うつ状態になって、休養したり薬物治療を開始したりして、回復していく訳なのですが、回復期には波がある、ということは以前からよく言われていました。うつ病治療のパンフレットなどにも必ず書かれていて、よくなっても波があって、また悪くなることがあります、でもそうやってだんだんよくなっていきます、と言ったことが書かれていることが多いと思います。

ちょうど、今頃の季節の、三寒四温と言われる感じと同じですよね。寒い日があったり暖かい日があったり。それと同じように、調子のいい日があったり悪い日があったりしながら、だんだんと回復に向かっていくイメージです。

でも、当人からすると、せっかくよくなったと思ったのに、また悪くなるとすごく不安になりますよね。すごくガッカリもすると思います。なので、あらかじめ、そういうことが起きますよ、と説明しておきます。少し良くなってこられた方には、波がありながら良くなりますので、と事前に伝えるよう心がけています。

しかし、この回復の波ですが、患者さんからよくよく話を聞くと、元気になったときにちょっと動きすぎている方が多いように思うんですよね。しばらくしんどくて、やっと元気が出てきたら、今まで出来なかったことをあれこれやりたくなりますよね。それで、思った以上に動きすぎている。元気だった頃から比べると、まだまだでも、病み上がりからすると動きすぎってことがあると思うんですよね。

なので、よくなっていたのに、また悪くなってしまった、とおっしゃる方には、「ひょっとして、よくなったのが嬉しくて動きすぎませんでしたか?」と尋ねるようにしています。そうすると、「確かに、ちょっと無理したかも…」と心当たりがあったりします。

ある程度、気分の波があるのは仕方がないとはいえ、良くなったり悪くなったりを繰り返すのは辛いものです。でも、悪いときに無理に持ち上げることは出来ません。ですから、良いときに、動きたいのを少し我慢して、気持ち余力を残して過ごすようにお願いしています。このセーブが、後の悪化を防いでくれるということですね。それと、うつになる方はそもそも真面目で、ちょっと良くなると頑張りすぎてしまうので、自分をいたわり無理をしないということを体験して欲しい、という思いもあります。

ただ、うつが少し良くなると、徐々に動いた方が回復が早まるのも事実です。なので、悪化を恐れてじっとしすぎてもダメです。なので、活動する内容について工夫をしてもらう場合もあります。コツは、体を使って頭を使わないように、ということです。たとえば、家事労働で言うと、
・頭を使うこと:料理、家の中の片付け
・体を使うこと:洗濯、掃除(片付け不要の状態で)
料理でも、メインで献立や買い物をしてくれる人がいて、その方の指示のもと、材料を切ったりお皿を洗ったりだけであれば、OKになります。掃除は、散らかっていて片付けからしなければならないと、片付けに頭を使うので、単純に掃除機をかける、拭き掃除をするだけならOKということになります。あとは、散歩に行くなどの軽い運動もお勧めです。

うつ状態は、思ったよりゆっくりと良くなっていきます。焦らず回復を待っていただきたいと思います。