私のクリニックでは、初めてきた患者さんの予診を取るのは看護師さんの仕事です。現在看護師は2名おりますが、2人とも精神科経験が長く、予診を取るのが大変上手です。患者さんからは、よくカウンセラーと間違われております。それくらい話を聞くのも上手ですし、看護師さんなんで病気やその症状、薬についてもある程度知識を持っています。

大学病院など研修期間では、研修医や若手の医師が予診を取る担当をしていることが多いと思います。場合によっては学生が実習の一環で予診をとっていることもあると思います。しかし実際には、予診ってすごく大事な部分なんですよね。そして、精神医療のことが一通り理解できていないと、なかなか必要な情報を収集することができません。

また、予診として求められることは、情報収集です。必要な情報を集めなければならないのですが、同時に、患者さんがクリニック/病院に来て、初めて自分のことを話す体験になります。なので、予診者の対応というのは、今後の治療においてとても影響します。そういう意味でも責任重大です。

そして、患者さんはこちらの聴きたいようには話してくれず、患者さんの思うように話します。そこからどうやって必要な情報を見つけ出し、収集するのか。これはコツや経験をつかんでいくほかないと思います。ある程度、数をこなす必要があると思うのです。

予診で聞くべき情報というのは、以下のような情報になります。

【1】基本情報の正確な把握
・氏名、年齢、生年月日、性別、連絡先
・紹介元の有無と紹介状の内容(ある場合)
・生活状況(家族構成、同居者、職業、就労・就学状況)

【2】主訴と来院のきっかけ
・「どんな症状で来られましたか?」
・「初めてその症状に気づいたのはいつ頃ですか?」
・「何かきっかけや変化がありましたか?」
・「受診を勧めたのは誰か?(本人か周囲か)」
可能な限り、主観的な訴え(本人の感じ方)と客観的な事実(行動、状況)を分けること。

【3】現病歴
・症状の内容(例:不眠、意欲低下、焦燥、不安、幻聴、被害妄想など)
・症状の経過(時間軸を意識:「○月頃から」「×日前から」など)
・生活への影響(仕事・学校・家庭生活など)
・受診までに本人・家族が試みた対処

【4】既往歴と家族歴
・身体疾患歴・手術歴
・精神科の既往歴(いつ・どこで・どんな診断・治療内容)
・家族に精神疾患のある方はいるか?

【5】服薬歴と薬物・嗜好品の使用
・現在飲んでいる薬(処方薬、市販薬、サプリ含む)
・精神科の薬に対する過去の反応(効果・副作用)
・飲酒・喫煙・違法薬物使用歴

【6】生活歴・性格
・性格傾向(几帳面・心配性・外交的・内向的など)
・幼少期から現在までのライフイベント(いじめ、転校、進学、就職、転職、結婚、出産など)
・ストレス耐性や対処方法

【7】社会資源の活用状況
・障害者手帳や自立支援医療の利用有無
・福祉的支援(訪問看護、就労支援、生活保護など)

【8】自傷・自殺のリスク評価(重要)
・希死念慮の有無
・自傷行為歴、自殺未遂歴
・現在のリスク(方法・計画・衝動性など)

【9】受診へのモチベーションと治療希望
・本人の受診意欲(納得しているか、嫌々来ているか)
・治療への希望・拒否(「薬は嫌」「入院は絶対したくない」など)

これらを踏まえた上で、実際の現場での工夫や注意点を次回書こうと思います。