精神科医のつぶやき「これからはトラウマと依存症の時代になると言われています|香川県の精神保健のこれまでとこれから その5」 (2025/07/07)
投稿者: furujinmachi
原稿作成の続きです。
2013年には「障害者総合支援法」施行があり、長期入院患者の地域移行・退院支援が制度的に推進されていきました。
そんな時代の中、2016年に、私自身が、古新町こころの診療所を開業しました。精神科の外来治療に注力していきたいとの思いから、かねてからの夢を叶えました。来年で開業10年になりますが、開業してからの日々は本当にあっという間に過ぎていった感じです。
開業した翌年の2017年に、公認心理師制度が開始となり、国家試験が始まりました。私は当時臨床心理士を取得しており、受験資格を有していましたので、翌年2018年に受験し資格を取りました。しばらくは資格が始まっても、医療現場に反映されておりませんでしたが、昨年の診療報酬改訂より心理支援加算が算定可能になり、今後ますます医療現場での活躍が期待できます。精神科医療における心理職の役割が明確化していくなかで、チーム医療の意識も徐々に強くなってきました。
そして、2020年。新型コロナウイルス感染症が拡大しました。当時は、本当にどうなるのかと思っていましたが、今振り返っても大変な数年間だったと思います。メンタル不調者は明らかに増え、自殺される方も増加。経済的な問題も大きく影響したと思います。
この頃に、オンライン診療が特例的に導入・拡大され、昨年の診療報酬改訂より通院精神療法もオンライン診療の対象となりました。個人的には、研修や学会がオンラインで受講できるようになり、自己研鑽の機会が増えたことはとてもありがたく感じています。
コロナが開けてきてからは、精神医療のアウトリーチの増加、訪問看護を利用される方が増えてきたことを感じます。また、メンタル不調の方の休職者の増加に伴い、精神科医が産業領域に関与する機会が増えてきました。
発達障害がトレンドだった2010年代を経て、2020年代以降はトラウマと依存症の時代になると言う人もいます。たしかに、発達性トラウマや複雑性PTSDの話題は、学会でもたくさんのシンポジウムで取り上げられるようになってきました。また、ゲーム依存やオンラインカジノの問題などは社会的にも大きくなっています。そのような社会情勢を踏まえると、これからの精神科診療は多様化と細分化の時代になっていくのかもしれません。発達障害、トラウマ、依存症など専門性が求められる時代になると、それらは医師だけで対応が難しくなり、診断に基づいた多職種による支援、地域連携を含めた統合的役割の中心を診療所が担う時代になっていくと思われます。
そんな中で、医師の働き方改革も進んできています。医師も含め、医療従事者が決して過労で倒れないよう、自分たちの働き方を考えつつ、これからの医療の流れに対応していきたいと考えています。
原稿としては、これでまとめて提出してみようと思います。なんとか書き上げられてホッとしました。