるのにエネルギーがたくさん必要になるという法則ですね。これは結構心理学にも当てはまるところがあって、普段やっていることを維持するのは、やっていないことを始めるより楽なんですね。
メンタル不調などを経験し、しばらく活動を止めていた人が、活動を再開する時にはかなりのエネルギーが必要になります。例えば不登校だった人が、頑張って学校に行こうとする。あるいはしばらく働いていなかった人が、バイトを始めようとする。そういう場合は、1回学校や仕事に行くだけでかなり疲れます。毎日行き続けている人の1日とは疲れ具合がかなり違うと思っていただきたい。
最初から無理をして、ぱたっと行けなくなるよりは、週1回とか 2回とかのペースで、ゆっくりと慣らしていって欲しいとは思うのですが、一方で、毎日行った方が早く慣れるんですね。その辺りが難しいところで。特に、周りの人は学校でも職場でも毎日来ているとなると、周りの人は平気なのに自分は随分と疲れてしまうという状況で、疲れやすい自分を責めてしまうことにもなります。
休職しようかどうしようか悩んでいる人も、一旦休むと再び仕事に行くのが大変ではないかと感じていらっしゃる方が多いですね。これは、正しい感覚だと思います。なんとか治療しながらごまかしごまかし生き続けた方がいいのか、思い切って休んだ方がいいのか。簡単に決められることではないので、少し様子を見たり、周りとも相談したり、いろいろと情報を集めて決めないといけないと思います。
でも、必要なら一旦止まって休養することも大切です。そして、再び動き出す時には、焦る気持ちを受け止めつつ、なかなか慣れない悔しい気持ちと折り合いをつけながら、ゆっくりと漕ぎ出していって欲しいと思います。