精神科医のつぶやき「2000年以降は精神科の新薬が次々と販売された時代でした|香川県の精神保健のこれまでとこれから その3」 (2025/07/07)
投稿者: furujinmachi
原稿を書く話の続きです。
私はちょうど、2000年、ミレニアムの年に医者になりました。自分がもう四分の1世紀も医者をしていることになんだか驚きを感じます。働き出した頃は、精神科はまだ「精神分裂病」や「定型抗精神病薬」が主流で、ほぼ100%院内処方でした。リスパダールが1996年、ルボックスが1999年、パキシルが2000年、セロクエル・ジプレキサが2001年の販売ですので、新規の薬がどんどん販売されたときでもありました。これまでの治療が大きくかわっていく転換期だったと思います。
2002年には、「精神分裂病」から「統合失調症」へ病名変更されました。正直、現場ですぐに何か変わったか、という実感はありませんでしたが、病名を告知し、治療についてもきちんと説明をするという流れにはなっていったと思います。
また、精神保健福祉法が改正され、名称も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に変わりました。今まで、差別や誤解、偏見の大きかった「精神科」という分野に、少しずつ変化が起きていったように思います。
それから、香川県内のことで言うと、2003年10月に、香川医科大学と香川大学が統合し、新たに香川大学として発足しました。この時私は大学院生だったのですが、母校の名前がどのようになるかが、気が気ではありませんでした。「香川医科大学」であった時は、私立大学なのか、専門学校なのかといった誤解も多く、「香川大学の医学部になる」というのが一番シンプルで良いと思っていたのですが、一部の人たちの中には新たな名前にしたいという動きもあったようで、「香川総合大学」とか「香川国際大学」とか、そのような名称になると、逆に国立大学と認識してもらいにくくなりそうに感じていました。香川県出身者としても、地元の大学が、変わった名称になるのは抵抗があり、結果的に「香川大学」に落ち着いたことでホッとしました。私自身の学歴は、「香川医科大学卒業、香川大学医学部大学院卒業」といった形になり、大学院だけ別の大学に行ったみたいになりました。この統合により、のちに心理学科が教育学部から医学部に移ることにもなりました。
この頃は、非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピンなど)や、SSRI(パロキセチン、フルボキサミンなど)が本格的に普及しだし、もう毎年のように新しい薬が出て、薬物治療が大きく様変わりしていきました。治療の選択肢が増えたのは嬉しい一方、それぞれの薬に特徴があり、使いこなす前に次の薬が出てくるような状況で、いったい目の前の患者さんにどの薬を処方すればいいのか、迷いも多かったように思います。
少しずつ書きます。